「2002.11.5開催 アジア戦略会議」議事録 page1

2002年12月17日

021105_01.jpg2002年10月21日
於 笹川平和財団会議室


会議出席者(敬称略)

秋山昌廣(元防衛次官・現財団法人シップ・アンド・オーシャン財団会長)
河野克俊(防衛庁海上幕僚監部防衛課長)

福川伸次(電通顧問)
入山映(笹川平和財団理事長)
加藤隆俊(東京三菱銀行顧問)
国分良成(慶応義塾大学教授)
谷口智彦(日経ビジネス編集委員)
鶴岡公二(政策研究大学院大学教授)
深川由起子(青山学院大学准教授)
工藤泰志(言論NPO代表)
松田学(言論NPO理事)

福川 おはようございます。今日は日米関係を視野に入れながらアジアの安全保障問題について検討をしたいと思っております。この分野で大変ご造詣の深い秋山元防衛次官と、防衛庁海上幕僚監部防衛課長の河野さんにお越しをいただいておりますので、実務のお立場からいろいろな防衛問題についてお話を聞かせていただければと思っております。

では、秋山先生、よろしくお願いします。

秋山 今日いただいたテーマが「アジア全体の安全保障問題~日米関係も踏まえて~」ですが、時間の制約もありますので、地域問題について、現時点でどのような安全保障の視点で考えているかをお話ししたいと思います。地域問題はたくさんあるわけですが、朝鮮半島問題と台湾問題と中国問題、その3つに絞ってお話をしたいと思います。

この「アジア全体の安全保障問題~日米関係も踏まえて~」というテーマから、私の頭にすぐ浮かぶのは4つの大きな課題です。1つは日米安保そのものの問題、もう1つは当然我が国の内政問題、そして今申し上げた地域問題です。それから、グローバルな横断的な問題、この4つが私の頭に浮かんできます。当然のことながらいずれも相互に関連し合っているわけです。

1つ目の日米安保の問題で言いますと、例の90年代の日米安保再確認あるいは再定義の作業があります。その延長線上で、今、日米間、同盟国間の安全保障の戦略対話がないということを私は主張しております。それから、ロール・アンド・ミッションについての議論も実は余り進んでいません。また、これはじたばた騒いでもしかたがないのですが、インテリジェンスの分野での同盟関係が極めて脆弱であるということもあります。さらに言えば、ネイビーとネイビーはやっていますけれども、もう少し広い意味でアメリカ以外の国も含めてのいろいろな部隊間の演習、すなわち共同作業が極めてプアだといった問題もあります。

2番目の国内問題には、有事法制、9条、あるいは周辺事態安定確保法の本当の意味での機能の発揮など、そして、PKO、沖縄、テロ特別支援法、と非常にさまざまな問題があります。

いわゆるグローバルな問題としてこのテーマに関係があるのは、第1にミサイル防衛の問題ですが、それ以上にテロとの戦いの問題も重要かもしれません。実は私が今非常に関心を強めています海洋問題というのも、ご質問があればぜひ答えたいと思います。こうした問題意識の中で、今日は朝鮮半島、台湾、中国の3点に絞って、地域問題をお話ししたいと思っております。

ただ、現在の情勢を考えまして、横断的な問題の中のテロとの戦いについて、本日のテーマ外にはなりますが、最初に、私の見解なり現状分析なりを一言申し上げておきたいと思います。

最近アメリカに参りまして、何人かの安全保障関係者あるいはプロフェッサーとも議論をしてきましたが、その中で問題になったことの1つが、日本の支援継続問題です。アメリカの、アフガニスタンにおけるアルカイダなどテロとの戦いは、今後かなり長く続くはずなので、日本は今のテロ特別支援法で行っている援助を継続していくべきだというのが私の意見です。実はアメリカでは、日本のこういう軍事的な支援について一般には余り知られておりません。どうしても、イギリスなど、アメリカと一緒に戦っている国が協力国として前面に出てきます。しかし、アメリカでもペンタゴンや政府、議会など、日本のことをよく知っている人たちの間では、今回の日本の支援は評価されていると思います。

ただ残念なのは、どうも日本側のPRを含めて、日本がこういう支援をやっているということについてのアウトプットなり情報提供がほとんどされていないのです。先般、小泉首相がハーバード大学を訪問したとき、確か日本の新聞では、かなり評判が良かったかのように書かれていましたが、現地へ行って聞きましたらとんでもない。ちょうどその直前にパキスタンのムシャラフ大統領が来て、ハーバード大学で講演をやった。これには外にあふれるほど学生が並んで、テレビの中継まで入れたのです。ところが、翌日ボストンに来た小泉首相の目的は、新聞にもちょっと書いてありましたが、アメフトか野球かを見に行くことでした。それで、ついでにちょっとハーバードに寄って、パーティーで3分ぐらい話をして、さっさと観戦に行ってしまった。学生はほとんど知らなかったということです。30分でいいですから総理大臣にスピーチをさせて、その中でこういう支援をやっていると言えばいいのですが、日本側の努力も相当お粗末だと感じた次第です。

