「第17回北京―東京フォーラム」は、10月25日から2日間にわたって東京と北京を結ぶオンライン会議方式で行われ、政治外交、経済貿易、安全保障、メディア、国際協調、デジタル経済の議論に日中両国を代表する有識者約100氏が集まり、不安定化する世界の中での日中関係に焦点をあてながら、アジアの平和や世界の様々な課題について両国がどのような役割を果たすべきか真剣に話し合った。
現在直面する世界の課題は、協力でしか解決できないものであり、国際協調こそが私たち日中両国が堅持すべき姿勢である。そして、この困難を乗り越えるためにも、日本と中国は新しい関係を模索する段階に入っている。
世界で進む歴史的な変化は、両国に影響し、両国民の不安も小さくない。世界は、新型コロナの封じ込めにまだ成功しておらず、気候変動への取り組みも待ったなしである。コロナ後の世界経済の出口はまだ見えず、世界経済の分極化や、アジアの緊張が高まっている。両国はこの状況に真剣に向かい合わなければならない。
来年2022年は、日中が国交正常化してから50年となる。その準備はすぐにも始める必要がある。そのためにも今までの議論をさらに深化させて、日中両国が今後向かうべき道を見いだす必要がある。
私たちはその舞台こそ、今回の「東京-北京フォーラム」の役割だと考えた。
過去16年間、日中関係が厳しい中でも一度も中断せずに私たちが対話を継続してきたのは、フォーラムの参加者がその覚悟を共有してきたからである。
私たちはこうした強い思いから、この二日間、真剣に議論を行い、以下の合意をまとめた。
- 1.日中関係の安定が大切なのは、両国の経済や産業が相互依存しており、多くの共通利益を持っていること、さらに両国の行動はそれぞれの国民の福祉に影響を及ぼすのみならず、アジアの平和に重要な影響を持つほど大きなものとなっているからだ。
世界やアジアは不安定であり、両国関係の今後に国民間の不安が高まっている。そうした時だからこそ、日中両国はお互いの行動への理解と今後の両国関係の在り方を巡って、政府間だけではなく、民間も含めた幅広い対話を始めるべきである。 - 2.日中両国が、地域の平和と繁栄に責任を持って取り組むことは、国交正常化以来の合意である。来年の国交正常化50周年に向け、日中関係におけるこの合意の重要性を再認識し、世界的な視野を持って、この合意を更に発展させるべきである。
両国が世界で共に努力すべきは、世界課題の解決に向けた国際協調のリーダーシップ、国際法に基づく国際秩序の擁護、共通のルールに基づく自由経済の修復である。アジアで両国に問われるのも平和と協力発展に向けた一層の努力であり、そのための相互信頼や共通利益での協力を具体化すべきである。 - 3.日本と中国はコロナ後の世界経済の復興に向けて協力すると同時に、包摂的で地球環境に配慮した持続可能な世界経済のために共に努力すべきである。そのためにもブロック化する世界経済を認めず、開かれた経済のためにそれぞれの構造改革を進め、東アジア地域包括経済連携(RCEP)の円滑な運用を図る必要がある。また、CPTTPを加入申請した中国は関係国と幅広く協議すべきであり、日本も誠実に対応すべきである。
- 4.気候変動は差し迫った危機であり、人類が直面する最大の挑戦である。日中両国は世界の責任に主導的に応えるためにも、それぞれが表明したネットゼロの目標は確実に実現しなくてはならない。両国は脱炭素に向けた産業構造の全面的な転換や非化石燃料の割合を飛躍的に増やすため作業を急ぐべきである。低炭素分野での技術開発やデジタル技術の活用などの日中協力を一層強化すると同時に、グリーンファイナンス市場の育成等を通じて世界の排出削減に貢献する。
- 5.アジアの平和について、両国関係の政治的な基礎を守るように、両国は一層の努力を行うべきである。両国政府は紛争に繋がる全ての行動に反対するとともに、事故の防止や紛争の平和的解決に向けた合意を進める。また、海空連絡メカニズムの一層の強化を行う他、建設的な安全保障関係を構築し、この地域の安全保障課題を考える定期的な協議を早期に始めるべきである。
- 6.コロナ禍で両国民の直接交流は減少し、大部分の対話が動いていない。歴史的な困難が広がる中で、民間の取り組みが勢いを失うことは致命的である。私たちは政府外交とお互い補完し合う関係にある「民間外交」には、新時代に相応しい日中関係の構築に特別の役割があると考えている。その意味で国交正常化50周年を機に、活発な首脳会談の実現を期待し、私たちは様々な対話や努力を通じて、その環境づくりに真剣に取り組む。
私たちは、これらの合意を踏まえ、世界やアジアの未来を見据えて、現在の困難に答えを見いだす努力を行うと同時に、日中の新しい協力に向けて一層の努力を行う決意である。
言論NPO、中国国際出版集団