日中両国民は米中対立下の「日中」をどう見たか第17回日中共同世論調査分析

2021年10月20日

⇒ 第17回日中共同世論調査結果

言論NPO代表 工藤泰志

 今回の世論調査で注目すべきは、中国人の対日印象や、現状の日中関係への意識がこの1年で急激に悪化したことである。2012年に尖閣諸島をめぐって対立した時ほどの決定的な悪化ではないが、変化幅はそれに次ぐ急激なものである。

 中国側の意識の変化は、日中関係をめぐる多くの課題で中国側の認識を後退させている。これに対して日本人の意識は昨年の悪化から変わらず、強く冷え込んだままである。

 双方共に今後の日中関係に関しても悲観的な見方が強まっており、両国の国民感情は注意を要するゾーンに入ったと言える。

 私たちが懸念しているのは、この「印象」と「日中関係」に対する今年の両国民の意識の水準は、日中関係が最も困難な時期とされ、多くの若者が中国で暴動を起こした2005年の水準にほぼ並んだということにある。この時に私たちの日中世論調査も始まったが、残念なことに状況は振り出しに戻りつつある。

 これらの調査結果は、来年の日中国交正常化50周年に向けて、政府間の行動や民間の取り組みに新しい対応を突き付けているように思う。


中国の日本への印象悪化は8年ぶり、日中関係は尖閣ショック以来の悪化幅

 中国国民の日本への「印象」が悪化に転じたのは、尖閣諸島での対立が表面化した2013年の調査から8年ぶりである。

 日本に対して「良くない」という印象を持っている人は昨年の52.9%から66.1%に大幅に増加し、「良い」という印象も今年は32%と昨年の45.2%から大きく落ち込んだ。

 日本国民の中国への「印象」は一昨年の調査から悪化しているが、今回も改善は見られず、中国に「良くない」という印象を持つ人は90.9%(昨年は89.7%)と9割を超え、2005年から始まった私たちの世論調査で4番目に悪い水準となった。

 現状の日中関係について、これを「悪い」と見る中国人も42.6%と昨年の22.6%からこの1年で20ポイントも増えている。悪化に転じたのは5年ぶりだが、この悪化幅は2013年の尖閣諸島ショック時に次ぐ大きさである。

 これに対して、日本国民で現状の日中関係を「悪い」と見ている人は54.6%と、昨年の54.1%とほぼ同じだが、依然、半数を超える日本人が現状の日中関係を「悪い」と見ている。

 これを逆から言えば、現状の日中関係を「良い」と思う日本人はわずか2.6%しかおらず、中国人は昨年22.1%から半減し、今年は10.6%と1割しかない。

 この世論調査は2005年、日中関係が最も厳しい時に始まったが、この時の日中関係が「良い」と判断する日本国民は2.1%、中国国民は10.5%であり、今年の状況は16年前にほぼ戻っている。

 さらに、両国関係は今後、「良くなる」と考える日本国民は6.3%(昨年は7.5%)しかおらず、これまで楽観的な傾向が強かった中国でも、今後は「良くなる」は昨年の38.2%から今年は22.9%に減少し、「悪くなる」が昨年の9.6%から24%へと2.5倍になっている。
  

日中関係を悪化と判断したのは「政府間に信頼関係ができていない」から

 では、なぜ、中国国民の意識が急激に悪化したのか。中国国民の日本への印象や、日中関係への意識が急激に落ちこんだ原因は、いくつかの設問を活用することで説明できる。

 まず、中国国民で現状の「日中関係」が「悪い」という人が急激に増えた理由は、「日中関係の発展を妨げるもの」という設問がその手掛かりになる。

 この1年の変化を見るために、この昨年から5ポイント以上増加した原因に着目すると、3つの項目しかない。

 最も増加が多かったのは、「両政府間に政治的な信頼関係ができていない」の29.3%で、昨年から10.4%増加している。続いて、「日米同盟と日本の軍事力増強」は19.5%で8.9%増えた。最後が「領土をめぐる対立」の62.4%で、7.2%の増加である。

 つまり、中国国民は、米中対立に対峙する形で日米同盟下での日本の軍事的な動きがあることや、尖閣諸島での対立があることを報道で知り、それに対して政府間の対話もないことを政府間に信頼関係がない状況として強く意識しているのである。
 
