「東京-北京フォーラム」は30年に向けた新たなスタート地点に―「東京-北京フォーラム」20周年記念レセプション報告

2024年12月06日

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 12月3日から3日間にわたって開催されてきた「第20回東京-北京フォーラム」の全てのプログラムが終了した12月5日夜、20年の節目を迎えた「東京-北京フォーラム」の記念レセプションが開催されました。

 会場には、日中両国のパネリストの他、本フォーラムにご支援いただいている企業の皆様、言論NPOの関係者等、約150名が参加し盛大に行われました。

 今回のレセプションの司会は、言論NPO副理事の岩淵美智子が務めました。


次の10年、歴史を変えるぐらいの大きな動きにしたい

 まず、今回のレセプションの主催者を代表して日本側から、言論NPO代表の工藤泰志が登壇しました。

 工藤は、世界が協力すべき時に分断と対立が生まれていると指摘し、この状況を乗り越えるために中国と課題解決に向けた議論を次の10年も行うこと、日本が国際協調の旗を世界のどの国よりも高く掲げることこそ重要だと語り、歴史を変えるぐらいの大きな動きに、このフォーラムを進化させたいとの意気込みを表明しました。そして、そうした活動を支えてくれている仲間でもあるパネリスト、支援企業等を紹介し、謝意を示しました。


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 続く中国側の主催者である呉江浩・中国駐日本国特命全権大使は、今回の世論調査結果では、中日関係に問題があることが明らかになっているものの、フォーラムで突っ込んだ議論が行われ、コンセンサスを得ることができたことは、中日関係の未来に向けて大きな成果だったと評価しました。続けて、長期的に中日関係を安定し、発展させるため、またより合理的で公正な国際秩序や、運命共同体の構築に向けて互いに貢献していくためにも、多くの人たちが参加できるような対話にしていきたいと語りました。

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 続いて、来賓あいさつとして4名の方が登壇しました。
 まず、過去20回のフォーラムのうち、6回の参加経験がある石破茂首相から、このフォーラムに寄せられた祝辞が、外務省アジア大洋州局参事官の門脇仁一氏によって代読されました。


「東京-北京フォーラム」の次の10年に向けた発展と進化に期待

 その中で石破首相は、「率直な議論を積み重ねることによって、日中両国の相互理解の増進につなげていくこと」が重要であり、「東京-北京フォーラム」が長年にわたり重要な役割を担ってきたことに敬意を表しました。

 その上で、自身が11月にペルーでの習近平国家主席との会談で、日中両国が「戦略的互恵関係」を包括的に推進すること、「建設的かつ安定的な日中関係」を構築する方向性を確認すると同時に、「両国間の課題と懸案を減らし、協力と連携を増やしていくこと」を確認したことを紹介。そのためにも「東京-北京フォーラム」のような直接の対話が日中関係の発展に資するとの期待を示すと同時に、自身も中国首脳との対話を重ねていくとの決意を語りました。

 最後に、日中両国はアジアや世界においても、大きな責任と役割を有しているとの認識を示し、今後、「東京-北京フォーラム」で、二国間関係にとどまらず、国際社会における日中両国の在り方と役割を考えていくという方向性に賛意を示しました。その上で、次の10年に向けたフォーラムの発展と進化に期待を寄せて、挨拶を締めくくりました。

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10年続ければ偉大なり、20年続ければ恐るべし、30年にして歴史になる

 次に登壇した立憲民主党代表の野田佳彦氏は、今年の世論調査結果を引き合いに、両国は互いの国のことを好ましく思っていない傾向が強いが、だからこそ対話を続けていくことに重要な意義があると強調。政府間外交はもちろん、「東京-北京フォーラム」のような民間外交も大事だが、政党間交流も必要だとの見方を示し、今後、政党間交流の充実も実現させたいとの意気込みを語りました。

 さらに野田氏は会場にいる参加者を見回しながら、釈迦に説法だと前置きした上で「10年続ければ偉大なり、20年続ければ恐るべし、30年にして歴史になる」との中国の格言を紹介し、「東京-北京フォーラム」は既に偉大で恐るべし、の領域に達し、次は歴史になる存在になってほしい、との期待を示し挨拶に変えました。

