「第20回東京-北京フォーラム」の8つの分科会の一つ、経済分科会は12月4日午後、「多国間主義に基づく経済秩序と日中経済協力の修復」と題して、中国側から5人、日本側から7人のパネリストが参加しました。モデレーターは中国国際経済交流センターの張燕生主席研究員と、元日銀副総裁の山口廣秀・日興リサーチセンター理事長が務めました。日中の各2人から問題提起をしてもらい、議論を開始することを確認しました。
中国経済の回復に向け、外資の誘致・海外投資が必要だが、中国政府の政策に問題ある一方、日中両国がWin-Winの環境整備を図ることも必要
日本側からはまず経済産業大臣を務めた齋藤健衆院議員が、自身の経験を踏まえて率直な意見を述べたいと断った上で「中国は米国に次いで世界第2位の経済規模を誇るが、足元では成長に先行きを不安視する声が出ている。経済の回復に向けて外資の誘致や海外からの投資を呼び込むことが重要になってくるが、2023年の世界から中国への対外直接投資は前年比で8割も減少している」と指摘。続けて中国でビジネスをする日系企業のアンケートに触れて「シチク(7-9月期)はヨンロク(4-6月期)と比べて小幅な悪化傾向がうかがえる」として、中国政府が講じる政策が影響している可能性があるとの見解を示しました。具体的には、今年5月に欧州委員会のマルグレーテ・ベステアー上級副委員長とのオンライン会談で、持続可能なサプライチェーンの構築に向けた意見交換をした際に聞いた話として「中国が大規模な国内市場へ海外投資の誘致を行ってテクノロジーを習得し、国内の供給業者に巨額補助金を与えると同時に、外国企業に対して段階的に国内市場を閉鎖している。さらに過剰に生産して低価格で世界に輸出している」と語りました。
その上で、投資減少の要因として「単に景気循環の問題だけではなく、構造的な課題があって、外国企業が中国に対して少なからぬ不信感を抱くようになったことが背景にあるのではないか」と指摘。加えて「中国の治安悪化に伴う安全安心の問題や反スパイ法の不透明な運用、重要データの越境規制といったものについても、投資を計画する外資企業、在中外資企業は不安を募らせている」と述べ、中国政府の政策に問題があるとの認識を表明しました。
加えて、欧米やASEAN諸国と議論をした経過を踏まえて「中国による過剰供給、過当競争の問題もある。EV電気自動車はここ数年、欧州とアジア向けの輸出が急増し、輸出価格は下落している。とりわけタイでは中国企業が現地生産を本格化したことで過剰生産に拍車が掛かった。リチウムイオン電池や太陽光パネル、鉄鋼の輸出も急増し、輸出価格は下落した。米国やカナダ、EUが中国への対抗措置として水際措置をとるなど憂慮している」と懸念を示しました。さらに経済安全保障に関連して、レアアースに関する輸出管理を「武器化」する問題も指摘しました。
日本側2人目の問題提起者として、前アジア開発銀行総裁の中尾武彦氏が「世界は交易によって成長してきた。物と技術の交流、人的交流を通じて交易は発展してきたわけだが、基礎が弱くなると発展が遅れたり、激しい対立に陥る可能性がある」などと持論を展開しました。その上で「今の中国は発展途上国ではなく、非常に大きな生産大国・市場、消費者市場であり、大変大きな軍事大国、技術大国になっており、中国の動きは世界中に影響を及ぼす。経済力や金融力が強いので、他国に予想外の影響を与えてしまう」と指摘し、産業・貿易、安全保障分野などで日中両国がWin-Winの環境整備を図る必要性を強調しました。
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