今回で節目の10回目となる「日韓未来対話」(言論NPO、東アジア研究院(EAI)、崔鍾賢学術院共催)は3日、東京とソウルの会場をオンラインで結んで開幕しました。
開幕式には日韓両国の外交トップである林芳正外務大臣、朴振外交部長官がメッセージを寄せました。その中で両大臣は、米中対立や世界の秩序が不安定化する中で日韓関係は重要性であり、政府も関係改善に取り組んでいくとの認識で一致。同時に、二国間関係を下支えするためにも「日韓未来対話」のような民間の取り組みが重要だとして、今回の対話に期待を示しました。
若い世代を中心に、好転しつつある相手国へ認識を一つのシグナルに、
日韓関係改善に向けたチャンスを逃してはならない
韓国政府を代表した朴振外交部長官はそのビデオメッセージの中でまず、過去30年間にわたって保たれてきた世界やアジアの平和・安定が、ロシアのウクライナ侵略や北朝鮮の核開発、気候変動、新型コロナウイルスのパンデミック、経済安全保障をめぐる対立など様々な難題によって「亀裂が入っている」と憂慮。こうした状況の中で日韓協力が進んでいない現状を問題視しました。
一方で、韓国の尹錫悦大統領は8月15日の光復節の演説の中で、日本について「世界市民の自由を脅かす挑戦に立ち向かい、共に力を合わせて進むべき隣人」と語るなど、日韓関係の改善と協力深化に強い意欲を示していることを強調。自身も日本の林芳正外務大臣とすでに四度にわたって会談するなど、政府間でも改善に向けた動きは始まっているとしつつ、今後も懸案の早急な解決を目指すと語りました。
朴振長官は、民間の役割についても言及。これまでに10回実施してきた「日韓共同世論調査」について「両国民間の認識調査としてきわめて重要な資料であり、韓国政府の政策立案にも資してきた」とその意義を高く評価。今回の調査でも示されているように若い世代を中心として感情や認識が好転しつつあることを「日韓関係の改善に向けた良いシグナルだ。このチャンスを逃してはならない」と指摘しつつ、居並ぶ両国の有識者に対しても政府を後押しするような議論を求めました。
「日韓未来対話」は二国間関係を下支えする重要な取り組み
日本政府からの挨拶は、林芳正外務大臣のメッセージを外務省アジア大洋州局の實生泰介審議官が代読する形で行われました。
その中で林大臣は、韓国を「重要な隣国」とした上で、米中対立の深刻化などにより世界や地域が不安定化している現下の戦略環境に鑑みると、「日韓・日米韓協力の進展が今ほど重要な時はない」と発言。今年7月と8月に朴振長官と相次いで外相会談を行ったことに触れつつ、政府として今後も「日韓関係を健全な関係に戻すべく、韓国側と緊密に意思疎通していく」と表明しました。
その一方で、林大臣は「様々なレベルでの真摯な対話は二国間関係を下支えする重要な取組」であるとし、各界のオピニオン・リーダーが集結し、「米中対立下の世界での日韓関係の意味を考える」という時宜にかなったテーマを掲げた今回の「第10回日韓未来対話」の議論の展開に期待を寄せました。
日韓の新しい一歩を踏み出す対話に
主催者を代表して挨拶に登壇した言論NPO代表の工藤泰志は、「第1回日韓未来対話」のテーマが「日韓関係には未来があるのか」だったと振り返りつつ、世界が分断に向かい、アジアにも緊張が広がる今、「まさにその答えを出すタイミングにある」と今回の対話の意義を説明。「第10回日韓共同世論調査結果」では、「関係改善に向けた政府の具体的な行動と将来を見据えた協力を両国民は迫っていることが明らかになった」としつつ、そうした観点から「日韓の新しい一歩を踏み出すための対話にしたい」と意気込みを語りました。
開幕式では、その後も日韓両国を取り巻く戦略環境の変化を踏まえた新しい視点を示すような議論の展開を求める声が相次ぎ、引き続きセッション1「世界の平和秩序の修復と北朝鮮の非核化」に入りました。