実は日本としては精いっぱいのロジスティック・サポートなのです。たしか40%ぐらいの油の補給をやっていますし、給油艦が1隻出ているのが写真にも出ますけれども、それ以上に大変なのは、5隻の艦船が油をピストン輸送し給油する作業に従事していることなのです。これは、実は日本の今の海上自衛隊の余力から言うと目いっぱいの援助といえるものです。そういう意味で、日本側の情報発信が極めてプアだと、今度アメリカに行って感じました。

イラク攻撃の話は、私は国連の査察に関する新たな決議はとれると思うのですが、おもしろいことにアメリカでもワシントンとそれ以外というのは相当温度差があります。ボストンで何人かのプロフェッサーと話をしましたが、今のブッシュ政権に非常に批判的です。国連のレゾリューションもとれないだろうというような言い方すらするプロフェッサーがいる中で、もうワシントンはほぼ完全に一致して、近いうちにとれて、イラクが拒否すれば自動的に戦争という雰囲気ですね。

もしアメリカが手順を踏んで国連の議決を経て、そして最終的にイラク攻撃になる場合、アメリカの同盟国としての日本は、口先だけのサポートなり支持なりではなくて、やはり実態を伴うサポートをすべきなのです。多少そこは問題があるのかもしれませんが、ぜひイラクへの攻撃がテロに対する戦いの継続であるという証拠――裁判上の証拠ではありませんが、政治、外交的に同盟国が理解できる説明をしてほしいということを私は主張しております。つまり、テロ支援法に基づいて何らかの形でロジスティックな支援を継続すべきではないかと私は考えております。

ただ、私が思うに、テロとの戦いで注目しなければいけないのがアジア地域におけるムスリムのテロとの戦いであります。アメリカも非常に注意しながらやっているとは思いますが、アメリカが関与することについては非常に難しい状況がアジアにはあります。ただ、このムスリムのテロというのは、主としてインドネシア、それからフィリピンが中心でありますが、例えばマラッカ海峡あたりの海上テロに出てくれば、これは大変な影響が日本にもあるわけです。

実は2週間ぐらい前にフランスに行きましたときに、フランスのタンカーがテロに攻撃されたことについて大変おもしろい話を聞きました。フランスの国土交通省に海上テロ統括官という、すべて統括している、軍までマネージしている局長クラスの人がいて、その人に聞いたのですが、当然ああいう事態を予想してフランスはあらゆる手をこれまで尽くしてきた、しかし、やられてしまったと言うのです。これに比べて日本は、アジアのテロ活動について自分の問題として考えていないのではないかということを私は大変懸念しています。

アメリカは、サイバー・テロにしても、それからアメリカにテロリストが入ってテロ行為を行うことに対しても、今大変なエネルギーを使って防衛活動をしております。アメリカに行かれた方はお気づきかと思いますが、ほとんど人権蹂躙と言ってもよいくらいです。税関のところで捕まってしまいますから。私は運よく何もなかったのですが、徹底的な身体検査はやられます。

フランスのタンカーに対するテロ行為を思い浮かべてみても、私は、日本は完全にテロリストのテロの対象になっていると思います。そういう意味で、どうも日本のテロに対する対応が非常に弱いのではないかと心配するのです。

冒頭から横道から入ってしまい申し訳ありません。さて、本題の地域問題についての3つの問題で、まず朝鮮半島のことであります。実は私は7月に自分としては初めて本を出版したのですが、その中で私は、結論的に言うと、ほとんど日本としてはすべての問題に準備が整ったので、朝鮮半島の問題はそんなに深刻な問題ではない。むしろ重大な問題は、大分先の話になると思うが、南北の統一に向けた動きの中で、在韓米軍がどういうふうになるのか、あるいは米韓安保同盟がどういうふうになるのか、ということだと書いたのです。

拉致問題について、私も全く水面下の動きを知りませんでしたし、結果についても正直言って非常に驚きを持っていろいろ考えさせられました。ただ、ほぼ準備が整ったと本の中で私が書いた趣旨は、1つは、日・米・韓の安全保障の戦略的な対話が非常に進んでいたということです。私は、日本において、同盟国を含めてでもこれだけ戦略的対話が――これはもちろん戦術的対話も入っていると思いますが、進んだことは極めてまれだと思っております。非常に大きな役割を果たしたのは今度受章されたペリー元国防長官です。その戦略的対話が事実上の友好国といいますか、同盟関係にある国の間ではっきりと継続されているということと、それにプラス・アルファ、朝鮮半島で戦争も含めて何らかの危機が発生した場合の日本としての準備・心構えができたと私は感じていたわけです。それは日米安保の再確認作業を通じて、日米の防衛協力指針、ガイドラインの見直しが終わり、周辺事態安定確保法が成立し、また、いろいろありましたが、船舶検査法もできました。そういうプロセスを経て、もし朝鮮半島で危機が起これば、憲法の枠内ではありますが、日本として現時点でできることは枠組みとしてできるし、多分有事になった場合に周辺事態安定確保法の枠組みを発動するところまで覚悟はできているのではないか。私は、そういう意味で朝鮮半島問題はほぼ終わったと、そのとき書いたわけです。

