6月25日、北京を訪問した「東京-北京フォーラム」日本側指導委員会の武藤敏郎・指導委員長、宮本雄二・副指導委員長、山口廣秀・副指導委員長、そして主催団体代表の言論NPO代表の工藤泰志は、中国側の指導委員会の代表者をはじめとした関係者と「第20回東京-北京フォーラム」に向けた事前協議を行いました。
冒頭、中国側主催者を代表して杜占元・中国国際伝播集団総裁が挨拶。まず、4月に国務院新聞弁公室主任に就任したばかりの莫高義氏からのメッセージを代読しました。明日、日本側指導委員会との面会を予定していたものの、公務によりキャンセルとなったため、急遽寄せたメッセージの中で莫高義主任は、本フォーラムを通じて中日民間友好に尽力してきた両国関係者の努力に敬意を示すとともに、これまでの貢献を高く評価。本フォーラムのさらなる発展に期待すると同時に、国務院新聞弁公室主任としても強い支援を継続していくと約束しました。
続けて杜占元総裁は、両国の関係者が政治や民間交流の課題を議論する「ハイレベル人文交流フォーラム」が4月に東京都内で開催されるなど両国間の人的交流が活発化してきていると指摘。中国国際出版集団も国内外のコミュニケーションを促進する組織として、今後もこうした交流を支援し、国民感情の好転に向けて尽力していきたいと意気込みを語るとともに、どんなに両国関係が悪化しても20年間途絶えることなく続いてきた本フォーラムが果たす役割を重ねて強調しました。
戦略的互恵関係を確立するために、あらゆる課題に粘り強く取り組み解決していく
続いて日本側を代表して挨拶した武藤敏郎・日本側指導委員長も、日中の政府間外交が動き出していることを踏まえながら、「日中間には様々な課題があり、必ずしも解決が簡単でない問題もある。しかし、戦略的互恵関係を確立する、日中友好を深めるという考え方に立って、こうした問題に粘り強く取り組むと同時に、解決をしていくことができれば我々の本懐だ」と本フォーラムの果たすべき役割を強調しました。
今年の記念すべき20回目のフォーラムについては、「成功するために何か課題があるとは思わない」と成功を強く確信しつつ、「残された課題は『次の10年』の対話をどうバージョンアップしたものにしていくか、だ。容易いことではないが、日本と中国にはアジアのみならず世界の平和と安定のために役割を果たしていくという大きな課題がある。その実現に向けた対話を続けることがまさに我々の使命だ」と居並ぶ委員らに呼びかけました。
続いて、日本側主催者を代表して発言した工藤は、前日までに行われてきた日中主催者間の協議状況について報告。現在の世界は二つの大きな戦争が起こると同時に、気候変動など様々なグローバル課題も進行しているなど「危機が複合化している」と指摘しつつ、「そうした状況にあるのに世界は力を合わせて取り組むことができていない。それどころかむしろ分断に向かっているのでは戦えない。それこそが危機なのだ」と問題提起。だからこそ、こうした困難を克服するために、今回のフォーラムを日本と中国が世界の新しい協力の基軸になることを目指す対話にしたいとした上で、全体テーマや分科会の設計もそれに沿ったものを検討してきたと説明しました。
こうした視点を踏まえて、両国の指導委員間で協議が行われました。その結果、本年の「第20回東京-北京フォーラム」を2024年12月3日~5日の3日間の日程で開催すること。全体テーマを「多国間協力に基づく世界秩序と平和の修復に向けた日中協力」とすること。政治・外交、経済、安全保障、メディア、デジタル、青年対話、特別対話(2つ)の合計8つの分科会を開催することで合意しました。
一方、8つの分科会のテーマについては、 日中の指導委員会の委員から様々な提案や意見が出され、今後、詳細を協議していくことになります。
また、過去19年間同様に、フォーラム開催前に両国関係や地域の課題について日中両国民の認識を調査する日中共同世論調査を実施し、発表すること。さらに、分科会での議論を踏まえ、今後の日中関係のあるべき方向性について両国で共同宣言をまとめて世界に発表することでも合意しました。
事前協議終了後、日本側訪中団が参加して記者会見を行いました
事前協議終了後には、「第20回東京-北京フォーラム」の開催概要について在北京の日本メディアを対象に記者会見が行われました。日本側主催者を代表して工藤は、今回のフォーラムの意義や中国側との協議の進捗について説明。8つの分科会のそれぞれのテーマについても紹介しました。
同フォーラム副指導委員長の宮本雄二氏は、「今回の事前協議では、二国間関係を超えて世界の課題で協力し、グローバルな視野から二国間関係を考えることで、新たな意義を見出していくべきだという点で、日中で一致したことは感慨深い」と協議の成果を紹介しました。
同じく副指導委員長の山口廣秀氏も協議の成果について、「双方の問題意識や可能性が共有できた。世界が危機的な状況にある中、対立や意見の相違を乗り越え、何らかのブレークスルーを模索したいという姿勢が中国側にもあった。12月のフォーラムで、世界に訴えかける結論が出せるのではないか」と期待を示しました。
日本メディアの記者からは、中国側からの参加者や毎年フォーラム開催前に実施する日中共同世論調査だけではなく、福島原発処理水や訪中ビザ緩和、日中間の人的往来の減少など二国間の諸課題にどのように取り組む姿勢なのか、また来年2025年以降の「東京-北京フォーラム」がどのようになるのか、など質問が出ました。
今回の事前協議を経て、フォーラムの準備は今後更に本格化します。「第20回東京-北京フォーラム」開催の準備状況につきましても、随時言論NPOホームページ上でお知らせいたします。是非ご覧ください。
今回の日中両指導委員会による事前協議で決定したことは以下の通り。
- 12月3日~5日の3日間、対面方式を基本に東京にて「第20回東京-北京フォーラム」を開催する
- 全体テーマは「多国間協力に基づく世界秩序と平和の修復に向けた日中協力」とする
- 分科会は、常設の政治・外交、安全保障、経済、メディア、デジタルに加え、青年対話と特別対話(2つ)を加えた8つのセッションを行う。
- 分科会での議論を踏まえ、最終的に共同声明を公表する
- 両国関係や地域の課題に対する日中両国民の認識を19年間調査している世界で唯一の世論調査である、日中共同世論調査は今年も実施する。
事前協議参加者
【日本側】
武藤敏郎(同フォーラム指導委員長、株式会社大和総研名誉理事)
宮本雄二(同フォーラム副指導委員長、元駐中国大使)
山口廣秀(同フォーラム副指導委員長、元日銀副総裁)
工藤泰志(同フォーラム執行委員長、言論NPO代表)
【中国側】
劉洪才(指導委員会委員、中国国際交流協会副会長)
陳小工(指導委員会委員、元中国共産党中央外事弁公室副主任)
程永華(指導委員会委員、中国日本友好協会常務副会長)
杜占元(中国側執行委員長、中国国際伝播集団総裁)
張燕生(執行委員会委員、中国国際経済交流センター首席研究員)
楊伯江(執行委員会委員、社会科学院日本研究所長)
高岸明(執行委員会委員、中国国際伝播集団副総裁兼総編集長)