「アジア平和会議2023」(言論NPO主催)は2日目の7月19日午前、東京・六本木の公益財団法人・国際文化会館で、非公開セッション「2023年の北東アジアの『平和リスク』にどう対応すべきか」と題して行われました。「平和会議」開催を前に、有識者を対象にした「北東アジアの平和で、特に懸念していることは何か」とアンケート調査を実施したことを踏まえて、日中米韓4カ国の外交・防衛関係者ら13人が参加し、率直な意見を交換しました。
冒頭、大半の有識者が最大の安全保障リスクを「米中対立」「台湾海峡問題」「北朝鮮核ミサイル問題」と認識している一方で、中国の有識者が「日本の防衛費増強」「米国偏重の日本外交」を挙げていることが議論となりました。
北朝鮮の核保有を放棄することはゼロに近い。であるなら、日本の国防費増額も理にかなっている
まず4カ国代表者による問題提起がありました。日本側代表は北朝鮮リスクに関して「ウクライナ戦争の影響を考えなければならない」と指摘しました。ロシアが核兵器使用も辞さない構えで、NPT体制に責任を持たなければならない核保有国の一つが前提条件を崩しており、北朝鮮が核ミサイル開発を放棄する可能性は限りなくゼロに近いと表明したものです。台湾海峡危機も継続しており、中国の国防費の5分の1規模である日本の防衛費増額が「リスク」と指摘するのは見当違いだと主張しました。
これに対して中国側代表は、米韓の「ワシントン宣言」や米韓日の統合司令強化など一連の動きは「紛争につながりかねない」と批判。さらに朝鮮半島のリスクについても「ロシアがベラルーシに戦術核を配備したが、北朝鮮の現状に似ている。米戦略原子力潜水艦が韓国に入港しており、核戦争が偶発的に起こる可能性がある」と懸念を表明しました。その上で、共通の潜在的利害を乗り越えるためにも「2~4カ国」が「実行力とバランスある対話の実現すべき」を訴えました。北朝鮮に関する戦略課題に関して中国側がこのラインまで踏み込むのは珍しいことです。
米国側代表は従来の北朝鮮側の姿勢について「対話に関心がなく、直近の行動は平和の安定に挑戦している。経済制裁を継続的に使う他ない」と現状を分析しました。さらに中国の有識者が日本をリスクとして捉えていることに関して「日本が防衛費を増強しているのは現実的な対応だ」として中国側の見解を質しました。さらに米中がそれぞれ掲げるビジョンに関して「米国はアジア太平洋から退くことはないし、同盟関係や民主主義などの価値観を変えることもない」と釘を刺しました。
韓国側代表は、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党総書記が進める「政権生き残りのための核保有政策」に対して、「米韓が保証できるものではない」と指摘。同時に北朝鮮が国民と経済を犠牲にしても「核放棄することはない」との見方を示しました。韓国の尹錫悦大統領が台湾問題やウクライナ戦争に対して従来よりも積極的な姿勢を示していることについては「国際秩序を重視しており、国際的な韓国の役割を拡大しようと努めている」と述べました。
一連の問題提起に続いてディスカッションに入りました。4カ国の主要な目標が「核戦争の回避」で一致したものの、具体的にさまざまな課題を克服して、具体的に何ができるかが話し合われました。