拉致問題がこういう形で劇的に進展するということは私も想像していませんでしたが、私はこの問題について2つ言いたいことがあります。1つは、日本が拉致問題に対しては、国家としてまことに情けない国家だったということです。安倍官房副長官のちゃんちゃらおかしい発言というのは私も非常に同感ですが、日本自体の戦後の安全保障に対する取り組みがやはりちゃんちゃらおかしかったと言いたいぐらいおかしかったわけですね。自国民も守れない、いわんや警察とか海上保安庁の治安活動も本格的にできない、海上自衛隊に至っては当初は全く関与すら懸念されるような社会情勢のもとでこの拉致問題は発生していたわけです。要するに国家自体がこの問題について全く対応するような格好になっていなかった、ということを私は言いたいわけです。

もう1つは、留守家族のこれまでの活動の大きな成果として、その反動もあるのでしょうか、確かに現在、連日連夜マスコミは留守家族あるいは一時帰国した方々の報道ばかりです。しかし、私は、小泉訪朝が実現した1つの非常に大きなポイントは、ブッシュ政権の打ち出した悪の枢軸(axis of evil)という強硬な方針の明示だと思います。evil発言というのは必ずしも日・米・韓3国の戦略対話から外れた話ではないですし、ペリー長官の調整過程から外れた話ではないのですが、かなりはっきりとした意図表明をした。あのアメリカのはっきりした態度が結果として小泉訪朝につながったと思うのです。

ですから、私は、この拉致問題の解決に当たって、アメリカの動きとかアメリカの力を無視したら、少なくとも私が当初非常に懸念していた事態と同様の事態が起こってくるのではないかと思っております。何を言いたいかというと、実はアメリカの強硬な姿勢を北朝鮮が感じ取って、いろいろなオプションの中から小泉訪朝につながっていったと思うのですが、今後もアメリカは、核開発の問題について明確な決着がつかない限り強硬な姿勢を変えず、北朝鮮の問題は解決しないということです。

しかし、要するに核開発の問題が解決すれば、アメリカはそんなに拉致問題について重視しない可能性があると思います。もともと、日本は拉致問題を抱えている状況で北朝鮮との関係が改善されないまま周りが全部セットされるという事態を、こういう展開になる前、私は非常に恐れておりましたが、今後もなおそういう状況はあり得るということを心配しなくてはいけないと思います。これだけ大きな社会問題になりましたから、何とか拉致問題を、核開発の問題とあわせて解決すべきだと思いますが、そういう状況も日本は考えて戦略を立てるべきだと私は思います。

アメリカから見れば、核問題に対して何で日本がそんなに平気でいられるのかという感じでしょう。もし北朝鮮が核開発に成功して核搭載ミサイルを発射できるとすれば、対象はどこかと考えてみるだけで恐ろしい状況です。アメリカか。私はアメリカに届くミサイルを北朝鮮は一生懸命開発してきたと思いますが、まだできてはいません。ですから、アメリカには撃てない。中国、それは常識的にないと思いますね。韓国、同胞ですし、あんな短い距離に核ミサイルを撃ち込むことは至難のわざです。とすると、日本の在日米軍が格好の対象なんですね。そういう意味で、北朝鮮がもし核武装を終えると、ミサイルの開発状況も踏まえれば、必ずそのオプションとしては日本が出てくるわけです。こういったことは日本で2、3日は大いに報道されていましたが、その後余り報道されていない。大きな課題として報道されておらず、事実だけが報道されているという現実を私は非常に心配するのです。

私は、朝鮮問題は、将来の在韓米軍のあり方、将来の米国の関与の仕方、そして日米安保あるいは在日米軍、それから在日米軍基地、こういう問題に非常に大きなつながりを持っていると思っております。南北の統一の方向があって在韓米軍が縮小ないし最終的に撤退となったときに、日米安保を例えば強化するとか、在日米軍の増強を図るとか、そんな議論は、日本国民は全く受け入れられないのではないでしょうか。ただ、私はむしろそういう議論が必要だという気がしていますし、中国も朝鮮半島の問題については並々ならぬエネルギーを注いでアメリカの影響を排除していくと思います。そういう議論は今のところほとんどなされていないのが私は非常に心配だと言いたいのです。

次に、台湾問題であります。中国問題については、専門家の国分先生の前で多少びびっておりますので、質問の中で議論をさせていただければと思い、ここでは台湾問題についてお話しさせていただきたいと思います。台湾問題につきましては、実は私は非常に率直に言ってペシミスティックな立場に立っている人間であります。どういう意味かといいますと、台湾と大陸中国の間で武力紛争が起こる可能性がかなり高いのではないかと思うからです。