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30回目の「東京-北京フォーラム」に向けた目標とは

 続いて、このフォーラムの生みの親でもある元国務院新聞弁公室主任の趙啓正氏からのビデオメッセージが紹介されました。その中で趙啓正氏は、この20年間、世界情勢の大きな変化や、中日関係がどんなに厳しい状況下でも、投げ出さずにこのフォーラムを継続してきたと振り返りました。そして、2008年に締結された「『戦略的互恵関係』の包括的推進に関する日中共同声明」に示された平和共存、世代友好、互恵協力、共同発展という目標こそ、30回目の「東京-北京フォーラム」に向けての目標ではないかと指摘。中日両国の人々の友好を推し進め、アジアと世界の平和を後押しするために、このフォーラムが努力を続けていくと信じていると語り、「次の10年」に向けた期待を示しました。

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 最後に登壇した、元中国駐日本国特命全権大使の程永華氏は、今回のフォーラムの議論でも中日双方の意見が一致していないことがあったものの、対話とコミュニケーションを通じて理解を増進することは必要であり、政府間外交の関係改善に向けて、民間が土台作りをすることがこのフォーラムの役割の一つだと語りました。加えて、困難な中でも今回のフォーラムで合意が得られたことを振り返り、中日関係の中に表れている改善の兆しをしっかりと掴み、このフォーラムの場を使ってより強固なものにすると同時に、もっと大きな流れにしていきたいと語りました。

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 その後、第7回のフォーラムから、11年にわたり実行委員長を務めた明石康・「東京-北京フォーラム」名誉委員長の故郷・秋田の日本酒、小玉醸造「大平山」の鏡開きが、明石氏の「よいしょ、よいしょ、よいしょ」の掛け声とともに、日中両国のパネリスト30名により行われました。奇しくもレセプション当日の12月5日は、日本酒や焼酎、泡盛といった日本の「伝統的酒造り」がユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録されると決まった日であり、二重の喜びとなりました。

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 鏡開きに続けて、「東京-北京フォーラム」実行委員長の武藤敏郎氏が、高らかに乾杯の発声を行い、レセプションが始まりました。

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「次の10年」の新たなる夢の実現に向けて

 しばしの歓談の後、「東京-北京フォーラム」の次の10年に向けて、中国国際伝播集団の杜占元氏、言論NPO代表の工藤が決意を語りました。

 まず、登壇した杜占元氏は、50年前の歴史的な国交正常化を引き合いに、中日友好を推進するためには初心を忘れず、不撓不屈の気持ちを堅持する決意が必要だと強調しました。このフォーラムも、二国間関係に起伏があり、さらに世界情勢の変化やコロナの発生などがありながらも、絶えることなく継続して開催することで、規模と影響力が拡大したことを振り返り、継続することの重要性を指摘しました。そして、次の10年に向けて、リレーのバトンを繋ぐように、若い世代も巻き込みながら、両国民のさらなる理解促進のために、新しい内容、新しい対話の形も取り入れる等、次の10年に向けた提案を行い、来年の北京での開催に向けた意気込みを語りました。

 続けて登壇した工藤は、次の10年は、単に10年続けるのではなくて、日中両国が互いに戦略的な意思を持ち、両国の各界の代表者が、1年に1回ではなく、年に数回、定期的な協議を行うことが「私の夢」だと強調。その夢の実現に向けて居並ぶ参加者に、引き続きの協力を求めひと時の歓談となりました。

 歓談の後、最後に挨拶に立ったのは、2007年から18年にわたり、中国側の運営責任者として参加してきた高岸明氏(中国外文局総編集長)です。

 まず高岸明氏は、このレセプションをもって、「東京-北京フォーラム」は新たなスタート地点に立つと表明。その上で、中日両国の戦略的互恵関係を推進し、アジアの繁栄とのためにも、日本側主催者である言論NPOを始め、居並ぶパネリストや関係者に、引き続きの協力を求め、記念レセプションは幕を閉じました。

 「東京-北京フォーラム」の次の10年に向けた情報は、言論NPOのホームページで随時お知らせしていきます。

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