「アジア平和会議」の本会議は2月23日にオンラインで二つのセッションが行われ、日本と米国、中国の韓国の4カ国の安全保障と外交のハイレベルの専門家18氏がまず前半の会議で「台湾問題の紛争回避をどう実現するか」を議論しました。
ロシアがウクライナの二つの地域の独立を一方的に承認し、武力行使に乗り出すという状況下で行われた会議では、司会を務めた言論NPO代表の工藤泰志が、ウクライナと類似する環境下にある北東アジアの現状を指摘し、「昨日の会議では、ウクライナ情勢と同様、北東アジアの安全保障環境も冷戦後『最悪』の状態で、一触即発との見方も出された。懸念が高まっている台湾海峡での紛争を回避するためにどのような努力を行うべきか」と語り、議論が始まりました。
これに対し、米軍で大西洋艦隊・太平洋艦隊の双方を指揮した経験を持つラフヘッド元米海軍作戦部長と、中国の人民解放軍系のシンクタンクで学術主任を長期で務めた張沱生氏、
日本からは前駐米大使の杉山晋輔氏、韓国からは崔剛(チェ・ガン)アサン研究所副所長の4氏が冒頭で問題提起し、その後、議論となりました。
「アジア平和会議」は非公開で行われましたが、冒頭の4氏の発言は公開すること、議論はチャタムハウス方式で発言者を特定しない形で報告する、ことが決まっています。
この会議では、中国と米国、日本、韓国の出席者から、台湾海峡での紛争の危険が高まっている背景やそれを回避するための対応を相手に求める厳しいやり取りが行われ、お互いの認識に大きな違いがあることが浮き彫りになりました。
中国側からは、台湾に関しては平和統一の考えは何ら変わっておらず、紛争回避のためには米国は台湾の独立姿勢を支援する動きを自制し、台湾を説得すべきとの見方が示されました。ただ、米国や日本の安全保障関係者からは状況は変わってきており、中国の香港などでの行動や軍事演習の状況を見ると平和統一自体の姿勢が信頼を失っている、武力行動は取らないとの姿勢を明確化すべきだ、との発言もありました。
日本側からは一つの中国や台湾の独立は支持しないとの基本的な立場は明確で何も変わっていない、との説明もありました。
米中対立の深刻化と中国のこの地域での行動が台湾を巡る緊張した状況を作り出している、との見方も出され、この地域で失っているのは相互信頼であり、会議ではそのためにも戦略的な対話が米中間で必要だとの共有の認識がありました。
また米国と中国との間の紛争回避のため、危機管理の様々なこれまでの合意が事実上機能していないことも明らかになり、台湾海峡の最優先の課題は必要な迅速性を持った対話であり、危機管理の仕組みを早急に構築することだ、ということでは出席者の認識はほぼ一致しました。
前半の議論に出席したのは以下の18氏です。司会は工藤泰志(言論NPO代表)が務めました。
【米国】
ゲイリー・ラフヘッド(元アメリカ海軍作戦部長)
マーク・モンゴメリ(サイバースペース・ソラリウム・コミッション会長上級顧問)
フランク・ジャヌージ(モーリーン・アンド・マイク・マンスフィールド財団理事長)
ロバート・ギリア(パシフィック・フォーラム名誉会長、海軍分析センター上級研究員)
【中国】
賈慶国 (政治協商会議常務委員、北京大学国際関係学院前院長)
楊超英 (中国国際戦略研究基金会副理事長)
張沱生 (中国国際戦略研究基金会研究員, 国観シンクタンク学術委員会主任)
滕建群 (中国国際問題研究院(CIIS)アメリカ研究部シニアリサーチフェロー)
周波 (清華大学国際安全保障戦略センター・シニアフェロー)
【韓国】
チェ・ガン (アサン研究所副所長)
ホ・テグン(元韓国軍准将)
【日本】
香田洋二(元自衛艦隊司令官)
河野克俊(前統合幕僚長)
杉山晋輔(前駐米大使、元外務次官) ※1
添谷芳秀(慶應義塾大学法学部名誉教授)
宮本雄二(宮本アジア研究所代表、元在中国日本大使)
会議ではまず、4氏が台湾での紛争を回避するための問題提起を行いました。