なぜそう思っているかというと、今、台湾も大陸も、それからアメリカも、そして多分日本も、大多数の台湾問題に対する判断は、ステータスクオだ、つまり現状維持だ、ということでしょう。これが最大公約数ではないかと言われていますし、私も現状はそうだろうと思っています。

ただ、よく考えてみますと、ステータスクオということは、多分中国の政策のまずさもあって――私は非常にまずいと思っているのですが、台湾人の台湾アイデンティティは今後強まりこそすれ、弱まることはないのではないか。そこになおかつ、李登輝の台湾アイデンティティを鼓舞する個人的な政治的な力というのは無視できません。私も台湾に何度か行きましたが、何人か会った政治家、オピニオン・リーダーあるいは学者の中で最も民族的な意識の強いのは李登輝だと思いました。よく国民党の党首になり、総統になったと。元学者ですが、その苦労話を聞くだけでも相当の政治家だと思います。

ということは、当然のことながら大陸中国も実は気づいている。台湾にたくさん大陸からビジティング・スカラーとかフェローとか学者が来ていますが、私の見るところ、その半分以上はインテリジェンスでしょう。したがって、そうした台湾の状況はかなり北京にも正確に入っているはずですが、台湾当局自体も北京との間にいろいろなパイプがあるということで、北京は相当正確に台湾の状況を把握していると思うんです。

しかし、北京もそう簡単に武力紛争を起こすとは考えておりません。大陸中国の現在の最大の課題はやはり右上がりの経済成長です。右上がりの経済成長なかりせば政権の維持もできないというぐらい国内問題をたくさん抱えていると思います。

アメリカの安全保障グループの人たちが判断をするに、今、中国の軍事増強も圧倒的に台湾向けになされているわけです。ミサイルにしろ、空軍力にしろ、海軍力にしろそうだと思います。それから、海軍力プラス・アルファ、つまり民間の船も含めて、総力を台湾の正面に向けているというのは事実でありまして、アメリカ側の評価ですと、2005年にほぼ中国は台湾海峡の制空権、制海権を確保できる水準に来るのではないかということです。私は、そうはいっても、オペレーションその他を含めると、その水準に達するのはまだまだ先だろうと思いますが、2005年以降は、中国は台湾と米国の圧倒的な兵力で惨敗をするというような状況ではなくなるという条件は整っていくと思います。

北京オリンピック後、中国には経済政策、社会政策など、たくさんの内政問題があるわけですが、もし政権が揺らぐような内政上の困難に直面した場合に、中国国民を団結させるための最大の武器が台湾問題だと思います。ご承知のように、中国は3つの条件を武力行使につけております。1つは台湾が独立をしたとき、1つは外国勢力が台湾の独立を扇動したとき、もうちょっと正確に言わなければいけないのですが、大体そういう趣旨です。それから、中国が文書で最近明確につけ加えた3つ目の条件、これはひどい条件だと思いますが、台湾がいつまでたっても一つの中国の交渉に応じないときというのがつけ加わったのです。ただ、最後の条件は実際には発動できないと思います。

実は、米国は台湾問題についてあいまい政策をとってきました。それはどういうことかというと、中国が台湾に対して武力を行使したときにアメリカは武力を使って台湾を守るということを公言しない。守るということも言わないし、守らない、武力は使わないということも言わない、そういうあいまい政策をとってきたわけです。アメリカ側の説明は、守ると言ってしまえば、台湾の独立派が元気になってしまって、本当に独立に向かっていずれ武力紛争になる。守らないと言うと、情報不足の中国人民解放軍がいい気になっていろいろちょっかいを出してくる。したがって、守るとも守らないとも言わないという政策を続けてきたわけであります。

しかし、ブッシュ政権になって、もし中国が武力を行使すれば、我々は台湾を守るためにあらゆる努力をする、あらゆる措置を講ずる、と言い出したわけです。軍事力を使う、軍事で防衛をするとはっきり言っているわけではないと思います。しかし、そういう質問をされれば断固台湾を守るという言い方をして、事実上、軍事力を使ってでも台湾を守るということを言い、一方で従来から、台湾の独立は認めない、一つの中国を支持するともブッシュ政権は言っているのです。

今回アメリカに行きまして、あいまい政策を放棄したのかといろいろな人に聞きましたら、放棄しているわけではない、あいまい政策というのはいろいろバリエーションがあって、今の政権はあいまい政策をスクイーズしただけだという言い方をしておりましたが、確かにそうかなという気はします。

