日中平和友好条約締結発効45周年の節目となる10月23日を前に、両国の健全な友好発展を目指す議論の舞台はいよいよ北京へ──。
4年ぶりの対面開催となる第19回「東京-北京フォーラム」(主催:言論NPO、中国国際伝播集団、後援:日本国外務省、中華人民共和国国務院新聞弁公室、協力:中国国際経済交流センター、中国社会科学院日本研究所)が10月18日、北京市中心部の「北京国際飯店」コンベンションセンターで開幕しました。(開催は18日~20日の3日間)
政治外交、経済、安全保障、核軍縮・不拡散、デジタル、メディア、青年対話の計七つの分科会に、両国から100人近くの有識者、専門家らが参加予定で、18日夜には、本フォーラム最高顧問を務める福田康夫元総理大臣も北京入りしました。
中露首脳会談直後、世界が注視する中での開催
時を同じくして、北京では17、18両日、中国政府主導の巨大経済圏構想である第3回「一帯一路」国際首脳会議が開かれ、ロシアのプーチン大統領をはじめ、アジアやアフリカなどの各国首脳が集結。全世界が18日の習近平国家主席とプーチン大統領による中露首脳会談の模様を注視する中、「東京─北京フォーラム」もまさにリアルタイムで議論を深めることになります。政府間対話の遅滞が現在も続く一方で、こうした民間主導の多年の外交努力を評価して、日中双方のメディアも多数、本フォーラムを取材予定です。
開幕日の夕方、中心街の道路封鎖など厳戒態勢が敷かれる中、日本側参加者が続々と北京に到着。長旅の疲れも見せずに早速、会場のホテルで中国側参加者と合流し、各分科会に分かれて最終打ち合わせに臨みました。平和友好条約締結から45年を経た歴史を振り返りながら、約1時間半にわたって両国の差異や各自の問題意識を提起するなどして、翌日の議論の叩き台にしていました。
福田元首相も北京入り......晩餐会で日中双方が真剣議論することを表明
その後、両国の主要参加者が出席する晩餐会が行われ、主催者を代表して中国国際伝播集団副総裁兼総編集長の高岸明氏と言論NPO代表の工藤泰志が冒頭の挨拶に立ちました。
高岸明氏が「コロナ禍が終結して4年ぶりの対面開催で、新しき友人、古き友人をお迎えできたことは心から嬉しく思う」と歓迎の意を表明し、中国側要人を紹介しました。
日本側から工藤も「4年ぶりの対面対話の準備は大変だったが、いざやってみると大変良い」と応じました。さらに10年前の尖閣諸島(中国名=釣魚島)領有権問題の対立が激しかった時期に北京で開催した第13回フォーラムを振り返って「あの時、我々の民間対話によって『不戦の誓い』(北京コンセンサス)を合意でき、日中両国と世界に発信することができた。その際、深夜まで大変な作業に手伝ってくれたのが高岸明さんだった。世界が緊迫する局面にある今、共に苦労した二人がこうして再び一緒にフォーラムを開くことができるのは喜ばしい」と、多年にわたる本フォーラムの開催意義を強調しました。
その後登壇した中国人民政治協商会議第14期全国委員会常務委員会委員の杜占元・中国国際伝播集団総裁が祝辞を述べました。杜占元総裁は、「離れていても繋がっている」という意味の漢詩「山川異域 風月同天」を引用しながら「独りよがりの発展はできない。私たちは近隣であり、アジアをはじめ世界でしかるべき果たす責任を担っている。19回を数える本フォーラムも紆余曲折があった歴史を鑑にして、未来に向かって何をすべきか、知恵を出してほしい。皆さんの議論に期待したい」と激励、両国の友好発展と本フォーラムの成功を祈って乾杯の音頭を取りました。
日本側からは、本フォーラム実行委員長の武藤敏郎・大和総研名誉理事が「コロナ禍で過去3年間はオンライン開催で、4年ぶりに中国の友人と顔を合わせることができて嬉しく思う」と語り、サプライズで日本政府首脳とのやりとりを披露。その上で「本番の前に親しく懇談し、友情を温めたい」と述べ、活発な議論の展開に期待感を示しました。
このフォーラムは、世界に対しても発信し、大きな役割を果たしている
懇談が盛り上がりを見せる中、中国社会科学院日本研究所の楊伯江所長が登壇し、「19回目を開催するにあたって、世の中が大きく変わったことが感慨深い。その中で、このフォーラムが粘り強く続けてこられたことに感動を覚える」と話し、本フォーラム発足時から多大な尽力を賜った趙啓正・元国務院新聞弁公室主任(中国政治協商会議第11期全国委員会外事委員会主任)、明石康・元国連事務次長らの名前に言及。その上で両国関係の現状について「激しくやりあった10年前に比べて、中日はまだ理想的な関係に至っておらず、新たな十字路にある。厳しい現実の課題があるからこそ、明日からの議論に価値がある」と呼び掛けました。
続けて、発足時から深く関与し、本フォーラム副実行委員長を務める宮本アジア研究所代表の宮本雄二・元駐中国大使が「最初に参加したのは大使時代だった」と振り返りながら、「工藤代表が言う『日本の未来に賭ける』というエネルギーに心を打たれた」と回想。その上で「『東京─北京フォーラム』は日中のみならず、世界に対しても発信し、大きな役割を果たしている。どこにも恥じることのない素晴らしい対話であり、必ずや明日以降の議論が成功するという思いを強くした」と、本フォーラムの意義を高く評価しました。
中国の著名琵琶演奏者の方錦龍氏が日中文化の象徴の一つである五弦琵琶で、唐代の詩人、白居易の漢詩をイメージした曲などを披露。テーブルに着いた参加者たちは和やかなムードの中、両国と北東アジアの未来のために真剣な議論をすることを誓い合いました。
米中対立が深まる中での日中関係の再構築をはじめ、台湾海峡問題や北朝鮮の核ミサイル問題など北東アジア危機を回避するための平和的枠組みの模索、さらにはウクライナ戦争「終結」に向けた方策、日本経済界の対中警戒心を解く処方箋、あるべきデジタル社会のルールに向けた知恵──など山積する世界の諸課題について、日本と中国が「民間」の舞台で率直に話し合い、意義ある合意形成を目指します。
日中間の「本気」の対話である「第19回東京-北京フォーラム」での議論の行方にご注目ください。