「第20回東京-北京フォーラム」の分科会の一つで、日中両国を代表するメディア人が参加するメディア分科会が4日午後開催されました。「複合化する世界危機下でのメディアの役割を考える」をテーマに、日本側6人・中国側5人の計11人が問題提起し、2時間余りにわたって率直な議論を繰り広げました。
冒頭、日本側司会の川島真・東京大学大学院総合文化研究科教授(中曽根世界平和研究所研究本部長)が「前半は『日中共同世論調査』で国民感情が改善しない問題を考えると共に、国民感情の改善に何が必要かを考えていく、後半は世界が分断に向かい、多くの危機に世界が力を合わせていない状況をどう考えるのか。またそれをどのような立ち位置で報道していくのか、といった点を中心に議論していきたい」と述べ、議論がスタートしました。なお、中国側司会は、金莹・中国社会科学院日本研究所研究員が務めました。
小さな出来事を掘り起こし、新たなトレンドやポジティブな情報を伝えることで、メディアは安定した両国民の感情を育むような役割を果たすことになる
まず、中国日報社の紀濤・編集委員が問題提起を行いました。まず、SNSなど新たな情報伝達手段が出現する中、フェイクニュースが問題化するとともに、インターネットを通じて、各国の対立感情がさまざまな形で国境を越えて展開される懸念があると指摘。メディアが包括的で正しい報道をすれば、世論環境が整い、読者が理性的な見方ができるようになり、両国民間の相互理解が深まり、互いの感情を育むこと等にも繋がるとしてメディアが果たす重要な役割を強調。「複雑な国際情勢や国民の相互理解に関して、メディアとしてどのような役割を果たせるか」と各パネリストに問いかけました。
その上で「中国国民の9割が日本に行ったことがないため、メディアを介して相手国の情報を得ていることから、私たちが果たすべき役割は大きい」ことをさらに強調。「何か突発的な事象が起きた時に、センセーショナルに人々の感情を煽るようなことはせずに、理性的な認識に努めるような報道を心掛けるべきだし、ヘイトにつながるような問題は避けるべきだ」と述べました。さらにネット社会においては「過激な内容は拡散しやすいが、国家間の前向きな交流も報じるべきだ。友好を深めるという観点で、私たちはマルチメディアによる報道に注力している。例えば、天津と神戸の友好的な民間交流にもスポットを当てたこともある」と振り返りながら、メディアの役割は「小さな出来事を掘り起こし、新たなトレンドやポジティブな情報を伝えるべきだ」と指摘。そうした報道を心掛けることで、ユーザーの訪問数を意味する「トラフィックを獲得することにつながり、安定した両国民の感情を育むような役割を果たすことができる」と分析し、日本のメディアに対しても「最大の途上国・中国に最も近い先進国・日本のメディアがより客観的な視点から中国の発展を報じてほしい。それこそが地域の平和安定にも役立つ」と要望しました。
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