デジタル分野や脱炭素など喫緊の課題に共に取り組んでいくことの重要性が確認された ~経済分科会報告~

2021年11月26日

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 10月25日のセッションに続いて、26日午後に開催された経済分科会では、中国抜きでは成り立たない世界経済の現状やCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)への中国と台湾の加盟申請問題、カーボン・ニュートラルや気候変動問題を巡る日中相互協力など多岐にわたる課題について、日中両国を代表する経済人・研究者各6人が活発な議論を交わしました。


今回の議論が、日中協力やアジア・世界の国際協調の修復に繋がることに期待

 冒頭、中国側司会である張燕生氏(国家発展・改革委員会学術委員会研究員、中国国際経済交流センター首席研究員)が本分科会で議論する重要な「三つのキーワード」として、①グローバリゼーションの縮小、②アジア経済の回復、③世界経済のデカップリング問題──を挙げました。その上で「中国には『長い目で物事を見る』という故事があるが、中日の経済協力もまさに長い目で見るべきだ。自由貿易の修復や、アジア・世界の経済回復をこのように捉えたい」と問題を提起しました。

yamaguchi.jpg 日本側司会の山口廣秀氏(日興リサーチセンター理事長、元日銀副総裁)は「世界情勢は政治的にも経済的にも厳しい状況にあり、現実に分断が起きていると言ってもいい。一方、日中の協調関係もこれまでとは違った厳しい局面に入りつつある。その意味で本分科会での議論で、日中協力やアジア・世界の国際協調の修復に繋がることを強く期待している」と応じ、2時間にわたる議論がスタートしました。


脱炭素社会に向けて日中企業の協力の余地は非常に大きい

 元商務部副部長の魏建国氏(中国国際経済交流センター副理事長)は中国のCPTPP加盟申請について「アジア、あるいは世界の経済発展を推し進めるためにとても良いツール」との認識を示しました。その上で「中国は今、新たな段階に邁進しようとしている段階だ。グリーンエコノミー、ヘルスケア、高齢者対応、持続可能な開発目標(SDGs)などにおいても大きな協力のポテンシャルがあると思う。こういった節目だからこそ、中日が早い段階から技術提携などを進めることで、CPTPPの土台づくりに生かせるのではないか」と主張しました。一方で「CPTPP加盟の狙いは、"日本との主導権争いがあるのではないか"と疑心暗鬼にならないでいただきたい。国内市場ばかりに目が向いているという風にとらえるのも間違いです」と釘を刺しました。

oohashi.jpg これに対して、昭和電工名誉相談役の大橋光夫氏は近年の世界貿易に関して「今や中国なしで世界の貿易を考えることはできない。日本から見ても中国と貿易をすることによって、国内権益を維持し豊かにするという選択があるからこそ、各企業が中国と貿易をしている」と語りました。さらに、中国と台湾のCPTPP加盟申請について「微妙な問題」との認識を示した上で「中国がCPTPPに入るというのはあり得るが、中国が"台湾は絶対だめだ。中国だけだ"と主張するとなれば、大きな制限を中国に掛けざるを得なくなる。政治的制約から輸出入貿易を対抗手段に使うのは避けた方が良く、それが世界経済全体のためになると考えている」と指摘しました。


 中国国際経済交流センター副会長の常振明氏(CITICグループ有限会社元会長、中国人民政治協商会議第13回全国委員会経済委員会メンバー)は企業人の立場から、中日両国の技術協力関係を中心に発言しました。「気候変動問題への対応は人類共通の課題であり、カーボン・ニュートラルを実現しなければならない。しかし技術革新、それに匹敵する変革がなければ化石エネルギーの減少は困難であり、技術的なブレイクスルーが必要だ。中日両国の企業にとって、新エネルギー車やクリーンエネルギー分野などカーボン・ニュートラルを実現させるための市場は莫大な規模になる。こういった分野で中日の企業が協力する余地は極めて大きい」と述べ、一層の技術協力・技術移転の必要性を訴えました。

