「第20回 東京―北京フォーラム」は12月4日から、2日間にわたって東京で6年ぶりとなる対面で行われ、政治外交、世界の平和構築と国際協調、経済と安全保障、そして、デジタル社会、メディア、若者対話の議論に日中両国を代表する有識者約100氏が集まり、率直かつ踏み込んだ対話を行った。
私たちが「多国間主義に伴う世界秩序と平和の修復」を全体テーマに選んだのは、今年で20回目を迎えたこの対話を、日中両国がアジアや世界の未来に向けた協力に一歩踏み出す歴史的な舞台にしたい、との強い思いからである。
世界は対立を深め、本来、協力が必要な局面で世界が力を合わせられない事態が続いている。気候変動をはじめとする危機が複合化し、貧困の削減、開発問題が重くなり、国際法と国連憲章は試練に晒され、戦争が長期化している。こうした世界を修復できるのか、そのための日中協力は可能なのか。私たちがこの会場に集まったのは、こうした歴史的な課題に真剣に向き合うためである。
フォーラム直前に公表した日中の世論調査では克服すべき新しい課題も明らかになっている。世界は協力すべきとの強い共有した意識を持ちながら、日中両国民の認識にこれまで以上の亀裂が広がっている。
これらにどう取り組むのか、私たちが確認したのは次の2点である。
まず、協力して世界の未来に向き合うためには、感情的な対立を乗り越える必要がある。そのためも日本と中国は課題解決の意志を持つ輿論の喚起のために、力を合わせる必要がある。
次に、この対話がこれまでの20年で作り上げた膨大な財産を踏まえながら、世界の未来に責任を果たす対話に脱皮させることである。
私たちが、公開の場で次の10年に向けた調印を行ったのは、その決意を多くの人と共有するためである。
この使命のため、私たちは以下の合意をまとめた。
- 第一は、私たちの決意である。私たちは間もなく新しい年を迎える。2025年は第二次世界大戦が終わり、その深い反省から世界の戦争を防止し、世界が力を合わせて平和と繁栄を実現するために国連が創設されて80周年となる。歴史の逆行を許すべきではなく、国連システムの機能や多国間主義に基づく世界は守らなくてはならない。それこそが、私たちの未来に向けた決意、だということである。
- 第二は、私たちが協力して目指す世界経済とは、あくまでも自由で開放的な経済だということである。自国第一主義と保護主義が世界で高まっているが、ルールに基づいた開かれた世界経済しか、持続可能な未来は描けない。他国への依存が強まりすぎることは自国経済の安全の障害になることは理解するが、経済の分断やブロック経済を加速させることは避けるべきである。日中経済はあくまでも協力発展を目指すべきであり、そのためにも相互信頼に基づいてビジネス環境を改善するとともに、企業活動を制約する規制の透明性と予見可能性を高めることが協力の前提である。
- 第三に、北東アジアは、紛争回避と安全に向けた努力を一層、強化する局面にある。この地域に必要なのは対立ではなく、安全の維持と協力のための努力であり、この地域の信頼醸成の仕組みである。この地域の危機管理の仕組みをより有効なものにするため、日中の防衛関係者の頻繁な定期協議は急務である。
- 第四に、今回、改めで考えるべきことは、世論の環境がインターネット主導に変わる中でも相互理解の決定的な要因が国民の交流にある、ということである。政府間が合意した戦略的互恵関係は、国民の理解と信頼があってこそ実現するものであり、今回の世論調査で見られた国民感情の悪化と意識の変化を修復する作業は優先すべき課題である。両国は世界の未来に向けた協力を考える上でも、まずあらゆる対話の拡大と国民間の交流の促進にこれまで以上に本気で取り組むべきである。青年交流の強化が喫緊の課題であることは論を俟たない。
過去20年間、日中関係が困難の中で、「東京―北京フォーラム」は一度も中断せずに発展し、次の10年という新しいステージに入ろうとしている。これは、ひとえに、志を共にする多くのみなさんの力によるものである。
私たちは、これらの合意と決意を踏まえ、次の10年も一貫として対話を継続し、世界やアジアの平和や課題に全力で取り組む決意である。
言論NPO
中国国際伝播集団