ステレオタイプ的な対中政策で 我々は何かを見失っているのではないか / 神保謙(慶應義塾大学 総合政策学部教授)

2023年8月28日

jimbo.jpg 今回のフォーラムの安全保障対話に参加予定の、慶應義塾大学 総合政策学部教授の神保謙氏は、コロナ以降の日中関係について、坂道を転げるような形で日中関係は悪化したと指摘。その要因として、①米中の戦略的な対立が深まり、安全保障のみならず、経済の領域までに拡大し、日中関係それに引きずられる形で対立関係が深まったこと、②習近平国家主席の下での中国の社会体制が硬直化し、中国国内の言論空間が狭まってきたことを挙げました。

 そうした中で、政治家同士の交流が極めて薄くなり、多くの有識者が自由に対話する環境も著しく制限されている状況に危機感を表明。その上で、中国側が政治的に発言の自由が制限されているというのであれば、今回の

 「東京-北京フォーラム」において、日本側が自由な発言をすることで、自由な議論ができる状況を羨ましい、ということを中国側に示せられるような、そして、日中間でも安全に対話ができる、ということを国内外で示すことが重要な使命だと語りました。

 さらに神保氏は、日中関係について、日米中という3つの軸で見ている限り、米中間が対立している状況では、同盟国として日本は「日米対中国」という構図の中だけで議論してしまうと指摘。その上で、世界が多極化する中で、経済のパイを拡大している中国に対して、日本は日米の軸だけを持ちんで、中国と付き合う必要なない、との見方を示しました。続けて、アメリカと同じことをしていれば同盟関係が強くなるわけではなく、日中関係がどのような形で発展すれば日本のためになるのか、そして、その結果として日米中関係にとってもプラスになる、という発想を持つことが重要だと強調しました。

 最後に神保氏は、コロナ以降、中国と直接の対話ができなかったことで、中国国内の構造変化や、中国が世界においてはたしている役割を十分に理解していないのではないか、との懸念があると強調。そうした点を見落としたまま、ステレオタイプな形で中国を見て、日本の対中政策を決めていくことに危機感を示しました。その上で、今こくした課題を見つけるために対話は必要であり、様々な仮説を持って今回のフォーラムに参加したい、と意気込みを語りました。


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