しかし、他方で、アメリカと台湾の安全保障の交流、特に軍事交流は急速に進んでおります。そのこともアメリカで聞きました。クリントン政権までは軍事交流は一応禁止されていた、やるのは武器売却のときだけ、武器売却に絡む交渉とそのオペレーションに関する訓練、交渉だけが米台の軍事交流ではなかったのかと聞きましたら、それは今でも同じだという返事が返ってきました。いろいろ米台の安保対話は進んでいるが、みんなユニホームを脱いで背広を着てやっているんだと言っていましたね。実は米台の防衛交流、安保交流、軍事交流は急速に進んでいますし、さらに言えば、米・台・日――日本もこれに相当参加している、あるいは自衛隊のOBもかなり参加しているという状況が出て来ています。台湾の日本に対するモーションといいますか、期待といいますか、それは物すごいエネルギーです。アメリカで台湾の独立派を支持するグループが増えているのか、台湾のシンパが増えているのかという質問をいろいろなところでしましたところ、増えていない、ブッシュ政権は確かに台湾に近いが、アメリカ全体を見れば全然変わっていないという言い方をされて、私はああそうなのかと思いました。

むしろ変化という意味では日本の台湾への接近が最近非常に目立つと思います。これもまた大陸中国の政策のまずさだろうと思いますが、大陸中国に対する反発というのは今日本の間に非常に強まっていますので、反動的に台湾へのシンパシーも非常に高まっているということかと思います。私自身は別に親台湾でも親中国でもないのですが、余りにも日本と台湾の意見交換の場が少ないということで、台湾との関係を強化していかなければいけないと思っているところです。

ただ、台湾問題については、先ほど朝鮮半島問題で言ったような日本における十分な検討と、戦略的な追求と、もちろん日米対話もなされていない、何らかの枠組みもできていない、何らかの危機が起きたときの対応とか準備も全くできていないという意味では、朝鮮半島以上に深刻な問題だ、あるいは深刻な問題に必ずなると私は思っています。早急に日米間での戦略的な対話を本気でやる必要があるでしょう。

同時に、私は中国を台湾問題について敵に回すということは全く愚作だと思っております。それが朝鮮半島問題と違うところです。朝鮮半島問題は北朝鮮を敵にして日米韓がある意味で非常に団結をすることができたわけですが、台湾問題について中国を敵にするというのは全く愚作です。私の勝手な結論ですが、危機が起きたときの最大のキー・ファクターがそのときの日中関係の良し悪しだと思います。日中の本当の良い関係、別に私は友好関係などと言いたくないし、もっともっと中国と激論をしなくてはいけないと思っていますが、そういうことを通じて日本と中国がきちんとした国家と国家の関係になっているべきだ、そうすれば危機は乗り越えられるのではないかという気がしております。

福川 どうもありがとうございました。それでは、河野先生、つづいてよろしくお願いします。

河野 防衛庁海上幕僚監部の防衛課長をしております河野と申します。通常、私ども制服の者は、こういう部外にお招きいただくときは大体背広に着がえて来るのですが、きょう実は韓国軍のトップの合同参謀本部議長の李陸軍大将という方が横須賀にお越しになられまして、イージス艦の「きりしま」という船をごらんになるということで、私、これが終わりましたら横須賀へ直行しアテンドをする必要があり、きょうは制服で来させていただきました。

考えてみますと、10年ぐらい前、韓国軍と自衛隊が交流するというのははばかられたんですね。政治的にはあったとしても、軍同士というのは向こう側の国民感情もあって非常にはばかられた時期があって、我々としても非常に躊躇していたのです。ここにおられる秋山先生が事務次官のころ防衛交流を非常に進めて、その結果として韓国軍と日本の自衛隊、制服組同士の交流も今非常に深まっているという状況です。

韓国の合同参謀本部議長で陸軍大将がイージス艦を見たいといいますのは、イージス艦という非常にハイテクの船を、アメリカは日本にしかこれまでリリースしなかったわけですが、韓国にもリリースすることになり、韓国がこれを運用することになりました。したがって、日本に対してその運用の仕方等々についてアクセスしてきているというのが実情です。

実は台湾もこのイージス艦を非常に欲しいと言っているわけです。しかし、先ほど秋山先生からのお話にもありましたように、アメリカはまだリリースしないです。その理由として、一説に、要するに台湾にリリースするとそのまま大陸に行くかもしれないというのがあるのです。(笑)したがって、アメリカとしても、これも結構いい船ですが、キッド・クラスは渡しているのですが、イージスまではいっていないわけです。

韓国にもずっと渡しませんでしたが、ここに至って韓国にはリリースする。ただ、イージスもバージョン・アップをどんどんやっています。将来的なミサイル・ディフェンスに対応できるようなものから、全くそれには対応できないものまであるわけで、日本については最新のものをリリースしてくれている。これも日米の信頼関係だと思いますが、恐らく韓国はちょっと手前の古いバージョンのリリースだと思います。

本日は、アメリカの海軍戦略と海上自衛隊の今後の方向の2つについてお話しさせていただきたいと思いますが、その前に、戦後日本の教育界から軍隊の教育が一掃されましたので、一応基礎知識ということで、まず海軍についてご説明を申し上げたいと思います。

