8月13日、都内ホテルにて、2010年度日中共同世論調査に関する記者会見が行われました。
記者会見には、日本側からは代表工藤のほか、高原明生氏 (東京大学大学院法学政治学研究科教授)、田中弥生氏(言論NPO理事、大学評価・学位授与機構准教授)、そして中国側からは孫尚武氏、(中国日報総編集補佐、新聞中心主任)、呉垠氏(零点研究コンサルタントグループ副総裁)が参加しました。
この共同世論調査は、日中両国の相互理解や相互認識の状況やその変化を継続的に把握することを目的として、2005年から日中共同で毎年行われているものであり、今回で6回目の実施となります。今回の記者会見では、この共同世論調査とあわせて行われた有識者調査(日本側)、学生調査(中国側)の結果も公表され、日中双方から詳細な説明がなされました。
まず、代表工藤は今回の調査結果に関して、「日本人の中国に対するイメージがなかなか改善していない一方で、中国国民の日本に対するイメージの改善が大変大きい」と述べ、相手国に対する印象において両国間で顕著な違いが見られることを指摘しました。また、これを経年比較で見ると、日本人の中国に対するマイナスイメージは07年の66.3%から08年の75.6%と拡大し、その後改善は進んでいるものの、現在はまだ07年時にまで回復していない状況が明らかになったと説明しました。その背景に関して、工藤は、「中国人は政府間関係が改善することは非常に重要だと考えており、それが改善することによって日本に対するイメージの改善につながっている。一方で、日本人はギョウザ事件に典型的に見られるように、今の中国を見て、生活感覚で中国を理解しようとしている」と説明し、お互いの印象の形成過程に変化が見られる点を指摘しました。
続いて、中国側から孫氏が調査結果についての補足説明を行ない、「中日関係の重要性を問う設問では、92.5%の一般の中国人、90.4%の学生が「重要」と回答するなど、今回の調査では中日関係に関するポジティブな結果が出ている」と述べ、特に注目に値すべきこととして、若い知識層の人たちが日本に対する好感度を上げている点を指摘しました。さらに、「日本について思い浮かべるもの」として経済や文化に関する要素を挙げる中国人が増えており、08年、09年と比較すると、これまで最も多かった「南京大虐殺」が3年ぶりに2番目になった点も第6回調査の特徴として指摘されました。
次に、同席した高原氏は、「今回は、日本人の間では日中関係についての不安感が目立つ結果となっている一方で、これとは対照的に、中国人の間では自信の高まりが見受けられ、同時に、より自分を客観視できるようになってきている」と述べ、両国民のお互いに関する認識に、これまでとは違う傾向が見て取れる点を指摘しました。その具体例として、高原氏は、「両国関係を妨げるもの」との問いについて、中国世論では中国国民のナショナリズムや反日行動を問題視する人の方が日本国民のナショナリズムや反中行動よりも多くなっており、この比率が昨年から見ると逆転している点などを挙げています。
その後、会場との質疑応答を経て、代表工藤より、この世論調査をベースに行われる第6回東京-北京フォーラムの開催概要の説明がなされました。
そして工藤は、「この世論調査は、両国民の相互理解の状況を把握し、それを一層深める目的で実施している。「日中関係の発展を妨げるもの」について、中国学生の半数以上が「中日両国民に信頼関係が無い」と回答したのはショックだったが、まさにそうした課題を解決するために、この対話はある。両国に本当の信頼を生み出せるよう、今回も本音の議論を行いたい」と述べ、8月30日、31日に開催される第6回東京-北京フォーラムへの意気込みを語りました。
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8月13日、都内ホテルにて、2010年度日中共同世論調査に関する記者会見が行われました。