今回は、白石隆氏をゲストスピーカーにお迎えしお話を伺いました。
白石氏は、世界の「中心」にあるアメリカの「帝国」という言葉には、国民国家に介入し得る力という意味と、1920年代に生まれた新しいタイプの消費文化や中産階級の世界的な広がりとともに進む「世界のアメリカ化」という2つの意味があるとしました。そして、冷戦体制崩壊後、「地域」秩序の寄せ集めとして世界秩序を考えるべき時代となる中で、「半周辺」地域である東アジアついては、
(1)アメリカ抜きには考えられない地域である。
(2)従来の中国中心の「東アジア」の概念がマーケットの拡大とともに拡張している。
(3)中産階級の台頭によりマーケットを通して「アジア人」という共通性が形成されつつある。
といった特徴があることを指摘しました。ここでは、ちょうど欧州が、第二次大戦後50年をかけてヨーロッパ人という共通性を形成したことが欧州統合やユーロの実現の土台となったように、アジアでも、こうしたジェネリックなアジア人やそれに基づく新たなアイデンティティーの形成が、それを活用した何らかの政治的プロジェクトが可能な状況を生み出しつつあるとの見解が示されました。
加えて、白石氏は、世界のアメリカ化の流れは今後50年~100年単位で続くとする一方で、「周辺」地域においては、国民に正義を保証せず、かつ国民を統括できない「破綻国家」が世界的な問題として深刻化していることを指摘しました。また、アメリカの力の限界が認識されるところにアラブなどの他民族と共存せざるを得ない状況が見えてくるとともに、中産階級化の進展に伴って、イスラムに破綻国家が与えてくれないものを求め、そのレンズで世界を見る人々が増大していくことを、「神の死んでいない地域」の動きとして示唆しました。
その後、白石氏とメンバーとの間で活発な議論が行われました。
(※議事録は後日アップされます。)
今回の出席者は以下の方々でした。(敬称略)
白石隆(京都大学教授)
福川伸次(電通顧問)
入山映(笹川平和財団理事長)
イェスパー・コール(メリルリンチ日本証券チーフエコノミスト)
周牧之(東京経済大学准教授)
谷口智彦(日経BP社編集委員室主任編集委員)
夏川和也(日立製作所特別顧問)
松田学(言論NPO理事)
白石氏は、世界の「中心」にあるアメリカの「帝国」という言葉には、国民国家に介入し得る力という意味と、1920年代に生まれた新しいタイプの消費文化や中産階級の世界的な広がりとともに進む「世界のアメリカ化」という2つの意味があるとしました。そして...