「第19回 東京-北京フォーラム」北京コンセンサス

2023年10月20日

⇒ 第19回東京ー北京フォーラム(2023年)関連記事一覧

 「第19回北京―東京フォーラム」は10月19日から、2日間にわたって、北京で4年ぶりとなる対面方式で行われ、政治外交、核と安全保障、そして、経済、デジタル社会、メディア、若者対話の議論に、日中両国を代表する有識者約100氏が集まり、率直かつ踏み込んだ対話を行った。

 今回の対話で、私たちが全体テーマに選んだのは「平和」である。

 今年は、日中両国の平和友好協力の諸原則を定めた日中平和友好条約が45周年の節目の年を迎える。

 この条約の意義は、国連憲章と平和の原則を守り、両国が直面する困難は対話により平和的に解決する点にある。

 ところが、ウクライナ戦争の継続は1年8カ月に拡大し、新たに起きたイスラエルとパレスチナの衝突は人命上の被害を拡大しようとしている。経済をめぐる対立で世界は分断の危険性を高め、更に核使用の威嚇が世界の不安を高めている。

 国際社会の平和に対する努力が厳しく問われる現在の局面において、アジアひいては世界の平和と繁栄に責任を負うはずの日中両国が、世界の今の状況に対し、共に向き合い、力を合わせて責務を遂行することが本当にできるのか。それこそがこの節目の年に、私たちに突きつけられた重大な課題なのである。

 この二日間、私たちは真剣に議論し、次の二点を確認した。

 一つは、この条約の原点と今日的な意義を再確認し、アジアにおける緊張緩和と紛争回避のためにこの条約を機能させること。二つは、私たちは世界やアジアに平和と安全の秩序を構築することで合意し、この目標を実現するために、あらゆる努力を始めるべきだ、ということである。

 そのためにもまず両国はあらゆる対話を軌道に乗せなくてはならない。

 民間の対話には特別な使命がある。両国関係が共通の課題を抱えた時、その解決のための環境づくりを、政府に一歩先駆けて取り組むのが、私たち民間対話の役割である。

 その使命を果たすため、私たちは、この会場に集まり、議論を行い、以下の合意をまとめた。


  • 私たちが今こそ、この地域の「平和と繁栄」に取り組むべきと考えるのは、それこそが、国交正常化後の四つの政治文書で定めた「我々の責任」だからである。今年の世論調査では両国民の大多数が、日中平和友好条約の意義を政府間が再確認し、それを機能させる新しい合意が必要だと回答している。こうした民意に応えるためにも両国はハイレベル交流を一層促進し、政府間対話を再開すると同時に、日中平和友好条約の実行強化のために条約を補強し、常設対話のシステムを設置するべきである。

  • 今回の世論調査で明らかになったのは、両国民の半数が、世界の核戦争を懸念していることである。私たちは世界や東アジアの核体制の立て直しで協力し、核不拡散にともに取り組む。最終的には核なき世界の理想に現実を近づけるために協力して努力する。福島の処理水海洋放出に起因する懸念に対し、真摯に対処する。これを契機に、原子力の平和利用に関する定期協議を開始する。

  • 私たちはウクライナ戦争の長期化だけではなく、イスラエルとパレスチナの衝突の動向を懸念している。私たちは国連憲章に基づく主権と領土の一体性の尊重や、紛争の平和解決を擁護する。この立ち位置から私たちは全ての戦争のエスカレーションには反対し、外交交渉による停戦や対話による事態の鎮静化に向けたあらゆる努力を支持する。

  • 私たちの共通認識は、世界の分断に向けた動きをこれ以上悪化させるべきではなく、持続的で包摂的な世界経済を実現することにある。日中の協力発展のためには経済の全てを安全保障で考えるべきではなく、経済対立のリスクを管理し、信頼回復と、新たなビジネスを生み出す知恵が必要である。日中経済は相互に補完しており、環境問題、少子高齢化、潜在成長率の低下など共通の課題もある。企業に必要以上のリスクを求めるのではなく、企業活動の自主性の尊重や規制の予見可能性を高めることは協力の前提である。そしてその上で市場化、法治化、国際化したビジネス環境の改善、および東アジア地域の経済の一体化に向け、政府間だけでなくあらゆる対話を始める必要がある。

  • デジタル社会に向け、人類の社会課題をデジタルやAIで解決する取り組みが世界で動いているが、私たちは日中両国でも相互補完、協力の可能性があることを合意している。目指すデジタル社会は人類の幸福や生存に寄与すべきものだが、拡大する生成AIが個人情報の流出や偽情報の拡散などへの懸念をもたらすなど、ビジネス展開には世界共通のガバナンスが必要である。今回の対話では、目指すデジタル社会の実現に向け、共通の原則が必要であるということに合意し、今後そのための作業を継続することを同意した。


 私たちは、これらの合意を踏まえ、今年45周年を迎えた日中平和友好条約の再出発や日中両国が世界やアジアの平和や課題に協力して取り組むために、一層の努力を行う決意である。

2023年10月20日
中国国際伝播集団
言論NPO