日中両国最大の民間対話「第20回東京-北京フォーラム」(主催:言論NPO、中国国際伝播集団、後援:日本国外務省、中華人民共和国国務院新聞弁公室、一般社団法人 日本経済団体連合)が12月3日、東京都港区芝公園のプリンスホテル(東京プリンスホテル、4日以降はザ・プリンス パークタワー東京)で開幕しました。夕刻には歓迎晩餐会が盛大に開かれ、両国のパネリストらフォーラム関係者100人余が一堂に集まって旧交を温めました。
東京での6年ぶりの開催に、中国から50人のパネリストが来日
満20年の節目を迎えた今回は12月4、5日の日程で政治・外交、経済、安全保障、デジタル、メディア、青年対話など計八つの分科会が開催されます。コロナ禍でもオンライン会議で実施し、昨年は4年ぶりに北京での対面開催にこぎつけました。事前の報道では、NHKで「20年間継続しているのは特筆すべきだ」(3日放送『みみより!解説』)と評価されるなど期待値は高いものがあります。
第14回(2018年)以来、6年ぶりの来日となった中国側からは約100人が参加予定で、楼継偉・財政部元部長(中国人民政治協商会議第13期全国委員会委員外事委員会主任)や易綱・中国人民銀行前総裁(同第14期全国委員会委員経済委員会副主任)ら重鎮も、3日までに東京入りしました。この日夕方には旅の疲れも見せずに日本側参加者と合流し、分科会ごとに分かれて最終打ち合わせに臨みました。世界の困難な課題に対する日中の協力のあり方など各々の問題意識を提案し、本番に向けた議論の叩き台とするためです。
日中が直面する困難を乗り越えて、未来への責任を果たすための対話に
続いて両国の主要参加者が出席した晩餐会では、主催者を代表して言論NPO代表の工藤泰志と、中国国際伝播集団副総裁兼総編集長の高岸明氏が冒頭の挨拶に立ちました。
最初に工藤が「一度も中断せずに節目の20回目までたどり着いた。今や日中間においてかけがえのない『対話』に育ったのは皆さんの多くの協力があったからだ。中国の友人はまさに同志だ。日中が直面する困難を乗り越えて、未来への責任を果たすための対話を実践したい」と明日からの対話の成功を呼び掛けました。
高岸明氏は「6年ぶりの東京での対面開催を嬉しく思う。そのために豪華な陣容を中国から連れてきた。中日関係の深化のために良い知恵を出していただきたい」と謝意を表明しました。
日中両国民の理解と信頼の構築のために、両国民の変化を分析し、実りある対話に
続いて日本側主賓で、言論NPO名誉顧問に就任した岸田文雄前首相が登壇し、「過去に数度、『東京-北京フォーラム』に参加し、皆さんが真剣に本音で意見を交わす様子を見た。こうした対話が両国の信頼構築につながるのだと実感した。20回にわたって素晴らしい対話を中断させなかったことに敬意と感謝を申し上げたい」と述べました。その上で昨年11月の習近平国家主席との首脳会談を振り返りながら「戦略的互恵関係を包括的に推進し、建設的かつ安定的な日中関係の構築を目指すという方向性を確認した。あらゆるレベルで対話による意思疎通が進展し、先月の石破茂首相と習近平主席もその方向性を改めて確認した」と語りました。同時に、「悪化」傾向にあるとの分析結果が出た「第20回日中共同世論調査」に言及して「さまざまな問題が指摘されているが、一つ間違いなく言えるのは、両国民の理解と信頼の構築が必要ということだ。変化の要因を分析し、実りある『対話』を期待している」と呼び掛けました。
平和で安定した両国関係を構築に向けて、率直な「対話」を続けることが重要
中国側からは莫高義・国務院新聞弁公室主任が登壇し、20年の節目を迎えたことについて「紆余曲折もあったが、中日関係を前進させようとする両国関係者の尽力のたまものによるものだ。平和的共存・友好を構築しようという共通認識を育んだ努力があったからだ」と振り返りました。その上で、「次なる10年」に向けて「Win-Winの関係を目指して、さまざまな面でサポートし合い、技術協力をして平和で安定した両国関係を構築するために、率直な『対話』を続けて知恵を出し合おう」と述べました。
次の10年に向けた一歩に
その後、乾杯の発声に立った本フォーラム日本側実行委員長の武藤敏郎・元日銀副総裁(2020東京五輪・パラリンピック組織委員会事務総長)は「次の10年に向けて日中関係が大いに発展し、貢献することを祈念したい」と挨拶。同じく登壇した中国側の杜占元・中国国際伝播集団総裁が「志を同じくする者は、山海を隔てても遠くはない」という中国故事を引いて「『志を一致している』ことが、このフォーラムの成功に結びつけている。歩み寄りをしながら行動し、次の10年へ導くことができた」と語り、分科会やパネルディスカッションにおける英知の結集に期待感を表明しました。
歓談の後、中締めの挨拶に登壇した本フォーラム日本側副実行委員長の宮本雄二・元中国大使は、「明日からの議論を必ずや成功させよう」と居並ぶ両国のパネリストに呼びかけながら晩餐会を締めくくりました。
本フォーラムに先立って2日に発表された日中共同世論調査では、中国側で現在の日中関係を「悪い」(「どちらかといえば」含む)と考える人は前年比34.8ポイント増の76.0%と大幅に増加して過去3番目に高い結果になりました。日本の印象を「良くない」とした人も24.8ポイント増の87.7%と過去2番目を記録。そして、この20年間の調査で一度も6割台が崩れなかった、日中関係を「重要」と思う中国国民が、今回初めて約2割にまで落ち込みました。
中国側の調査期間中にトランプ前米大統領の「復帰」を決めたことの影響やSNSの発達も否めませんが、深刻な調査結果について、日本側は「これまで経験したことがない亀裂が国民意識に見え始めている」(言論NPO代表・工藤)と分析しています。ただ、日中両国政府が互いの違いを乗り越えて戦略的互恵関係の包括的推進を再度合意するなど関係改善を模索する中、日中両国民の認識ギャップを埋めていくために何ができるのか、長年続けてきた本フォーラムの開催意義はこの一点にあると言っても過言ではありません。
明日4日からは、「多国間協力に基づく世界秩序と平和の修復に向けた日中協力」を全体テーマとして、世界やアジアの将来を見据えた日中協力の具体的な姿について対話を開始します。その様子は言論NPOのウェブサイトでも随時発信していきますので、活発な議論の行方にご注目ください。