2008.4.22開催 アジア戦略会議 / テーマ「グローバリズムの中で日本がいかに生き残るか」

2008年4月24日

080422アジア戦略会議
 4月22日のアジア戦略会議は、岡本行夫氏(国際問題アドバイザー、岡本アソシエイツ代表)をゲストスピーカーとして開催されました。2030年頃を展望しつつ、アジアにおいて日本がどのような存在を形成していくのか、そのための選択肢は何かという、この会議の課題設定に応じる形で、岡本氏から、グローバルな潮流の中で日本に残された選択肢についての問題提起があり、その後、出席者の間で意見交換が行われました。

岡本行夫氏スピーカー:岡本行夫氏(国際問題アドバイザー・岡本アソシエイツ代表)

 まず岡本氏は、ご自身の国際会議への参加経験などを踏まえたうえで、日本が様々な面で世界のダイナミックな動きから取り残されている現状を指摘しました。いまや、日本以外のどの国の人もが英語を用い、国と国との関係が従来の枠組みを超え、国籍も民族も関係なく優れた個人が競い合い、あるいは集っているという状況の中で、日本だけが未だに平穏無事な異なる世界に閉じこもっているという指摘です。

 その原因として、日本という国の規模が中途半端に大きく、例えば、国内マーケットがある程度の規模を保っているために、携帯電話などにみられるように、国際戦略が欠如したまま国際標準からズレていってしまうといったことが挙げられます。こうした世界とのズレは、日本のオーディエンスを消滅させ、今ではいわゆる「ジャパン・パッシング」が世界規模で起こっていると、岡本氏は述べました。

 成田空港に帰国すると妙に安堵感のある、この閉じられた世界の中で、日本は外の世界の動きに実感を持てず、そのような日本から世界の目はだんだんと離れていきます。世界が多様化し、開放系へと進み、最も優れた個人が競い合う時代に入っている中で、そこに行けないと日本は置き去りになるだろう。日本はもはや、国という枠組みを脱し、ミクロのレベルで個人や企業がそれぞれに輝いていくしかないのではないか。それが、岡本氏からなされた問題提起でした。

 しかし、マスコミは報道の優先順位を取り違えており、政治は世界に乗り遅れている日本をさらに引っ張り下していて、やろうと思えばできる当たり前のこともせず、世界の中でも奇怪な光景を示しているのが日本の現状です。そのような中で、アジアでは中国がますます関心の的となる一方で、欧米の知的コミュニティーの関心の対象からも日本ははずれてしまっています。そのような日本に問われているのは、レトリックではなく現実で勝負することであり、世界の潮流と位相がズレてしまった日本として、今後何を世界に主張し、どのような独自の居場所を探すのかを考え直すことであると、岡本氏は述べました。

会議風景


 その後、出席者の間で活発な意見交換が行われました。その中で、特に、岡本氏の提起した、個人と企業がそれぞれ輝いていくしかないとの見方に対しては、やはり、日本が国として力を発揮するにはどうすべきか、もう一度、日本の強さを見直しながら、日本のパワーを再構築すべきであるという論点が提示されました。具体的には、モノづくりの力、金融力の活用、強い財政の基盤の再構築なども挙げられました。いずれにしても、危機感があればこそパワーを発揮するはずの日本人に、危機感があまりに不足しているという点では、概ね、意見の一致がみられました。


 アジア戦略会議では今後も引き続き、アジアや世界の潮流を論じながら、その中で日本に問われる課題について、議論を発展させていきたいと考えています。

文責:インターン 高田玲子

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今回の出席者は以下の方々でした。(敬称略)

安斎 隆
(あんざい たかし)

セブン銀行代表取締役社長
元日本銀行理事

小島 明
(こじま あきら)

日本経済研究センター会長
日本経済新聞社顧問

篠沢 恭助
(しのざわ きょうすけ)

財団法人資本市場研究会理事長

進 和久
(しん かずひさ)

前ANA総合研究所顧問
 

千野 忠男
(ちの ただお)

野村総研顧問、元財務官

松田 学
(まつだ まなぶ)

財務省(東京医科歯科大学教授)
言論NPO理事

 4月22日のアジア戦略会議は、岡本行夫氏(国際問題アドバイザー、岡本アソシエイツ代表)をゲストスピーカーとして開催されました。2030年頃を展望しつつ、アジアにおいて日本がどのような存在を形成していくのか、そのための選択肢は何かという、この会議の課題設定に応じる