 こうした状況は日本国民も同じである。日本側で、「日中関係の発展を妨げるもの」で最も大きな理由となったのは、昨年よりは減少したが、「尖閣諸島をめぐる対立」の56.7%である。その次に「政府間の信頼ができていない」が39.6% 、「国民間に信頼関係がない」が33%で続いており、それを合わせると7割になる。

 昨年から5ポイント以上増加したのは、「中国の軍事力増強」の20.4%(昨年から5.4%増)だけである。

 中国の脅威は日本国内でも報道などによって国民の不安を高めている。そういう局面で本来行動すべき、政府間や国民間に動きがないことを、日本人もまた両国政府の信頼関係の不在と見ており、現在の日中関係は「悪い」と判断したのだと考えられる。 

 米国との歩調を重視した日本の菅政権下では、中国との目立った外交の動きはこの1年で全くなく、正式な首脳会談もなかった。日本国内では中国の軍事的脅威への不安から、安全保障の議論が先行し、日本国民の意識に影響をもたらしている。

 つまり、日中関係に関して両国民の意識が冷え込んだ背景には、米中対立下で緊張が高まる中でも政府間外交の努力が全くなく、両国民の不安が放置されていることがある。


国民間の直接交流が不足すると、国民は自国メディア情報に依存せざるを得ない

 中国国民が、日本の「印象」を急激に悪化させた理由はこれとは少し異なる。この説明に入る前にお互いの印象を構成する世論の構造をまず理解する必要がある。

 相手国の印象は、これまでの世論調査から、相手国への訪問や知人との会話など国民間の直接交流や自国メディアを中心とした情報源に依存することが明らかになっている。
 
 相手国への観光を含めた国民間の直接交流が活発であること、情報源も既存のテレビ主体からインターネット、携帯アプリなどへ多様化することが、相手国の「印象」形成にプラスの効果があるのである。

 中国国民の日本への印象が昨年まで毎年改善していた大きな要因には、中国国民の日本への観光客の急増があり、その際の日本での滞在経験が携帯などの情報ツールを使って中国国内へ広がったことも寄与している。

 それが今回、ほとんど機能しなかった。コロナ禍の影響で、2020年の日本への訪問者は約107万人でピークの2019年の10分の1近くまで急減し、2021年も同じ状況にある。この状況は日本も同じである。
 
 しかも、国民の直接な交流だけではなく、政府間にもこの1年、こうした環境に向かい合うための行動が全くなかった。そうした閉鎖空間では両国ともに内向きになり、自国のテレビなどの情報源に国民の意識は影響を受けやすく、そうした報道を通じて国民の感情に火が付く可能性は大きい。

 特に中国の場合は、日本と異なり自国メディアの信頼は高く、今回の調査でも自国の中国メディアの日中関係の報道が「客観的で公平だと思う人」は78.3%もいる。日本ではこの数字はわずかに10.8%に過ぎない。


中国の対日印象の悪化の背景に見る、日本の政治家の歴史認識問題への無理解

 今回、中国国民の日本の「印象」が悪化した背景には、こうした直接交流の後退があり、それに米中対立の影響や政府間の対話の不在の影響が加わったことも、調査結果から確認されている。だが、ここに今回、新しい要因が付け加わったのである。

 それが、歴史認識問題である。日中でなぜ今、歴史認識問題なのか、と疑問を持つ方もいると思われるが、今回、「良くない印象の理由」の中国側回答で最も多かったのは、「日本は中国を侵略した歴史についてきちんと謝罪し反省していない」だった。77.5%と圧倒的であり、昨年の74.1%を上回っている。この77.5%はこの設問を2013年に採用してから最も高い数字である。

 しかも、注目されるのはこの1年で昨年よりも増えている項目である。「一部の政治家の言動が不適切」を日本に対する良くない印象の理由とする中国人が、昨年の12.3%から今年は21%まで8.7ポイント増えており、その増加幅が突出している。

