開幕式に引き続いて、「日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約 再構想」と題して、日中双方から2人ずつ問題提起をした後、1時間半にわたって白熱した議論が行われました。討司会は言論NPO代表の工藤泰志が務めました。
日中平和友好条約に新たな意義を付与し、両国関係を律していくべき
日本側からは軍備管理・科学担当審議官(大使)や駐ミャンマー大使、沖縄担当大使を歴任した宮本雄二・元駐中国大使が登壇して「日中平和友好条約に新たな意義を付与し、両国関係を律していくべきだ」と問題提起しました。中国側の外交姿勢について「指導者、政府の政治的意思が重視されているが、日中共同声明と日中平和友好条約は日中関係を律する基本原則と基本的枠組みを定めている」と指摘。同時に条約・国際法に則り、社会制度の相違を乗り越えて善隣友好関係の発展させる必要性を訴えました。
続いて、上海市日本学会会長を務める胡令遠・復旦大学日本研究センター主任が「『平和と友好』という45周年を迎えた中日平和友好条約の魂に立ち返ることが最も重要だ」と述べました。さらに1972年9月に当時の周恩来首相の招きで、田中角栄首相が訪中して日中共同声明が調印されたことに言及。「日中両国間の国交正常化は、第三国に対するものではない。両国のいずれも、アジア・太平洋地域において覇権を求めるべきではなく、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国、あるいは国の集団による試みにも反対する」とした第7項「覇権条項」に触れて「どの国が覇権を発揮しようとしているのか。米国が覇権を求めたら日本が従うのではないか。中国の海洋進出・軍事力拡大が著しいと言うが、他国を威嚇しているわけではない。半ばバーチャルな考え方だ」と不満を表明しました。
日中双方が問題解決に向けて英知を出して対処する必要がある
日本側2人目の小嶋華津子・慶應義塾大学法学部教授は、平和友好条約締結から45年を迎えて「条文遵守が難しくなっている。形骸化の側面もある」と指摘しました。その上で「日中双方のパワーバランスが変わり、中国の外交・経済戦略において、日本の立場も相対的に低くなっている。官民のアクターも格段に変化した」と現状を分析し、一歩間違えたら衝突も起こり得るとの懸念を示しました。そうした状況に陥らないためにも、東京電力福島第1原発処理水に共同研究するような高度な枠組みを設置する戦略が必要ではないかとの考えを明らかにしました。
中国側2人目となる上海対外経貿大学教授の陳子雷氏は、10月に北京で開催される「北京-東京フォーラム」を踏まえて、中日両国市民の意識を問うアンケートの設問作成に関する問いかけがありました。「『戦争リスクがありますか』と問われたら、『分かりません』と回答する。何をどう聞くかである程度答えが見えてくる」と指摘した上で、「意見の相違やリスクがあるならば、上手にコントロールをして回避しなければならない。中日双方が問題解決に向けて英知を出して対処する必要がある」と述べました。
一連の問題提起を受けて、自由討議が始まりました。