oota.jpg 2年ぶりに「東京─北京フォーラム」に出席した三井住友フィナンシャルグループ執行役社長の太田純氏は、中国不動産開発大手の恒大集団の経営危機問題を中心に発言しました。「中国経済が打撃を受け、世界経済にも打撃を及ぼすという思惑から9月には欧米の株価も押し下げられた。仮に同社が破綻した場合、債務を有する金融機関や投資家への影響は避けられない」との見方を明らかにしました。その一方で「中国経済の規模から考えると、中国の金融システムへ甚大な影響を与えることは低い。海外金融機関による同社への債務、債権額は極めて限定的であり、リーマンショックのようなグローバルな危機や混乱につながる可能性も低い。しかし、中国で事業展開する顧客から事業戦略の見直しを余儀なくされているケースもある」として、引き続き注視する必要があるとの考えを示しました。

 さらに日中両国の脱炭素社会実現などに向けた連携についても「当社もサステナビリティ(持続可能性)に関する10年計画を作成しており、今後10年で30兆円のファイナンスを実行する目標も設定している。中国現地法人においても環境に配慮を促す商品の取り扱いを始めており、日中は環境分野においても国境を越えて知見を共有することで、世界的にも大きなインパクトを与えることができます」と現状の取り組みを披露。両国で問題化する高齢化社会への対応や、コロナ対策を含む医療分野などにおいても金融機関として協力を惜しまないとの考えを強調しました。

 その後、日本側司会の山口氏が「自由経済の修復がメインテーマであり、世界経済・アジア経済・アジア景気の回復がもう一つのテーマになる。日本側の関心事項としては中国のCPTPP参加、恒大集団の不良債権問題、中国の不動産問題と金融システムへの影響をどう整理すればいいのか。さらに日中協力の方向性を改めて確認しておきたい」などと述べ、自由討議に入りました。


CPTPPへの加盟に対する中国の本気度

 北京駐日イノベーション協力デモンストレーションゾーン常務副総経理の劉清華氏は、コロナ禍が多大な影響を貿易に与えた問題について「グローバルモデルが収縮している状況だからこそ、各国が協力を強める必要があり、新時代にふさわしいグローバル関係の構築を目指すべきだ。科学技術のイノベーションやマーケット、人材における両国の強みを生かして、世界経済の繁栄とアジアの地域協力に貢献していく責任がある」と述べました。

kawai.jpg 環日本海経済研究所代表理事・所長の河合正弘氏は中国のCPTPP加盟申請における、さまざまなハードルについて「CPTPPの市場開放の程度は、RCEP(包括的経済連携協定)よりもはるかに高い。工業製品に限って言えば、ほぼ100%関税撤廃率だ。RCEPでは、中国は80%程度の撤廃率であるが、これを100%にコミットすることは可能か。さらに、貿易投資のルールについても、RCEPに含まれていない国有企業や労働の問題もCPTPPには存在しており、こうしたハードルを越えることは現実的なのか」と問題提起しました。

 この点について、常振明氏は2001年の中国のWTO(世界貿易機関)加盟を引き合いに出しながら「アメリカをはじめとする世界秩序がさらに強化されていくと考えられていたが、実際はどうだったか。(リーマンショックが起きた)2008年以降、TPP脱退が象徴的なように、アメリカは自ら主導した秩序に対して不満を感じるようになった。自由貿易のために同質化を進めるのか、それとも各国の成長・発展の特徴を見極めながら自由貿易を進めるのか。そこに政治を巻き込んではいけない。先程の『台湾が加入しなければ、大陸だけ加入するのは難しくなる』という見方も一種の政治化ではないか。こういった観点から新しい貿易の自由化を考えるのは、潮流に合っていないのではないか」と主張しました。

 続けて魏建国氏も「中国では『高く飛びたければ、スタートするまでの準備期間は長い』と言うが、実際、WTO加入には随分時間がかかった。CPTPPも非常に高い条件があり、『中国の加入は難しい』と言われているが、ハードルが高いからこそ挑戦をしなければならない。加盟申請は一時的な考えではなく、我々は慎重に考え抜いて決めたことだ。手を携えて一緒に頑張りたいと。中国が本気かどうかを日本の友人は疑っているようだが、もちろん本気だ。世界とwin-winの関係を目指す。中国が入らなければ恐らく後悔する人々もいるのではないか」と一層の理解を求めました。