実は、海軍というのは国際的に特殊なんです。といいますのは、まず階級です。キャプテンという階級があるのですが、陸軍とか空軍とか海兵隊でキャプテンと言いますと、若手の大尉のことを言います。ところが、海軍についてのキャプテンというのは大佐です。ハイクラスの人のことを言うわけで、英語では呼称が違っています。例えば将官、海軍以外は全部ジェネラル、海軍についてはアドミラル、こういうぐあいです。アメリカ海軍が世界の海軍をリードしていますが、普通、軍のトップというのは参謀長です。アメリカで言えば陸軍参謀長、空軍参謀長、海兵隊司令官。アメリカ海軍のトップを何というか。参謀長はChief of Staffですが、アメリカ海軍のトップはChief of Naval Operations です。これを日本語に訳しますと海軍作戦部長という名称になります。Chief of Naval Operations ですから、略してCNOというわけです。民間の重役の方はCEOと言いますね。したがって、今アメリカ海軍が世界の主流の海軍になっているものですから、海軍の世界ではCNOがトップをあらわす。ですから、日本のCNOはだれかという話になるわけです。そういったように非常に特殊用語です。

例えば旧軍でも、陸軍は陸軍参謀総長がトップです。海軍の場合は、昔は海軍軍令部長がトップでした。ところが、陸軍が参謀長から参謀総長という名前に変えたものですから、何を偉そうにということで海軍も軍令部総長に変えてしまったんですね。そこから海軍も変になってしまったということで、そういう争いもあったということです。(笑)

したがって、どこの国でも、どちらかというと、その国の陸軍、空軍とのおつき合いよりも、ほかの国の海軍とのおつき合いの方が濃いというのが海軍の特性です。ですから、海上自衛隊はどこの軍隊だとよく言われますが、アメリカ海軍、イギリス海軍、あるいは韓国海軍との関係も、非常に強いです。では、陸・空との関係はどうだというと、悪くはないのですが、客観的に言って、性格的にそういう面が国際的にもあるのです。というのは、やっぱり海という舞台を共有しているという共通の基盤があるものですから、非常に相通ずるところがあるわけです。制服も似ているということもあります。

そこで、何を言いたいかというと、公海を舞台に海軍は動くものですから、この特性が国際性とか外交政策に寄与できるビークルという特性を与えているということです。いい意味では使いませんが、砲艦外交をやります。プレゼンスです。例えば北朝鮮とのぎりぎりの領海内のところに船を浮かべる。これはプレゼンスで、威圧することができるのです。そういった形で外交手段として使うことができて、もちろん友好関係の防衛交流としても使うことができるのです。これは陸軍ですとなかなかできないのですね。陸軍は公の領土がありませんから、そのまま陸軍を他国に放り込むのは最終手段になって、これはできない。空軍はといいますと、空軍は確かに公の空はあるのですが、悲しいかな、そこに止まることができませんので、空軍もそういうことには余り使えないですね。そういった面で海軍は非常に柔軟性を持っている軍種なのです。

冷戦中は世界の三大ファミリーとよく言われました。1つはキリスト教社会、1つは共産主義、コミュニストの社会、3つ目がネービーだというわけです。

それでは、本題に入らせていただきます。まず、アメリカの海軍戦略がどのように変わってきたかということについて、骨太のところで申し上げさせていただくと、冷戦中はマリタイム・ストラテジーという、レーガン政権下でつくられたストラテジーでした。これは海軍というよりも、アメリカの場合は海軍省の隷下に海軍と海兵隊があるものですから、海軍と海兵隊を合わせた戦略になります。簡単に言えば、大海原でソ連海軍をたたきつぶす、こういう希有壮大なるマリタイム・ストラテジーでした。レーガン政権下に600 隻艦隊構想がありました。これは到底達成できず、今現在アメリカ海軍の隻数は300 あるかないかです。それを600 隻つくる、空母機動部隊は今12ですが、当時は15つくるというような大軍拡メッセージを発しました。これは結果としてソ連がついていけなくなって、冷戦をアメリカの勝利に導いたということになったのですが、その根底に、海上作戦におけるマリタイム・ストラテジーがあったわけです。

冷戦が終わり、マリタイム・ストラテジーはもう古いな、これは使えぬなという話になって、海軍というより米軍自体のコンセプトがどう変わったかというと、2MRCコンセプトに変わったわけです。2つのMajor Regional Conflictsに対応する。具体的に言えば中東、いわゆるイラク、イラン、それと朝鮮半島という、この2つのメジャーな地域紛争の両方に対応する軍隊を建設するというのが、冷戦後の米軍のコンセプトです。今ブッシュ政権が悪の枢軸と言っています。テロと大量破壊兵器が結びつく、これはもう容赦ならないということで、ガーンとステートメントで悪の枢軸と言葉に出して言ってしまったのですが、冷戦終了後、もともとイラン、イラク、朝鮮半島はアメリカにとって脅威の焦点であったとも言えるわけです。

