北東アジアの平和実現に向けて、4か国の専門家と議論し、「平和への覚悟」を示したい~「アジア平和会議」公開フォーラム開会式 報告~

2024年9月04日

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朝鮮半島、米中対立、南シナ海、そして米大統領選の影響といった懸念材料が山積しているこの北東アジアで"平和への覚悟"を示す

 9月4日(水)午前の非公開セッションに引き続き、午後からは、日米中韓4カ国のパネリストが参加する公開セッションがいよいよ始まりました。

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 まず主催者挨拶に登壇した言論NPO代表の工藤泰志は、「今、世界では地政学的な対立と競争が広がり、その影響は北東アジア全域に及んでいる。そしてこの地域には、世界でも有数の危険なホットスポットが数多く存在している。朝鮮半島、台湾海峡 尖閣諸島、そして周辺の南シナ海でも衝突が続いている」と現状認識を示した上で、「こうした危険な状況にもかかわらず、この地域には偶発的な事故や紛争回避、そして、将来の安定を作り出すために関係国が集まる対話の場や合意されたルールも存在しない」と問題提起。

 さらに工藤は、「特に気になるのは、この地域の対立構造自体が、大きなリスクになり始めていることだ。米中と日中の大国間関係は依然不安定化で、双方の軍拡が続いている。北朝鮮とロシアも軍事協定を締結した。この北東アジアの状況を『新しい冷戦』とする見方も出始めている」と指摘。こうした中で開かれる、日米中韓4カ国の外交・安全保障の専門家、軍・政府出身者らが集う「アジア平和会議」の意義を強調しました。

 工藤は続いて、8月30日に公表した「北東アジアの平和を脅かす10のリスク2024」について改めて解説。朝鮮半島、米中対立、南シナ海、そして米大統領選の影響といった懸念材料が山積しているこの北東アジアで平和を実現するためには、「多くの人々が力を合わせない限り実現できない。そのためにどのような努力が今、必要なのか。まず、4カ国の専門家で議論をしたい」と"平和への覚悟"を示しながら開会を宣言しました。


大国による「力の支配」ではなく、国連憲章などの国際法に基づく「法の支配」。分断と対立ではなく協調の国際社会の実現を日本は目指していく

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 続いて、政府挨拶に村井英樹・内閣官房副長官が登壇しました。村井氏はその冒頭、国際情勢の現状認識として、ロシアのウクライナ侵略やイスラエル・パレスチナ情勢に触れながら「安定的な国際秩序が世界に拡大し、経済のグローバル化と相互依存が進み、各国が平和と繁栄を享受してきた冷戦後の一時代は、確実に過ぎ去った」と指摘。そして、「気候変動・エネルギー、デジタル・AIなどの新たな地球規模課題の数々。いわゆるグローバル・サウスの台頭」などを踏まえながら、「昨今の国際関係は、『対立や競争の様相』と『協力の様相』とが、複雑に絡み合っている」との見方を示しました。

 村井氏はこうした状況にあって岸田政権は、ロシアによる暴挙が始まった直後から、「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」「欧州とインド太平洋の安全保障は不可分であり、ロシアの力による一方的な現状変更の試みを許せば、アジアを始め他の地域でも同様の行動を許容することになってしまう」という強い問題意識を、世界各地で繰り返し訴え、多くの国々に共有されるようになったと、これまでの日本政府の取り組みを説明。その上で、「我々は、この歴史の転換点にあって、これからの国際秩序を、何を『物差し』として築いていくのか。それは、大国による『力の支配』ではなく、国連憲章などの国際法に基づく『法の支配』でなくてはならない」「欧州と中東でまさに戦火が上がっている今だからこそ、分断と対立ではなく協調の国際社会の実現に向けて、インド太平洋地域で『法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序』を守り抜いていかなくてはならない」と日本政府の"平和への覚悟"を示しました。

 村井氏は、北東アジアの安全保障上の脅威としては、北朝鮮の核・ミサイル開発や露朝の露朝軍事協力の進展の動きを提示。その上で「北東アジアにおいて、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を実現するために、いま、我々は何をすべきか」と問題提起しつつ、「例え立場や価値観を異にする相手があったとしても、対話を通じて意思疎通と信頼醸成を図り、共に平和を追求できる余地を確保していくことだ」と訴えました。

 さらに、「もちろん、真の対話は容易なものではない。現下の極めて厳しく複雑な安全保障環境において、それは、抑止力の裏付けがあって初めて可能になるものだ」とした村井氏は、岸田政権が約三年間にわたって推進してきた防衛力の抜本的強化や経済安全保障における多面的な取り組みの数々について説明。同時に、米国や韓国、インド、豪州、フィリピンなどインド太平洋地域に関わる各国との関係強化にも戦略的に取り組んできたと振り返りながら、「このような重層的な協力関係は、今後、北東アジアを取り巻く状況が変わり続ける中でも、国際秩序の根幹を揺るがすような深刻な事態を防ぎ、『法の支配』の下で多様な国家が共存共栄していくために、不可欠なものだ」と語りました。

 もっとも村井氏は、こうした同盟国・同志国のみならず中国との外交展開の重要性も強調。「今後も、『戦略的互恵関係』の包括的推進と『建設的かつ安定的な日中関係』の構築に向けて、あらゆるレベルで意思疎通を続けていく」としました。

 最後に村井氏は、「地域の平和のための対話は、もちろん、政府の間だけで完結するものではない」とし、今回の「第5回アジア平和会議」での議論が、北東アジア地域、ひいては世界の平和と繁栄のための一歩となることに期待を寄せて挨拶を結びました。