2017年9月21日(木)
出演者:
加藤隆俊(IMF副専務理事、元財務官)
山﨑達雄(前財務相財務官)
司会者:
工藤泰志(言論NPO代表)
第2セッションではまず、グローバルな課題を解決していく上でのガバナンスについて議論が展開されました。
既存の国際機関によるガバナンスは先行き不透明
工藤が、国際通貨基金(IMF)や世界銀行、世界貿易機関(WTO)といった国際機関が、G20首脳会議が開かれるのを前に、トランプ政権と同様の保護主義的な貿易政策が他の国に拡大する恐れがあるとする共同声明を発表したことを振り返ると、加藤氏は、「ここで放置すると、保護主義的な動きが一気に世界全体に広がっていってしまう」という強い懸念が三機関の共同声明の背景にあると解説。
一方で加藤氏は、こうした既存の国際機関によるガバナンスが機能するかについては慎重な見方も示しました。その理由としては、上記三機関に加え、国際労働機関(ILO)、経済協力開発機構(OECD)、金融安定理事会(FSB)を加えた六機関のトップが、中国の李克強首相が主宰する座談会に2年連続で召集されていることを紹介し、「出資比率の大きな『大株主』の意向にはなかなか逆らえない」と指摘。
またG20についても、中国の鉄鋼の過剰生産問題を取り上げても成果が出ていないと語り、その一方で、「トランプ大統領の中国への対応は一見うまくいっているように見える」とし、「これで『多国間よりも二国間だ』という国際的な潮流になるかどうか、それはまだ分からない」と先行きの不透明感を指摘しました。
山﨑氏も同様の見方を示しつつ、特に世界貿易の振興を担っているWTOの機能不全の歴史を振り返りました。
山﨑氏はさらに、トランプ大統領が選挙戦で主張していたような過激な公約はまだ実行していないため、「当初想定されていたほどの危機的状況ではない」としつつも、「ただし、基本的な考え方は変わっていない」ため、やはり先行きは不透明だと述べました。
人々の不満を解消するためには、国際、国内両面での政策調整が不可欠
次に、工藤が「各国でグローバリゼーションに対する不満が高まっている。どう対応すべきか」と問うと、加藤氏は不満の背景には格差があるとし、これを縮小するための取り組みが不可欠と語るとともに、「G7各国では選挙の機会を通じて不断に格差を見直していく必要がある」と述べました。
山﨑氏も同様に、「社会的、経済的弱者に対する手当て」が必要と語った後、国際間の調整にも言及。特に、租税回避について日本のイニシアティブによる対策が一定の効果をあげ始めていることを紹介し、こうした取り組みを続けていくべきだと語りました。
こうした議論を受けて工藤は、「国内、国際両面での政策調整が急務だ。そこでG20がリーダーシップを取ってやっていくべきだ」と語り、第2セッションを総括しました。