日米中韓4カ国の安全保障、外交専門家らによる多国間対話「アジア平和会議」(言論NPO主催)が9月3日、東京・六本木の国際文化会館で開幕しました。「米国大統領選と北東アジアの平和の覚悟」をメインテーマとし、2日間の日程で各種公開セッションなどが行われ、活発な討議が繰り広げられます。
会議初日、最初のプログラムは、日米両国の参加者10人による「日米対話」の非公開セッションが開かれました。言論NPOが毎年実施している日米中韓4カ国の専門家調査「2024年:北東アジアの平和を脅かす10のリスク」を叩き台に議論するもので、発言者の特定を避けるチャタムハウス(王立国際問題研究所)・ルールに則って行われました。
言論NPOが行った「北東アジアの平和を脅かす10のリスク」結果を基に議論を開始
今年の専門家調査は7月12日~8月22日までインターネットで実施し、4カ国の外交問題シンクタンク研究者に加え、政府幹部OBや軍関係者、大学の安全保障専門家ら161人から回答を得ました。紛争発生の要因について、その可能性や影響の大きさを踏まえて採点してもらい順位付けしたもので、ワースト1には「北朝鮮が核保有国として存在し、ミサイル発射などの挑発的な行動を繰り返していること」がなり、第2位は「サイバー攻撃の日常化」、第3位には「米中対立の深刻化が、アジアの経済や安全保障における緊張を高めていること」が続きました。さらに前年ランク外だった「南シナ海における中国の行動によってフィリピンなど周辺国との間に緊張があること」が第4位に入りました。このトピックスは米国の専門家の採点では最大のリスクと捉えられたほか、日韓も「2024年に紛争に発展する可能性が高い」と見ている結果が得られました。一方で、近年の緊張が伝えられる「台湾有事」については、今回の調査で25項目の最下位となり、偶発的な事故の発生は極めて低いと見る傾向がうかがえました。
第6位には「日米韓という米国を軸とした3カ国と中国・ロシア・北朝鮮の3カ国との間で、『新冷戦』を想起させる対立構造が生じ始めていること」が、第10位に「ロシアと北朝鮮が『包括的戦略パートナーシップ条約』に署名し、露朝関係が軍事同盟の水準に上がったこと」が入るなど、朝鮮半島情勢への懸念も目立ちました。
さらに11月の次期米大統領選結果が「北東アジアにいかなる影響を及ぼすか」が第9位に入り、岸田文雄首相の退陣表明に伴う自民党総裁選の行方とともに、「分断」が指摘される米国の政治状況の変化に注視せざるを得ないことが鮮明になっています。
こうした現状認識を踏まえて非公開セッションを行い、司会は言論NPO代表の工藤泰志が務めました。
冒頭、米国の軍事関係者が「良好な日米同盟」と米大統領選の激戦状況に触れて「民主党のハリス副大統領ならば、バイデン政権の政策が継続されるだろうが、共和党のトランプ前大統領が復帰すれば継続性は望めない。ただ、両候補の対中政策は一致している」と指摘。さらに今年7月末の日米外務・防衛閣僚会議「2プラス2」において、在日米軍司令部が「統合軍司令部」となり、自衛隊には「統合作戦司令部」を新たに設置し、陸海空の各部隊を一元的に指揮することに合意した点については「中国に対して大きなシグナルになるだろう」と述べました。
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