 今回の中国の対日印象の悪化は世代の全般に及んでおり、中国の20代と40代で、日本への印象が悪化した人が特に多い。その2つの世代でその理由を見ると、「一部の政治家の言動が不適切」が20代では28%となり、全ての世代で最も高く、40代の22.6%でそれに続いている。この2つの世代が中国人全体の印象の悪化をかさ上げしたのは間違いないだろう。

 中国での世論調査の調査期間は今年の8月25日から9月25日である。その間の中国の報道を見ると、直前に現役の防衛大臣の靖国参拝があり、自民党総裁選では首相になった場合、靖国神社参拝を行うと明確に宣言する候補者が中国の報道で取り上げられ、かなり批判的にメディアで論じられている。中国外交部は事態を収めようとしていたが、日本に批判的な国民感情に火をつけた可能性は高い。

 この日本に対する歴史認識問題が今後、両国間の対立の強い基調になるのかは、現時点で判断できない。ただ歴史認識問題が、再び日中関係の課題として意識され始めたことは、調査結果からも伺える。

 「歴史問題が日中関係の障害になっているか」という設問では「歴史問題はほとんど解決しておらず決定的な問題」と判断する中国国民は今年、46.9%と半数近くになり、昨年の37.1%から10ポイント近く増えた。

 また、日中関係が安定している時には相対的に高まる、「日中関係が発展するにつれて歴史問題は徐々に解決する」を選んだ中国国民は今年、30.8%と昨年の39.1%から大きく減少している。

 さらに、日本の政治・社会体制に対する見方について、日本を「軍国主義」と考える人も、中国では昨年の26.2%から今年は36.3%にまで10ポイントも拡大している。


両国政府間の信頼向上に向けた行動こそが、今後の日中関係への当面の取り組み

 では、こうした冷え込んだ状況をどう改善できるのか、調査結果にはその手掛かりも示されている。

 今後の日中関係を向上させるため、最も有効なことだと中国国民が選んだ最も大きなものが「歴史問題での和解」であり、昨年の41.9%から55.2%にまで増えている。さらに「両国政府間の信頼向上」が37%(昨年は32%)でそれに続いている、昨年、45.4%で最も多かった「首脳間交流の活発化」は今年28.5%と大幅に減少した。

 これに対して、日本国民が最も有効だと考えているのは、「世界のルールに基づく自由貿易体制の推進や多国間の国際協力など国際課題の解決に向けた協力」の31.9%であり、「両国政府間の信頼向上」(31.1%)がそれに続いている。

 この大きな温度差は、両国民の相手国への感情に基づいている。中国側はまず、日本国内の一部で見られた歴史問題の鎮静化や、米中対立下で不安定化する両国関係の改善を求めており、そうした政府間の信頼回復こそが第一だと考えている。

 日本国民が、国際課題の協力を中国に求めるのは、未来に向けた新しい関係を模索しているからであるが、そこに向かうためにまだ当面の課題があることをこの調査結果は教えている。

 中国国民に、首脳間の相互訪問で慎重な姿勢が見られ始めたのもそのためである。中国国民は「なるべく早く首脳の相互訪問を実現すべき」が30.7%から18.4%に大幅に減少し、「首脳相互訪問は一旦白紙にすべき」が9.5%から18.3%に増加し、首脳間交流の早期再開に消極的な人が増えている。


米中の対立構造が深刻化する安全保障分野ではお互いに脅威感が増大する

 今回の世論調査の全85の設問には、日中両国民の様々な意識の変化が見られる。その中で米中対立下での日中関係をどう考えるかという一連の設問では、私たちが無視できない両国民の意識の傾向が表れている。

 両国民ともに、米中対立が日中両国関係に「悪い」影響を与えていると考えており、双方の軍事的行動をめぐって両国民の中に相手国への不安や反発が広がっている。

 ただ、今回の調査で明らかになっているのは、それにもかかわらず、日中関係の今後に両国民は期待を失っておらず、むしろ協力を深めようという意識が両国民に強いということである。

 米中対立が深刻化する中でも、日中関係の今後をどのように考えるか、という課題を今回の調査結果は私たちに突き付けているのである。

 まず、この対立が「日中関係にも悪い影響」を与えている、という人は中国で61.9%(昨年52.1%)、日本では54.7%(同44.4%)と、それぞれ昨年を約10ポイント上回っている。これが、今後、世界の中で重要視すべき国についての中国国民の意識に大きな変化を促している。