 中国科学技術情報研究所研究員の房漢延氏はCPTPPに関して「中国は15年かけて、しかるべきルール改正を行い、WTOの基準を達成した。RCEPにおいても同様にルールを守ってきました。国際ルールを守る点において中国は一度も約束を破ったことはない。日本の皆さんに是非ご安心いただきたい」と呼びかけました。

 中国側司会の張燕生氏は「中国が高い国際基準に合わせるのはCTPPTだけではない。デジタル経済などもハイスタンダードを念頭に置いている」と重ねて主張し、日本側司会の山口氏が「いずれにしろ、これから中国側の条件闘争といったものにならないことを強く願うばかりだ」と矛を収めました。


中国恒大の問題や人権問題等では日中間の認識に大きな溝

mori.jpg 森ビル取締役副社長執行役員の森浩生氏は恒大集団の経営危機問題に関して「日本でもバブル経済が崩壊した後の『失われた20~30年』は、金融システムのみならず多方面にわたってかなり傷ついた。不動産債務が破綻した場合の影響は大きいため、何とかカバーしてもらいたい」と述べました。また、習近平政権が掲げる「共同富裕」政策について「大企業に対する規制強化になってくるのではないか。日本企業が中国に進出した際に、制度が変わることへの不安を持ちながら、ビジネスをしてきた。またここで政府が経済界に強く介入する機会になるのではないか」と懸念を伝えました。

 その点について房漢延氏は、「2008年の米サブプライムローンとは違う。当時はデリバティブがきっかけだったが、恒大の場合は現物資産もあり、二つのヘッジがあるので相殺すれば、大した金額ではなく、波及する面もそう大きくはない。そのため、ドミノ倒しのような金融システムの崩壊には至らない」と述べ、日本側の懸念はあたらないと主張しました。

yoshikawa.jpg 三菱UFJ銀行顧問の吉川英一氏は各分野での両国の協力推進に触れた上で、中国の金融市場の整備状況などについて「少し気になる」点として「不動産売却に頼った地方財政、まだまだ住宅が必要という特質を考えると、万が一の場合の責任負担を明確にし、リスクをコントロールすること。政府も十分によく考えてソフトランディングさせてもらうことが必要なのではないか」と疑問を投げかけました。

 別の観点から大橋氏も「現在の中国では、個人の言動や思想がチェックできるようになっていると聞く。厳しい監視は外国人にも当然適用されると。今後の中国の発展を考えた場合、人権・言論・思想の自由を弾力的に許容されたら問題はないけれども、そうでなければ日本からの投資に大きなブレーキがかかる」と指摘しました。

 こうした懸念について、魏建国氏は「恒大があたかも中国経済を崩壊する"爆弾"のように扱われているが、中国政府はもちろん、中国人にとってもそうした実感はない。健全でないとして政府が恒大に手を出したのは時宜にかなった行動であり、放置しておけば、もっと恐ろしいことになり、国の戦略に関わることになる」と強調。
 さらに、「事前に手を出すことは、中国だけではなく、日本やアメリカも同じだろうから、本分科会でなぜ恒大がこれほどまでに問題視されているのか少々不可解に思っている」と反論しました。続けて「大橋さんがおっしゃった人権問題は、中国には存在しない。新しい外商・投資法の実施から既に2年が過ぎ、今はそれを重税化し、ネガティブなリスクを最小限にしていく努力をしている。中国人はアメリカ人のように盗聴や諜報のような手段はとらない」と語りました。
 加えて、「『投資者に懸念がある』と指摘されたが、私がこれまで付き合ってきた日本の方々は『中国の投資は自由である』と言ってくれている」と強く否定しました。


政治と経済を結び付けているのは「相手国」

 北京大学国家発展研究院院長の姚洋氏も「この1年間に中国で起きたことについて困惑されているかもしれないが、恒大問題を拡大解釈するのは良くない。中国の政策に変化が生じたのではないかと解釈されては困る」とし、日本側がうわべで恒大問題を見ているのではないか、と同調しました。その上で「例えば、釣魚島(尖閣諸島)の領有権に関して、中国はそこまで問題視していない。日本がなぜそこまで盛んに話題にするのかが分からない」とした上で、来年は中日国交正常化から間もなく50周年を迎えることもあり、「日本の指導者層が政治と経済を結び付けてとらえることを主張するならば、時代錯誤だ」と牽制しました。

