先人が掲げた思想を、我々が具体化を「第5回日中安全保障会議」第3セッション・閉幕式報告

2023年9月08日

 日中の問題提起が噛み合わなかった点について、司会の増田氏が「中国側にとって、北朝鮮の何が脅威になるのか」と述べ、改めて見解を質しました。他の日本側の出席者からも「核拡散は避けなければいけないと思わないのか。正直な立ち位置を聞きたい」との声が上がりました。


日中が協力すれば、北朝鮮の核問題に関する雰囲気をプラスに変えられる

 これに対して、中国側の研究者からは「我が国は対北朝鮮物資の95%を支援している。国連安保理決議の制裁にも同意してきたが、あくまで手段であって、目的ではない」と理解を求めました。その上で「もし北朝鮮が何かしらのチャレンジをしたら、最初にダメージを受けるのは中国だ」と述べました。

 30年来の北朝鮮の核開発計画の実情をよく知る日本側参加者は「中国による6カ国協議や国連制裁への対処はそれなりに納得している」と一定の評価をした上で、「北朝鮮と米韓の軍事衝突の可能性が高まっている」と危機感を表明。そのためにも日中が戦略的に危機回避の協力関係を構築するべきだとの考えを強調しました。

 こうした呼びかけに対して、中国側の専門家は「朝鮮半島問題の根源は米朝関係の緊張ある。和解が重要だ」と指摘すると同時に、日本が果たすことのできる役割を質しました。
日本側の出席者は、核兵器の脅威に直面する日本の現状について説明しました。「中国が余裕なのは核保有しているからだ。核を持たない日本はどうする? 核を保有するか、米国の核の傘にいるしかない。日中が北朝鮮核問題を真剣に協力すれば、雰囲気をプラスに帰られるし、米国にも伝えられる」と語り、中国側への協力を要請しました。

 司会の増田氏は「我々は国家指導者ではない。一歩踏み出すには何ができるか、自由に発言してほしい」と一層の議論促進を求めました。


北朝鮮の核問題でも、日中間で一定程度の議論はできた

 中国側の研究者の一人が意を決して「日本側の意見に賛同する」と表明した上で、「共通認識があるとすれば、雰囲気作りに向けて何ができると考えるか。日朝関係で拉致被害者問題の解決を目指すと言うが、今でも北朝鮮でも生存者はいると思うか」と見解を質しました。続けてもう一人の専門家が「中日が朝鮮半島の安定と核問題に協力することには全く賛同する。日中それぞれができるアプローチがある。あまり過激にならないようコンセンサスが重要だ」と述べました。さらに緊張する米中関係についても「北朝鮮に大きな政治的主張をさせる隙を与えている」と指摘しました。

 拉致被害者が北朝鮮で生存しているか否か、との問いについて、日本側の出席者は「分かりません、と答えるしかないが、人命がかかっている」と述べ、ないがしろにできない問題であると強調。同時に「拉致問題のみで解決するのは無理だ。核問題など大きな文脈に置かないとインセンティブにならない」として、日中の協力を改めて要請しました。
1時間半近くに及んだ討議は今後に繋がる内容で、日本側の出席者からは「非公開対話の魅力は、こういったところにある」との感想が聞かれました。


アジアや世界の平和を目指して、日本が米国を説得できるような国を目指したい

 閉幕式では、上海国際問題研究院の陳東暁院長が中国側を代表して「非常にスムーズに開催できた。オンラインであったが、非常に率直で建設的な議論ができて当初の目的に達することができた」と開催意義を強調。「中日双方が平和・友好・共存という共通利益の重要性を理解している。さらにメカニズムとして確立していきたい」と表明しました。

 日本側からは言論NPO代表の工藤泰志が挨拶に立ち、「日本は米国と一緒に行動することを目的としていない。日本は、世界の問題を解決できる国となることを目指している」と力強く表明。「先人が掲げた思想を、我々が具体化をしていきたい。アジアをはじめ、世界の平和を目指して合意を形成し、米国を説得したい。我々は属国ではない。米国を変えるような役に立つ国になりたい」と高らかに宣言して、一連のセッションを結びました。

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