第19回「東京-北京フォーラム」が、4年ぶりに対面で開催されることを、心よりお慶び申し上げます。まず私は、この19年間の長年にわたり、日中関係の発展に御尽力されている皆様に心からの敬意を表したいと思います。
この対話はこの19年間、一度も中断したことがなく、続けられてきました。
この間、両国関係は常に順調だったわけではありません。しかし、どんな困難があってもこの対話を必ず開催し、その困難に向き合うために両国の多くの有識者が集まった、と聞いています。
そうした民間対話の舞台が日中両国にあることは、この二つの国の未来にとって極めて大切なことだと、私は考えております。
今年は、日本と中国が、両国の平和友好の諸原則を定めた、日中平和友好条約が45周年を迎える節目の年です。
私は、日中両国は地域と国際社会の平和と繁栄にとって共に重要な責任を有する大国だ、と考えています。
その条約発効の記念日である10月23日の目前に今回の対話が行われます。
「アジアの安定と世界の平和協調に向けた日中両国の責任」という全体テーマの下で、今後の日中関係のあるべき姿につき率直な議論が行われることに、私は大変勇気づけられる思いです。
今の世界は歴史的な転換点にあり、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持・強化できるかの瀬戸際に立っていると、私は考えています。
本フォーラムの分科会では、「核の安全体制の構築に向けた日中協力」も扱われます。私がG7の議長として、今年の広島サミットや世界の多くの場で呼びかけ続けたのは、世界が力を合わせなければこの歴史的な困難を乗り越えることは難しい、ということです。
つまり、分断や対立ではなく、国際社会の協調です。
私たちは被爆地の広島で、核軍縮に焦点をあてた「広島ビジョン」をG7で合意し公表しました。
今、私たちは国際秩序の根幹を揺るがす課題に直面しています。力による現状変更のための核兵器による威嚇、ましてやその使用はあってはなりません。「核兵器を使わない、核兵器で脅さない」。我々人類の生存に関わるこの根源的な命題を我々は今こそ問わなければなりません。
私はその努力を世界で、特にこのアジアでも広げたいと考えています。
そのためにも、この地域の平和と繁栄に重要な責任を持つ中国との対話は、極めて大事です。
私と習近平主席は、「建設的かつ安定的な日中関係」の構築という大きな方向性で一致しています。
これを双方の努力で、確実に進めていく必要があります。
明日から、政治外交や核の問題、日中経済やデジタル社会など7つの課題で議論が始まり、若者の対話もあると聞いています。
主催団体が説明する通り、民間での対話には「特別の使命」があると私も考えます。
引き続き、皆様の御支援をお願いするとともに、本フォーラムの益々の発展を祈念いたします。