北東アジアの平和に関する有識者アンケート
日本の有識者171人が見た北東アジア情勢の現状と課題
言論NPOは、2022年2月22、23日開催の「アジア平和会議」を前に、北東アジアの平和をめぐる日本の有識者の意識を明らかにし、同会議での議論に活かすため、言論NPOの活動に参加する有識者500氏を対象にアンケート調査を実施し、171氏から回答を得た。
その結果、有識者の43.3%と4割以上が、東アジア地域は紛争や衝突が起こり得る切迫した状況にあると回答している。特に、「台湾海峡」では、数年ないし将来的に紛争や衝突が「起こる」という見方が69%と7割近くなるなど、有識者が大きなリスク要因とみなしていることが明らかとなった。
北東アジアの現在および将来の平和のために取り組むべき課題については、「日中、日韓、米中などの大国関係の安定」が47.4%で最も多い。次いで、「台湾や東シナ海などのホットスポットでの紛争管理に向けた努力」(34.5%)となり、外交・安全保障上の取り組みを求める有識者が相対的に多い結果となっている。また、「北東アジア地域の紛争回避や、持続的な平和を目的とした多国間の対話」も33.9%となり、「アジア平和会議」がまず民間レベルで目指す多国間の平和の仕組み作りの必要性を、多くの有識者が認識していることも明らかとなった。
また、北東アジアの持続的な平和のために目指すべき原則や理念では、「不戦」を選んだ有識者が32.2%で突出しており、言論NPOが7年前に中国と合意し「アジア平和会議」創設の出発点となった「不戦」の理念への支持が強いという結果になった。
「北東アジアの平和に関する有識者アンケート(2022年1月)」概要
【東アジア地域は紛争や衝突が起こりうる切迫した状況か】
まず、現在の東アジア地域が、紛争や衝突が起こりうる切羽詰まった状況にあると思うかを尋ねたところ、「そう思う」が43.3%(昨年50.4%)となった。昨年よりは減少したものの依然として4割を超える有識者がこの地域の平和の現状に対して懸念を抱いていることになる。ただ、「そう思わない」という回答も42.7%(昨年38.3%)と4割ある。
【東アジアのどの地域が最も危険か】
次に、どの地域が最も危険か尋ねたところ、「台湾海峡」が昨年の45.2%から58.5%へと13.3ポイント増加して突出している。
【北東アジアにおける軍事紛争・衝突の可能性】
続いて、北東アジアを中心に5つの地域を挙げた上で、それぞれにおける軍事紛争や衝突が勃発する可能性について質問した。
その結果、「数年以内に起こる」と「将来的には起こる」という回答の合計が最も多かったのは「台湾海峡」で、69%(昨年71.3%)と7割近い。以下、「南シナ海」(61.4%、昨年63.5%)、「尖閣諸島周辺」(51.4%、昨年62.6%)、「朝鮮半島」(49.7%、昨年54.7%)も、5割から6割程度の有識者が数年以内ないしは将来的に「起こる」と考えている。
【2022年、北東アジアの平和に関して特に懸念していること】
次に、北東アジアの平和に関して特に懸念していることについて質問したところ、「台湾海峡での衝突や偶発的事故の発生」が45.3%で突出している。次いで、「台湾有事の可能性」(31.2%)となり、ここでも有識者の関心が台湾海峡に集まっている。以下、「米中対立の深刻化」(29.4%)、「北朝鮮の経済的な困窮に伴う行き過ぎた軍事行動」(21.2%)が2割台で続くという結果となった。
【将来の持続的な平和のため、取り組むべき課題】
将来の持続的な平和を実現するために、取り組むべき最も重要な課題については、「日中、日韓、米中などの大国関係の安定」(47.4%)という回答が最も多い。以下、「台湾や東シナ海などのホットスポットでの紛争管理に向けた努力」(34.5%)、「北東アジア地域の紛争回避や、持続的な平和を目的とした多国間の対話」(33.9%)、「中国の軍事台頭に対する日米同盟の抑止力の向上や力の均衡」(32.7%)など、様々な項目が3割台で続いている一方で、「北朝鮮の非核化」(2.9%)、「北東アジア地域全体の軍縮・軍備管理」(13.5%)といった核問題そのものを重視する有識者が少ない結果となっている。
【北東アジアの平和のために重要な原則や理念】
北東アジアで持続的な平和を実現するために目指すべき原則や理念として、有識者は「不戦」を最も重視しており、昨年の20.9%から32.2%へと11.3ポイント増加している。