互いの不信感を克服し、共通課題に対応していくことで日中間の新しい未来を切り開く─「第19回東京-北京フォーラム」経済分科会報告

2023年10月19日

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 第19回「東京-北京フォーラム」の七つの分科会の一つ、経済分科会は10月19日午後、「世界経済のリスク回避と日中の役割」と題して、中国側から4人、日本側から6人のパネリストが参加しました(うち日本側4人はオンライン参加)。司会は元中国社会科学院日本研究所副所長の張季風・全国日本経済学会常務副会長と元日銀副総裁の山口廣秀・日興リサーチセンター理事長が務めました。


日中経済が共に困難となる中、互いの不信を克服し、どのような協力につなげられるかが、今回の大きなテーマ

 冒頭、中国側司会の張季風氏は「日中関係がうまく進んでおらず、特に日中間経済貿易協力において、外部環境に多々のリスクと問題が存在している。現実的な課題に対して議論していきたい」と述べ、活発な意見交換を求めました。日本側司会の山口氏も中国側の意見に「ほぼ賛同する」と応じた上で「世界経済、日中経済が共に不安定で困難の度を強めている中、今後の見通しをどう見ているのか。お互いの不信感を克服し、日中間の協力につなげていくのか。しっかり議論をして良い方向性を見出せるといい」と問題を提起し、議論がスタートしました。

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 元中国銀行首席経済学者である曹遠征・中銀国際研究有限公司董事長は「現在の世界経済情勢はインフレ率が異常に高い。ロシアとウクライナの衝突によってコモディティ価格が上昇し、コストも上昇したことで、いわゆるスタグフレーションに入った」との認識を示しました。加えて「米国は世界ルールを破っている。グローバリゼーションに反して(外注先を)nearshore、friendshoreといった新しいコンセプトを出した」と指摘しました。

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 その上で日中両国に関して「この40年間はグローバリゼーションでいろいろな優遇を享受した。グローバリゼーションの継続発展を守ると同時に、日中韓の自由貿易交渉の再開を急ぐべきだ」と主張しました。

 続いて発言した朱光耀・元財政部副部長は直近の中国経済データを元に「2023年のGDP増加率目標5%を達成することは問題ない」と分析。さらに「中国が高質な経済発展を実現するには、経済構造の変更と対外開放の堅持によって、持続可能な発展を推進できるかが鍵を握る」と述べました。また、「中国の経済回復と産業グレードアップも進んでおり、経済発展の潜在力が大きいことを鑑みて、2024年のGDP目標を5%に設定すべきだ」との見解を示し、中国経済の安定に自信を見せました。

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 前アジア開発銀行総裁の中尾武彦・みずほリサーチ&テクノロジーズ理事長は「日本経済が回復しているとよく言われるが、政府や日銀に頼らない独自な成長策を構築しなくてはなければならない」と指摘した上で、「民間企業の活力をいかに回復させるかが課題だ」と新たな問題を提起しました。さらに中国経済については「不動産バブルを懸念している他、米中関係は日米貿易摩擦が発生した1970年代後半~90年代の日米関係と比較しても厳しい状況だ」との見解を示しました。

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 続いて明日20日から日本の臨時国会が招集されるため訪中を見送り、オンライン出席となった元経済産業副大臣の牧原秀樹・衆院議員は「第二次世界大戦後、最も不安定な時代を迎えている。WTO体制など平和構築のために生み出したルールやメカニズムが機能不全に陥っているのが最大の問題だ」と分析すると同時に「米国にも原因がある」と指摘しました。

 続けて「中国をはじめ、世界中の国々が対抗し、CPTPP やRCEPなどを推進し、WTOの機能に取って代わる努力をしている。WTO違反の場合、救済手段も弱すぎる」との見解を表明。さらに、80年代の日本が米国の一方的な通商制裁措置に苦労したことを踏まえ、そうした経験を日中韓で共有して協力を模索するよう提唱しました。


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