ただ、米軍の人間自身も言っているのですが、この2MRCコンセプトも、とてもとてもこんな軍隊は今の予算の厳しい中ではつくれないということで、2MRCに対応できる水準に達したことは今まで一度もないということです。そこで、ブッシュ政権になって変わってきて、1.5 MRC戦略になりました。ですから、1.5 MRCは、新しい戦略というよりも、むしろ米軍の今の力を冷静に評価した結果こういうことしか対応できないということで出てきたものです。2MRCコンセプトは2つのMRC両方で勝つという戦略でしたが、1.5 というのは、例えば朝鮮半島で勝つ、その間、中東では持ちこたえる、負けない。やっつけることはできないけれども、とにかくここは持ちこたえる。1つは勝って、1つは持ちこたえる、という戦略です。アメリカの現状は大体この水準と見ていただいて間違いないと思います。

冷戦中はマリタイム・ストラテジー、いわゆる海上決戦のストラテジーだったのですが、1.5 MRC戦略なるコンセプトを受けまして、米海軍、海兵隊はフロム・ザ・シー、海から、それをちょっとバージョン・アップしましたフォワード・フロム・ザ・シー、前へ、そして海からという戦略をつくったわけです。これはどういうことかというと、冷戦中、海軍はとにかくソ連海軍と、太平洋の真ん中で横綱同士の相撲だという話だったのですが、もうそういうことはない。アメリカ海軍にまともに対抗しようなどという海軍はもういない。今後はどうなるかというと、冷戦後は朝鮮半島、イラク、イランで地域紛争が起こる。これに対して海軍、海兵隊がいかに貢献するかということになると、大海原の海上決戦ではなくて、いかに海軍の力を陸上にプロジェクションするかが主体になるわけです。

したがって、フロム・ザ・シーです。海から兵力を投入する。湾岸戦争、今回の対テロ戦争は、まさにこのフロム・ザ・シーのコンセプトなわけです。いわゆる空母機動部隊の艦載機やトマホーク等が海から陸上に対して徹底的に破壊をする。次の段階で海兵隊を上陸させる。そして、第1発目の橋頭堡を築くというコンセプトです。したがって、海軍の作戦地域も深い海からリトラル、どちらかというと浅い海域、沿岸海域を活動の場とする方向になっているということです。

もう1つ大事なことは、アメリカ海軍は、それを受けて、コアリションでこの地域紛争をやるのだということです。そういう意味からも、前方展開はアメリカにとってますます重要になってくるわけです。地域紛争に即座に対応するということですから、常に前方に出ておいた方がいいわけです。ですから、横須賀の価値は変わらない。

特に、空母キティ・ホークがあと4、5年で終わりになって、この後を考えると原子力空母しかないわけです。原子力空母を横須賀にいかに配備するかというのは、今後、日米関係で調整しなくてはいけない最大の問題ですが、恐らくアメリカは横須賀に空母を展開しないという選択肢はとらないと思います。したがって、その選択肢としては原子力空母しかないというのが実態ですので、これをいかに日米間で調整するかというのが今後出てくる問題です。

ちなみに、アメリカは空母を12隻持っています。これはアメリカのパワーのシンボルですが、海外に置いておるのは横須賀だけです。ほかの空母は全部本国です。横須賀だけ1隻、アメリカのなけなしの空母を展開させている。そういう意味からも横須賀は非常に重要なところとなっているということです。

次に、海上自衛隊はアメリカのこうした動きに対してどう対応していこうと考えているかということについてお話しいたしますが、これは、防衛庁というよりも、海上自衛隊、海上幕僚監部の考え方ということで認識していただきたいと思います。

日米安保体制があります。これは絶対的なものです。ただ、これは基本的に我が国を防衛するための枠組みです。では、日本単独有事が今後起こるかとなると、客観的に言って可能性が減ってきているのは事実でしょう。先ほど申しましたように、地域紛争にアメリカはコアリションで対応するのだという戦略になってきており、日本は日米関係を最終的な砦として維持しなければいけない、なおかつ、日本は世界の国々から助けてもらって生きている国ですから、やはり今後は、コアリションにいかに参加していくかというのが日本の生きていく道だということです。しかもこれは今後の主流になる。したがって、日米安保で我が国を防衛するうちは、当然このことはしっかりとやっていくわけですが、これだけではもうだめだという時代に入ってしまっている。今まで海上自衛隊は、陸も空もそうですが、日本防衛でどうやる、ということしか考えていなかった。しかし、世界にいかに貢献していくかというステージに今移ってきているので、この分野でどうするかということを考えなくてはいけないのです。

したがって、海上自衛隊も、日米関係ももちろんありますが、それだけでなくコアリション、多国間の枠組みの中にいかに入っていくかということを今追求しております。ただ、ここはご承知のとおり集団的自衛権という政治的な条件がありますので、現時点では政治の許される範囲内で多国間の枠組みに一生懸命入ろうという努力をしている状態です。ことし4月に初めて海上自衛隊は多国間訓練を主催しました。それは潜水艦を助ける訓練です。潜水艦が事故を起こした。それを助ける。これは集団的自衛権とは関係ありません。そういった訓練を積み重ねることによってコミュニケーションもとれるし、マインドの共通化も図れるという意味があるので、政治的に許される範囲でコアリションの中に今入っていっているという状況です。

