12月8日午後、「アジアの平和と安定に向けた日中両国の責任」を全体テーマとする安全保障分科会が開催されました。日本側司会は添谷芳秀氏(慶應義塾大学名誉教授)、中国側司会は陳小工氏(元中国共産党中央外事弁公室副主任、元空軍副司令官、第12 期全国人民代表大会外事委員会委員)が務めました。
今年の日中共同世論調査結果では、北東アジアの最近の安全保障リスクとして、台湾と北朝鮮を両国民が強く意識していることが明らかになっています。このリスクを双方がどのように考えているのか、それを管理し、取り除くためにどのような努力が必要か、という視点からセッションの前半では、「北東アジアの安全保障リスクをどのように管理するか」について議論が展開されました。
日本周辺で、今までの活動の延長ではない、新たな変化を見せる中国
まず日本側から、香田洋二氏(ジャパンマリンユナイテッド株式会社顧問、元海上自衛隊自衛艦隊司令官・海将)が問題提起。香田氏はその現状分析の中でまず台湾については、ナンシー・ペロシ米下院議長など米欧の政治家による訪台が相次ぐ中、猛反発する中国は、大規模軍事演習をはじめとして台湾周辺での活動を活発化させていると分析。
一方、尖閣諸島周辺に関しては、中国海警局の船舶の動きに変化が見られると指摘。これまでは日本漁船の出漁時のみの出航だったのが、「それとは関係なく出てくるようになった」としました。中国海軍の測量艦が屋久島周辺の領海侵入をしてきたことなども併せて、「今までの活動の単なる延長ではない、変化が見られる」とその意図を中国側に問いかけました。
南シナ海については、九段線に限らず全海域に中国の国内法を適用としようとしているとし、こうした変化についても新たに議論すべきと語りました。
「陣営化」とイデオロギーによる分断が進む北東アジア
中国側最初の問題提起には姚雲竹氏(中国軍事科学院国家ハイレベルシンクタンク学術委員会委員、元中国軍事科学院中米防務関係研究センター主任)が登壇しました。姚雲竹氏は、ウクライナ紛争、米中対立、北東アジアの国内政治(政権交代)の流れの中で、日米間と中ロ北朝鮮の間で「陣営化」が生じていると指摘。こうした北東アジアの二分化やイデオロギー対立が進む中では、政策選択の余地も狭まると懸念しました。
北東アジアの軍事情勢については、各国が軍事費増や能力向上に努めているとしつつ、北朝鮮のミサイル能力強化と核実験の懸念は朝鮮半島の緊迫度を高めていると語りました。
台湾海峡については、台湾を戦略的なアセットと位置付けた米国と、それに同調する日本の動きを注視すべきとしましたが、尖閣諸島については香田氏の見方とは異なり、日中間の海空連絡メカニズムの柱であるホットラインの運用開始に向けた調整が進んでいることや、対話が再開していることなどから「安定化している」との見方を示しました。
姚雲竹氏は最後に、「冷戦構造は他の地域よりも早く表れている」と改めて北東アジアの陣営化とイデオロギーによる分断について言及。日本と中国が共に考えるべきとし、問題提起を締めくくりました。
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