日本の有識者115人が見た北東アジア情勢の現状と課題
言論NPOは、2021年2月24日の「アジア平和会議」開催を前に、北東アジアの平和をめぐる日本の有識者の意識を明らかにし、同会議での議論に活かすため、言論NPOの活動に参加する有識者2000氏を対象にアンケート調査を実施した。
その結果、有識者の50.4%と半数以上が、東アジア地域は紛争や衝突が起こり得る切迫した状況にあると回答している。特に、「台湾海峡」では、数年ないし将来的に紛争や衝突が「起こる」という見方が71.3%と7割を超えるなど、有識者が大きなリスク要因とみなしていることが明らかとなった。
北東アジアの現在および将来の平和のために取り組むべき課題については、「中国の軍事台頭に対する日米同盟の抑止力の向上や力の均衡」が半数を超えて最も多い。次いで、「日中、日韓、米中などの大国関係の安定」が45.2%となり、外交・安全保障上の取り組みを求める有識者が相対的に多い結果となっている。「一方、北東アジア地域の紛争回避や、持続的な平和を目的とした多国間の対話」も40%となり、「アジア平和会議」がまず民間レベルで目指す多国間の平和の仕組み作りの必要性を、多くの有識者が認識していることが明らかになった。
また、北東アジアの持続的な平和のために目指すべき原則や理念では、「不戦」を選んだ有識者が20.9%と最も多く、言論NPOが6年前に中国と合意し「アジア平和会議」創設の出発点となった「不戦」の理念への支持が、有識者の間で強いという結果になった。
【東アジア地域は紛争や衝突が起こりうる切迫した状況か】
まず、現在の東アジア地域が、紛争や衝突が起こりうる切羽詰まった状況にあると思うかを尋ねたところ、「そう思う」が50.4%となった。半数を超える有識者がこの地域の平和の現状に対して懸念を抱いていることになる。「そう思わない」は38.3%と4割を切っている。
【東アジアのどの地域が最も危険か】
次に、どの地域が最も危険か尋ねたところ、「台湾海峡」が45.2%で突出している。
【北東アジアにおける軍事紛争・衝突の可能性】
続いて、北東アジアを中心に5つの地域を挙げた上で、それぞれにおける軍事紛争や衝突が勃発する可能性について質問した。
その結果、「数年以内に起こる」と「将来的には起こる」という回答の合計が最も多かったのは「台湾海峡」で、71.3%と7割を超えている。以下、「南シナ海」(63.5%)、「尖閣諸島周辺」(62.6%)、「朝鮮半島」(54.7%)も、5割から6割程度の有識者が数年以内ないしは将来的に「起こる」と考えている。
【2021年、北東アジアの平和に関して特に懸念していること】
次に、北東アジアの平和に関して特に懸念していることについて質問したところ、「台湾海峡での衝突や偶発的事故の発生」が47.8%で突出しており、ここでも有識者の関心が台湾海峡に集まっている。以下、「中国の海警法の適用のあり方と、現状変更に向けた行動」(29.6%)、「米中対立の深刻化」(28.7%)、「北朝鮮が核保有国として存在すること」(27.8%)、「尖閣諸島周辺での偶発的事故の発生」が約3割で続くという結果となった。
【将来の持続的な平和のため、取り組むべき課題】
将来の持続的な平和を実現するために、取り組むべき最も重要な課題については、「中国の軍事台頭に対する日米同盟の抑止力の向上や力の均衡」が50.4%で半数を超えて最も多い。
「日中、日韓、米中などの大国関係の安定」(45.2%)、「北東アジア地域の紛争回避や、持続的な平和を目的とした多国間の対話」(40%)など、様々な項目が4割前後で続いている一方で、「北朝鮮の非核化」(20%)、「北東アジア地域全体の軍縮・軍備管理」(9.6%)といった核問題そのものを重視する有識者が少ない結果となっている。
【北東アジアの平和のために重要な原則や理念】
北東アジアで持続的な平和を実現するために目指すべき原則や理念として、有識者は「不戦」(20.9%)、「法の支配」(20%)、「反覇権」(19.1%)の3つを特に重要視している。
【「アジア平和会議」への参加国】
言論NPOは2020年1月に、北東アジア全域に持続的な平和を実現するための多国間協議「アジア平和会議」を発足させ、この一年間様々な取り組みを実施している。現在は「日米中韓」の4カ国の枠組みとなっているが、今後さらに参加国を拡大する計画もある。
そこで、その場合の参加国について尋ねたところ、北朝鮮やロシアといった北東アジア諸国に加え、「さらに、ASEANやEUなどの域外国もオブザーバーで加えたほうがいい」という回答が33.9%で突出している。