したがって、今回の対テロ戦争についても、政治で対テロ特措法を成立させ、海上自衛隊が今行っているわけですが、そういった観点から、我々としては非常に意味があるものだと思っています。

イージス艦のことが昨年来非常に話題になっているのですが、これは政治が決定していることですから我々が口を出す話ではないのです。しかし、正確な知識として持っておいていただきたいと思います。このイージス艦については2つのことが政治の方で言われていて、イージスはだめだという話になっているのですが、実は大変誤解がありますので、ここで正確に申し上げさせていただきます。

1つは、イージス艦が出ればデータがアメリカにそのまま即送られて、アメリカはそのデータに対して攻撃をする、いわゆるデータ・リンクできるという話があるわけですが、これはまさに誤解でありまして、確かにデータ・リンクをつないでイージス艦は送れます。送れますが、今の技術水準では、このデータは誤差を含んでいますので、これでもってウエポンを使うという精度のものではありません。したがって、もしアメリカが攻撃をするのであっても、アメリカはもう1回それを解析する必要があるということです。これはハード的にそうです。したがって、自動的に行った、それでアメリカは撃つという、集団的自衛権に抵触すると言われていることは性能上あり得ないのです。この点を誤解されているということが、まず申し上げたい1点です。

もう1つは、イージス艦が出れば自動発射する。ボンボンボンボン飛んでいくのだという話があって、その装備は下ろしていけという話があったのですが、これも誤解です。(笑)確かに究極の手段として完全オートというモードがあるのですが、それは、指揮官がキーを何重にも外さないとそのモードにならないようになっております。いや、その指揮官が信用できないということになると、我が海上自衛隊の指揮官はクレージーという前提に立ちますから、これは自衛隊派遣そのものの前提が崩れるということになってしまいます。国家機関としての指揮官はクレージーではないという前提に立って議論していただきたい。これが2つめです。

これら2点がイージス艦に関して非常に誤解を与えていますので、念のため申し上げました。以上で終わらせていただきます。

福川 ありがとうございました。

大変貴重なお話をお二方から拝聴することができました。大変ありがとうございました。 それでは、皆様からご意見、ご質問などございましたらどうぞ。

鶴岡 今うかがったお話の中で、大きな柱で2つの問題に絞って考えてみると、1つは、日本自身が安全保障の問題をどう考えるか、何を具体的な課題として、どういう優先順位と、どういった資源配分によってそういう問題に対処していくかという国内議論の整理の問題です。

もう1つは中国だと思います。朝鮮半島の問題も取り上げられましたが、長期的に見た場合、中国の方がより我が国の安全保障に影響してくる問題だと思いますので、その点を取り上げたいと思うのです。

特に先ほど秋山さんからお話のあった台湾を理由として中国を敵としてはならないということは私も全く同感ですが、他方において、日米安保の背景の中で台湾問題についての日米協議を深めていった場合に、最後のところで1つ論理的な矛盾といいますか、課題がでてくるのではないかと思うのです。朝鮮半島の場合は、北朝鮮は当初から敵だということをのみ込んだ上で、例えばKEDOの枠組みをつくる議論をしてきた。場合によってはKEDOの正当化される理由として、KEDOが軽水炉を実現する前に北朝鮮の体制が崩壊することも一つの公然の秘密のような認識があったと思うのです。ところが、中国となると、それはとても議論の中に入ってくる選択肢ではないわけで、中国とどう関係を維持しながら、かつ中国にとって死活的に重要であり、もう何度となく世界に対して宣明しているところの台湾の問題について平和的な着地点を見出すように日米の間で議論を進めていくのか、これは非常に難しいだろうと思うのです。

先ほど第一点めの問題として申し上げた国内体制の問題もここに大きく絡んでくると思うのですが、今の状況では、おそらくアメリカがある意味で独占的にアジア全体の安全保障の問題、なかんずく台湾の問題について戦略を練り、情報を収集し、かつ具体的な物理的手段を持って体制を維持しているといえる。その中で日本が何を持ち込むことが可能なのか。日本の付加価値は何なのか。それから、それを可能としていくために、中国との関係をどのように進めていくかということも念頭に置きながら、日本として何をこれからするべきなのかということが非常に重要な課題なのではないかと思います。

大変恐縮ですけれども、問題の整理と提起だけということで、以上申し上げました。

〔 「第5回 言論NPO アジア戦略会議」議事録 page2 に続く 〕

会議出席者(敬称略)

秋山昌廣(元防衛次官・現財団法人シップ・アンド・オーシャン財団会長)
河野克俊(防衛庁海上幕僚監部防衛課長

福川伸次(電通顧問)
入山映(笹川平和財団理事長)
加藤隆俊(東京三菱銀行顧問)
国分良成(慶応義塾大学教授)
谷口智彦(日経ビジネス編集委員)
鶴岡公二(政策研究大学院大学教授)
深川由起子(青山学院大学准教授)
工藤泰志(言論NPO代表)
松田学(言論NPO理事)