 これに対して河合氏は、尖閣諸島(釣魚島)問題について「『中国でほとんど問題になっていない』と言われたが、恐らくメディアの取り扱いがかなり違うのではないか。尖閣諸島に、中国の公船が頻繁にやって来て脅威を与えていると感じる日本人が増えている。中国で問題になっていないのであれば、公船の派遣を止めたらどうか」と指摘し、「そうすれば中国に対する印象は相当良くなると思う」と反論しました。

 さらに政治と経済を結びつけることについても「尖閣国有化の時にはレアアースの問題が起きたが、最近ではオーストラリアに対しても大麦やワイン、ロブスターの輸入を制限している。これはWTOの原則に反している」とし、「貿易手段を使って政治的影響力を与えるのは本筋ではない。貿易以外の外交手段で解決するのが本筋ではないか」と述べ、中国政府の対応に疑問を示しました。


米中対立下においても、米中の貿易額は前年比増に

 こうした発言を受けて、魏建国氏が「なぜ日本の皆さんは政策決定の際にアメリカの顔色をうかがうのか。同盟関係にあるからだろうが、それが足枷になっていないか」と問題を提起しました。

 太田氏は「中国に進出している企業1500社にアンケートをした結果、対中関係を強化してビジネスを伸ばしていきたいという考えが日本企業の大きなトレンドであり、米中対立が自社の中国事業に影響を及ぼすことはないと回答している」とし、「日本企業は米国ばかりを気にしているわけではない」との分析を披露しました。その一方で「金融の基軸通貨はドルであり、ドル決済がグローバルに行われている限り、金融機関は米国を見ざるを得ない。アメリカの規制はグローバルにかかるため、ドル決済ができないのでは銀行が機能しないことに繋がる。そのため、ある程度はアメリカの動向・意向を考えながらやらないといけない」と理解を求めました。
 
 日本側の反論に対して、魏建国氏は「ドル建てならばアメリカ、ユーロ建てならばEUの顔色をうかがう、と言うのは納得できる理由ではない。政治と経済を結び付けるのはアメリカの常套手段だ。(カナダ当局に中国通信機器大手・華為技術<ファーウェイ>の孟晩舟副会長兼最高財務責任者(CFO)が身柄を拘束された)カナダ事件の際に、アメリカが日本に対して圧力をかけたが中国は真逆で、中国は政治と外交を結びつけることには反対している。中国はアメリカのような方法はとらないから安心してほしい」と再反論しました。続けて米中対立の激化に伴う米中経済の切り離し(デカップリング)の「脅威」についても「デカップリングした事実はない。1~9月までの第三四半期を見ても、中米の貿易額は3兆5000万ドルにのぼり、昨年、同時期の24.9%増となっている。EUとの間では20%の伸びを示しており、西側諸国の報道に惑わされないようにしていただきたい」と否定しました。


日中両国が抱える様々な問題について、どのように協力するか

 しばらく意見の食い違いが相次いでいたところ、房漢延氏が「さまざまな問題を抱えているが、中日の間に共通点を見いだすことこそ、私たちが注目しなければならない」と話題を転換しました。特にカーボン・ニュートラルの早期実現やコロナ対策などの各種課題において「地域・世界に責任を取れるような国、責任を果たす国でありたい。各国でコロナ対策は異なるけれども、参考になった手法を出し合って1+1=2以上のシナジー効果を得られるよう努力にすべきだ」と訴えました。

 これを受けて、吉川氏は米中のデカップリングに対する日米経済界の反応を紹介した上で、半導体などの経済安全保障分野では異なるが、「『デカップリングは無理である』というのが共通認識である。日本の経済界はビジネスを阻害しないと強く思っており、政府にも働きかけているが、むしろ中国側の警戒感が大きいのではないか」と指摘しました。

