今回は、戦略形成の方法論の第一ステップ「世界の中長期的潮流の洞察」の作業の中で、日本に最も近くかつ最も先鋭な問題を孕んでいる朝鮮半島の行方を考えておくことが必要との認識の下に、「米朝関係はどうなるか」をテーマとして、ゲストスピーカーのケネス・キノネス氏からお話を伺いました。
長年米国務省で北朝鮮を担当し、米朝「枠組み合意」交渉を進めた当事者であるキノネス氏の話から、米朝関係が依然として全く予断を許さない実態が浮き彫りになりました。
イラクで犠牲者が日に日に増え支持率低下の趨勢に当面したブッシュ政権は、対北朝鮮政策をやや軟化させました。北朝鮮に「懲罰」を与えるべきだとするレトリックを引っ込め、「柔軟で段階的な」アプローチが必要だと言い始めたのです。
しかしこれも向こう半年から8カ月程度をにらんだ政策に過ぎず、恒久的なものとは考えられません。この間北朝鮮が核実験に踏み切りでもした場合、あるいはブッシュ大統領が再選のため必要だと認めたような場合、米国が北朝鮮に対して限定的武力行使に踏み切る可能性は依然として残っています。
この間に「6者協議」を進め「1対5」の構図を固め、北朝鮮に「超えてはならない一線」があることを団結して伝える必要があります。6者協議には、少なくとも現状を固定させ、それ以上の悪化を食い止める意義があることを認めるべきでしょう。統一戦線を北朝鮮に対して組み、平壌がモスクワや北京に対し個別に話を持ちかけられないようすることに、6者協議の目的はあります。
北朝鮮は自国安全保障にお墨付きを欲しがっています。
実は今、北朝鮮には米陸軍関係者が入っており、その間に米国が北朝鮮を叩くことはできません。(ハワイ・ホノルルにあるThe U.S. Army Central Identification Laboratory, Hawaii (CILHI)遺骨収集チームが10月27日まで北朝鮮で活動中。この間彼らは「人質」なので米軍は迂闊に手を出せない・編集部注)
これこそは、北朝鮮に対する安全の保障として機能しているのです。
そしてキノネス氏は、予想される「最悪シナリオ」を次のように描いてみせました。
向こう半年ないし8カ月の外交が失敗し、北朝鮮が核実験を強行、軍事オプションを探る米国と、韓国が一挙に緊張し、他方日本は核化すべきか否か、深刻な選択を迫られる。さらに中国とロシアが米国と日本に対し対立する図式が成立、北東アジアは混沌とした状況に陥ってしまう......というものです。
(※議事録は後日アップされます。)
今回の出席者は以下の方々でした。(敬称略)
ケネス・キノネス(元米国務省北朝鮮担当官)
安斎隆(アイワイバンク銀行社長)
入山映(笹川平和財団理事長)
加藤隆俊(東京三菱銀行顧問)
谷口智彦(日経BP社編集委員室主任編集委員)
林芳正(参議院議員)
松田学(言論NPO理事)
今回は、戦略形成の方法論の第一ステップ「世界の中長期的潮流の洞察」の作業の中で、日本に最も近くかつ最も先鋭な問題を孕んでいる朝鮮半島の行方を考えておくことが必要との認識の下に、「米朝関係はどうなるか」をテーマとして、ゲストスピーカーのケネス・キノネス氏からお話を伺いました。