多国間協力の精神からガバナンスのフレームのあり方に至るまで多岐に渡る議論が展開 ― 特別分科会(2) 報告

2024年12月07日

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 今回のフォーラムでは、特別分科会をもう一つ設けて「分断下における多国間協力の修復と日中の責任」についても議論を行いました。その前半の議論では、現行の戦後秩序が不安定化し、世界の分断と保護主義(自国主義)の傾向が強まる中で、日中のパネリストは世界の秩序をどのように見ているのか、また、どのような秩序を目指そうとしているのかを率直に話し合いました。日本側司会は工藤泰志(言論NPO代表)が、中国側司会は孫明氏(現代中国・世界研究所院副院長)が務めました。


トランプ政権発足後の「米国対その他世界」という分断にどう備えるか

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 まず日本側から最初の問題提起を行ったのは、河合正弘氏(元アジア開発銀行研究所長、東京大学名誉教授)です。河合氏はその冒頭、現在の世界は西側、東側、そしてグローバルサウスという三つのブロックに分裂しつつあるとした上で、自由貿易や気候変動といった分野では国際協力が後退していると指摘。これをどう修復するかが大きな課題であると切り出しました。

 こうした変化の背景として三つの分断があるとの見方を示した河合氏はまず、経済的な台頭が顕著となった新興国が先進国中心に設計されたグローバルガバナンスに異を唱え始めたことを指摘。2008年の世界の世界金融危機に際しては、先進国だけでは解決できず、中国をはじめとする途上国・新興国の力に負うことが多く、そうしたこともG20首脳会議会合発足にもつながったと振り返りました。

 そして、貿易では、途上国の不満を背景にドーハラウンドが頓挫し、先進国同士の合意では課題を解決できなくなったことを端緒としてWTOが機能不全に陥り、気候変動では途上国では「共通だが差異ある責任」を求める中でパリ協定が結ばれたものの、先進国からの資金支援に途上国は不満を抱いているなど対立はあるなどし、これが分断の第一であるとしました。

 分断の第二として米中対立など大国間競争を挙げた河合氏は、トランプ政権の復活によって関税競争は熾烈を極めることになると懸念しつつ、それは米中間のデカップリングのみならず、気候変動をはじめとする国際協力全般を後退させかねないと警鐘を鳴らしました。

 分断の第三として、ロシアによるウクライナ侵攻を挙げ、西側諸国がロシアに経済制裁を科す一方で、それに中国やグローバルサウスが加わらないことで分断の構図が生じているとしました。

 こうしたことを踏まえて最後に河合氏は、「先進国対途上国」「米国対中国」「西側対ロシア」だけでなく、トランプ政権発足後は「米国対その他世界」になりかねないと予測。これにどう対応するかは大きな課題であるとしました。

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