 また、少子高齢化問題を抱えて、2016年に「一人っ子」政策を廃止した中国政府が今年、産児制限をさらに緩和し、夫婦1組につき子供3人までもうけることを認める方針を発表したことも話題になりました。

 大橋氏は「必ずしも人口が増える気配がない」要因として「一つの大きな理由は中国の場合では、子供の教育費が負担となっており、子どもが3人だと家計に負担が掛かる」と指摘した上で、人口増加が続くインドに言及。「14億人を超えて15億人になっているという説もあり、5~10年先にはインドが中国を超える大きな経済力を持つかもしれない。中国は今後10年の政策でどの程度の人口を維持したいと考えているのか、教えていただきたい」と質しました。

 この点に関して姚洋氏が「経済成長に対する人口の影響はもちろん大きい。ただ、それを過大視してはいけない」と指摘。「中日で事情はやや異なっており、中国は農村人口の規模が大きく、都市と労働力の相殺できる。さらに、労働力不足はAIの発展によって解決できる部分があり、自動化による代替労働力は、高齢者の人口減少よりも大幅に上回ると予想しており、雇用に関して逼迫する問題はない」と答えました。


中国が進める「デジタル人民元」の狙いとは

 続けて姚洋氏は、中国が推進する人民元のデジタル化について、大げさに見られていると説明します。「『デジタル人民元』もやはり人民元であり、新しい通貨ではない。人民元の強み、弱みは『デジタル人民元』でも同様であり、将来、紙幣が必要なくなった時の準備手段に過ぎない。通常の通貨よりも使いやすい、便利だという点は一つの事例で、現在も特に影響はない」と指摘しました。これは「デジタル人民元」推進の狙いについて、国家による通貨管理と監視の強化や、世界の準備通貨であるドルの地位にとって代わろうとしているなどの観測を呼んでいることを踏まえた発言です。

 早速、日本側司会の山口氏が「『デジタル人民元』を通じたデータの収集・管理について非常に強い関心があるが、どのように考えているか」と問いかけたところ、姚洋氏は「データはあまり関係ない。中央銀行でモニタリング観測されており、この点に関しては実質的な変化はなく、あるのはコストの問題だけだ」と強調。「全てのやり取りを把握しようとすれば、コストは非常に高くなり、法律やプライバシーの問題もあるため、そういうことはしないだろう」と説明しました。さらに「『デジタル人民元』は"現金"であって、空気のようなものではない。デジタル化は人民元を少しずつ国際化するようなツールであり、主として小売りの部分での使用を考えている。今後は卸売段階まで拡大できるかを模索中だ」と理解を求めました。


自由経済の修復という点で、積極的に協力するという共通認識があった

 CPTPP加盟申請問題に関して会場から質問が出ていることを踏まえて、日本側司会の山口氏が「台湾の加入を認めるとしたら、中国は承認するのか」と改めて問いかけました。魏建国氏は「『中華人民共和国の台湾という地域』の加盟として受け入れるのであれば、問題ないと思う。しかし、台湾の加盟を中国大陸の加盟の先決条件にしてはならない。それを結び付けて考えると政治的な要素になってしまう」と指摘。「まずは中国大陸、それから台湾という順番が重要であり、中国は主権国家であり、台湾は中国の一部で、不可分なもの。WTOをはじめ、その他の国際的な枠組みでも同じだ」と基本原則を繰り返しました。

 活発な議論が繰り広げられたことを受け、日本側司会の山口氏が「自由経済の修復という点では積極的に協力するという共通認識があったのではないか。ブロック経済化、サプライ・チェーンの寸断、国際協力面での幾つかの綻びといったところで、日中の協力で解決していくことが大事だとの認識に至った」と語り、デジタル分野やカーボン・ニュートラルなど喫緊の課題に共に取り組んでゆくことの重要性を確認しました。

 マイクを引き継いだ中国側司会の張氏は、かつて農業問題を抱えた日本がTPP加盟する際の決断や、デカップリング問題に言及しながら「中国は警戒心を持って諸外国と接しているわけではない。常にオープンマインドであり、一致団結して取り組んでいる」と語り、議論を締めくくりました。