 中国国民は、自国の将来に最も重要な国としてロシアを選ぶ人が50.8%と今回は半数を超え、昨年の39.6% から10ポイント以上も増えている。米国は22.4%であり、昨年の23.6%とそう大きくは変わっていない。

 ここでもうひとつ注目されるのは日本への意識である。世界の中で最も自国との関係が重要な国として日本を挙げた中国国民は2018年の調査で18.2%も存在した。しかし、それをピークとなり、毎年下がり続け、今年は昨年から半減して5.8%になった。

 日本と中国の関係を「重要だ」と考える中国国民は70.9%と7割はなんとか維持している。ところが、「重要ではない」とする中国国民は昨年の9.3%から22.4%に増加したことは留意点である。この22.4%は2013年の尖閣対立時の24%に次ぐ大きな水準である。

 これに対して、日本国民で日中関係を重要だと考えるのは66.4%となり、昨年の64.2%からわずかだが増えている。米中対立が深刻化する中で、日本の存在が米国との連携の背後に隠れ、中国国民には見え難くなっているとも考えられる。

 対立構造が焦点化しているのは、米中の安全保障の分野である。中国国民の中では、米中対立下で、軍事面では日本が米国と連携しているという見方が広がっている。

 日中両国で、軍事的な脅威を感じる国があると答えるのは日本人で68.9%、中国人が51.1%で、昨年からそう大きな変化はないが、日中両国は相手国への脅威感を昨年よりも高めている。日本人で中国に脅威を感じる人は70.5%と昨年の63.4%から増加し、2015年から始まったこの設問で初めて7割を超え、北朝鮮の76.6%に近づいている。

 中国人では昨年、日本への脅威感が大幅に減少し47.9%にまで下がったが、それが再び61.3%にまで戻っている。

 日本人が中国に対する脅威感を高めている理由は、「尖閣諸島等の領海を侵犯していること」や、「中国の軍事力が強大」であることが最も大きく、「情報が不透明」で「目的がわからない」がそれに続いている。

 これに対して、中国人は、「日本が米国と連携して中国を包囲している」が70.3%で最も多く、昨年の64.9%を上回っている。

 そして、東アジアで軍事紛争の可能性を考えた場合のスポットとして両国民は「台湾海峡」を意識する人がこの1年で急増している。


日中両国民は米中対立下でも、両国関係の今後に期待を失っていない

 米中の対立はこうした形で両国の脅威感に繋がっているが、この不安定な局面でも、両国民は日中関係の今後や日中協力への期待を失っていない。それが、今回の調査の多くの設問で、より鮮明に浮かび上がった特徴である。

 例えば、「不安定化する世界経済と東アジアの平和のために日中は新しい協力関係を構築すべきか」では、「構築すべき」と回答した中国国民は70.6%と圧倒的であり、日本国民でも42.8%と最も多い回答になっている。

 日本と中国が「アジアの課題で協力すべきか」では日本国民の56.5%、中国国民の76.2%がそれに賛成している。そして、両国民は、この東アジアの未来で共に力を合わせるべき課題でも一致している。

 東アジアの将来で、日中が共に共有し、実現すべき目標と理念として、日中両国民が選んだ中で、それぞれ最も多い回答となっているのが、「平和」と「協力発展」であり、「平和」を選んだ日本人は53.8%、中国人は54.6%、「協力発展」は日本人が33.1%、中国人は55.8%である。

 北東アジアの紛争回避と持続的な平和のために取り組む課題で、日本人の上位3つに並んだのは「平和共存」の45.7%、「非核」の37.9%、「不戦」の37.6%で、中国人は「反覇権」が53.2%、「平和共存」が52%、そして「事故防止」が47.2%で続いている。中国と日本の両国民が、この緊張する北東アジアにおいて求めるものとして「平和共存」で一致し、「事故防止」、「不戦」をそれぞれ希望している。

 また、こうした課題を議論するための多国間協議の枠組みが必要だと思う人も、中国人に71.6%存在し、日本でも42.5%が必要だと回答している。さらに、日中間で2018年に運用が開始された「海空連絡メカニズム」では偶発的な衝突を避けるためにまだ不十分だと考える人は日本で43.4%、中国で37.7%もいる。

