学生たちがみた「第2回 東京-北京フォーラム」

2006年9月21日


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第2部: 「政府間ではない新しい外交のかたち」

工藤 日本ではこのフォーラムのような形は初めて。アメリカは政府間協議で色々なチャネルがあります。しかし、日中間は全く無いんです。政府間が対立したとき、支えるしくみが無かったわけです。今の課題に対して答えをだそうとか、そういった努力といった真っ向からの議論が今回ありました。新しい外交ですね。中国では、公共外交といってます。しかし公共外交とは政府間の下にある民間交流で、それとは違うでしょう。俺たちがつくるというかね。

渡辺 第3の外交?

工藤 そう、全く経験したことのないもの。そういうものをつくったわけです。そういうのに何か感じなかったですか?

山下 そういう政治的な意思決定過程の多元化って、いまの潮流だと思います。それはその多元化の先端にいるのが言論NPOであるという認識です。そのことがいい影響を与えるということは明らかです。しかし、その反面、問題だと思うのは、僕たちはこうやって草の根的に一人一人が動いていますよね。小さい動きが、大きい動きに取り込まれるというか。
 
工藤 政治に利用される・・・。

山下 そういうことです。確かに政治に取り込まれるとりこまれることで、日中関係がよくなればそれでいいのですが、それがNPOという存在にとっていいことなのかは別問題です。言論NPOは政策に影響を与えたいという方針なのかもしれないですが、NPOとしては政策への影響力と同時に独立性も維持しなければいけないわけで、政治におけるジレンマというものを垣間見た気がします。

工藤 いい所をついていますね。

鈴木 外交の中で中国は特に、政府の一部署でできることはすごく限られていていると思います。政治の動きに左右されてしまう部分が大きい。そこで、言論NPOのような政府ではない機関が議論の場をつくるというのはすごく重要なことだと思います。そういう議論の場というのは今までにもあったと思うんですが、それは何かを作り出そうというわけではなかったですし、または罵倒し合うような場でしかなかったように思います。何かをつくりだそうとした点、政府ではないという点、この2つのポイントが揃ったということ、これが今回のフォーラムの大きな意義だったと思います。

工藤 これは重要なテーマです。今まで外務省では、新21世紀委員会などがありましたが、ほとんど何もできていないですね。つまり、政府が民間を作ってはいけないんです。民間がやるというのは自発性であり、誰かから強要されたわけではないんですね。かつ、同時に今回のフォーラムで達成感を生んだのは、小さなことでも何かしなければという自発性だけではなく、当事者意識があったから。国を越えるという大きなことではなく、小さなことでも何かしなければいけなかったんです。自発性と当事者意識、それが想像以上にも大きくなったのが今回のフォーラムでした。それをどう考えればいいのかということです。たぶんプラスでしょうが、これは何なんだろうか。たぶんこれは山下くんの研究テーマにした方がいいのんだろうけど(笑)。

 外交であれ何であれ、地域社会であれ、民間外交という一つの形になったという点で、どうですか?

小堤 (議事録をとりながら)・・・え?なんですか?(笑)

工藤 今の話をどう思うかということだよ(笑)

小堤 政府間という形でもなく、「日中友好~。ほわーん。」という形でもなく、全くぜんぜん違うものって。僕の中でもそういうイメージがありましたけど・・・あんまり僕も整理できていないですね。

工藤 渡辺くんは?

渡辺 今回のフォーラムに研究会の人を誘ってつれてきましたが、つくろうとしているものをもっともっと感じられる人が増えたらいいなとは思います。今確かにネットでの公開があり万人がアクセス可能ですが、果たしてそれで本当に十分なのかは疑問を感じることがあります。運営側から感じられることを多くの人と共有したいと思い、そのためにはどうやったらいいのか・・・。

工藤 ちょっとしたことなんだけれども、ドラマができるってことの共有ね。確かに発信力を強めることと、みんなが参加できるプラットフォームをつくることが重要ですね。小堤くんはどうですか?(是枝を小堤と間違える)あ(笑)

渡辺 (爆笑)

是枝 必ずごっちゃになりますね。

小堤 隣にいちゃいけないね。

工藤 是枝君さっき言ったっけ?

是枝 工藤さんがこれまでインパクトを与えたとおっしゃいましたが、僕が気になっていたのはフォーラムで議論をして、いい議論ができて、それがどういう風に実際の行動に結びつくのかということです。僕は環境エネルギー分科会にいて、そこで準備会をつくるという話を聞くことができました。山下さんの、政治の世界に利用されるという話がありましたが、そういう政治の世界の方の話も含めて、自発的な個人が参加することで、従来無かったような議論の場だったと思います。一人一人の考えが集まって、単に議論するだけの民間ではなく、かつ政府の論理だけで動くようなものでない新たな議論の場というのが、一人一人の考え個人が集まることでできるんだなと。そして、それが実行につながっていくなという感じがして、それはすごく感動しました。

工藤 今の話は僕が実際に悩んでいる話ですよ。本当の議論を伝えたい、というのが、このフォーラムの狙いで、秘密では意味が無い。こんな議論があったと知らせることが、今回は完全に成功しました。やってみたということで、共鳴が生まれました。それが表に広がって、動きが始まっているのです。

 もう一つの話は、民間外交ということですね。たぶん、僕たちは既にNGOに近く、国家を超えているような状況。ただ、政治がそれをただ利用するだけでは困りもので、こちら側としては、あくまで本音で話し、全部表に伝えるというプラットフォームをつくりあげようとしている。政府間協議が無い状態で、何かきっかけをつくれないかということで、つくりあげた。

 今度、日中共同メディアをつくるという話がありますが、これは歴史的実験なんです。そこで中立性・独立性を担保するには、第三者を入れなければ無理です。第三者を入れてこの議論の中立性・独立性を証明しなければならない。これは山下君のいった問題意識と同じでね。この可能性をどう深めながら、利用されることなく、問題をクリアしていくか、というモデルを言論NPOは問われ始めているのです。

 日中間にはいろんな誤解があるけど、ホントの議論をやれば、認識の構造的ギャップが埋まると思っています。今の状況を乗り越えようという気持ちがあれば、可能だと。そのドラマが始まったということですね。不安定・危険性はあるけれど、始める人がいないと、何も始まらなかっただけです。どう成功させるかはもっと色んな人が議論に参加して、共有して、発信して、まさに言論としての議論を作り上げるのが課題。だけど、その扉を開いたのは皆さんですよ。意外に簡単に開いたと思わない(笑)?大変だっただけかな(笑)?

一同 開きましたね(笑)


⇒第3話を読む


コーディネーター

工藤泰志  言論NPO代表

学生

鈴木麻衣子 東京大学公共政策大学院 小堤音彦  慶應義塾大学総合政策学部
是枝宏幸  東京大学文学部英語英米文学科
渡辺佑樹  慶應義塾大学総合政策学部
山下泰静  東京大学公共政策大学院

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