 ただ、残念ながら、こうした両国の民意は、少なくとも政府レベルには届いておらず、両国政府間の取り組みも議論も何も始まっていない。


米中対立下での日中関係において、両国民は対立よりも協力を求めている

 それでは日中両国民は、米中対立そのものをどう考え、その中で日中関係の今後をどう考えているのか。世論調査から両国の現時点での民意を明らかにしたい。

 まず、米中対立の原因に対する意識では、中国人の81.8%と8割が米国に原因があると考えており、この傾向は昨年と変わらない。これに対して、日本では「米中双方」が43.8%で最も多いが、「中国」が32.8%であり、特に「中国」は昨年の23.2%から10ポイント増えている。

 米中対立の今後に関しては、両国民共に昨年よりも「やがて解消される」という楽観的な見方は減少しており、両国民にそれぞれ半数存在する「判断できない」「わからない」を除けば、「対立の長期化」という見方が中国人では31.9%、日本人では23.4%で最も多い。ただ、新冷戦という全面的な対立を予想する人は両国民ともに1割台に過ぎない。

 この米中対立が、世界の秩序に及ぼす影響では少し温度差があり、中国側は米中協力の回復やルールベースでの共存を期待する人が合わせて50.6%と半数を超えており、日本側(39.3%)よりも楽観的な見方が多い。

 私たちが考えるべきなのは、こうした米中対立下で、日本と中国はこの局面にどう対応するかという点である。この本質的な質問を昨年に続き、今回も聞いている。

 まず、米中対立の影響が深まる中で、日中両国がこの局面にどう臨むかである。

 日本人は「同盟国の米国と行動を共にする」という人は昨年よりは増加したものの21.5%と2割程度である。33.6%の「わからない」を別にすれば、33.7%が「米中対立の影響を最小限に管理し、日中協力を促進する」と回答し、「米中対立とは無関係に日中協力を発展させる」の11.1%と合わせると4割を超える人が日中協力の促進を希望している。

 この意識構造は中国人もほぼ同じである。中国人の30.4%と3割が、「日本は米国と行動を共にする」と見ているが、合わせて48.4%と半数近くが、「米中対立の影響を管理」、あるいは「米中対立とは無関係」に日中協力を「促進」、「発展」させるべきと考えている。

 さらに、昨年同様、米中対立下での日本の立ち位置について、日本調査だけで聞いている。ここでは、「米国との関係を重視すべき」は昨年の20.3%よりは増えたがそれでも24.9%と2割強である。

 最も多い回答は、昨年同様、日本は「どちらかにつくのではなく世界の協力発展に努力すべき」の55%(昨年は58.4%)だったのである。

 米中対立下での日中関係において、両国民は対立よりも協力を求めている、今回の調査で浮かび上がったのは、そうした両国民の民意なのである。


来年は日中国交正常化の50周年、両国は今後向かうべき道を見出す必要がある

 これまでの17年間の調査期間で中国人が、対日印象を悪化させた時の大きな要因がこの歴史認識問題と尖閣諸島の領土問題であることは、世論調査の経年変化から明らかである。この2つの要因が、対日印象の悪化の変動を作り出している。

 この対日印象の悪化は、場合によっては政府間外交では手が付けられなく状況になることを、私たちは2005年などの経験から学んでいる。

 さらにこの変動に、米中対立という世界の変化に伴う影響が加わり、両国国民の意識に広がっている。

 日中両国の行動はアジアの平和や繁栄に決定的な影響力を持つほど大きなものになっている。だからこそ、両国は米中対立下での世界の変化や緊張が高まるアジアの中で、今後向かうべき道を見出す必要がある。

 その取り組みに向けて政府間で全く話し合いがなく、安全保障面での軍事的な脅威でしか相手国を見ていないことが、今の両国民の不安定な世論の状況を作り出している。

 来年は日中国交正常化50周年である。それまでに両国政府が新しい日中関係やそれに向けた新しい目標を見出す作業に入らないと、両国の世論は迷走を続けることになるだろう。