分科会報告 : 【 中日の相互理解とメディアの役割 】

2007年8月29日

p_070829_15.jpg【報告者】
今井義典(日本放送協会解説主幹)
いまい・よしのり

1944年生まれ。68年日本放送協会(NHK)に入り、地方局、国際部などを経て、ワシントンおよびニューヨーク特派員。95年から3年間はヨーロッパ総局長。この間86年から朝の「ニュースワイド」、93年から「おはよう日本」のキャスターをそれぞれ2年間担当。その後国際放送局長、解説委員長を経て、現在は解説主幹。

【 中日の相互理解とメディアの役割 】

 分科会の司会を務めておりました、今井です。メディア分科会に参加された14人を代表して、感想という形で報告をさせて頂きます。まず初めに、こういう機会を与えて下さってどうもありがとうございます。

 討論で我々は、日中共同世論調査、有識者調査及び学生調査の結果を基にいくつかの重要項目を題材にして、議論を進めました。工藤さんがお話された主な調査を四つ、取り上げました。

 まず『この一年間の日中関係の変化』という調査では、「やや良くなった」と答えた人が日本では17%だったのに対し、中国では53.6%でした。こういった数値から、両国の道のりはまだ長いという印象を受けました。

 二つ目に『日中双方や日中関係の情報源』という調査では、日本と中国は互いに「自国のメディアを利用する」という回答が多かったです。

 三つ目に『自国の報道の客観性』の調査では、日本側での30%の人が「基本的に客観的な報道だろう」と答えたのを、中国側では60%の人が答えるという結果が出ました。これにはそれぞれの国に疑問点が出ました。

 四つ目に『日中両国の政治思想』の調査では、互いに相手国の事を「軍国主義」と評価した事に対してあとで議論になりました。

 メディアは、国のイメージを伝える重要な役割であります。イメージの回復においても、メディアの役割は欠かせません。

 前半の議論では、反日デモの話について中国側から日本のメディアは商業的になっているという指摘や双方における「誘導」という概念の違い、メディアの多様性、瀋陽領事館で起きた事件、二ヶ月前に起きた「ダンボール肉まん」の話など様々な話題を基に討論が行われました。政治が動けば、メディアが動きます。我々マスメディアは市民と人民のために伝えるべきであります。


 後半は、個別問題に入りました。食品の安全問題では、かつて2年間牛肉の輸入をストップした際の話を交えて、日本の消費者に対する安全性の追求を中国側に伝えました。国民の立場に立って、報道する重要さを話し合いました。

 また、軍国主義が日本に残っていると中国から指摘された部分については、60年前のイメージを国民から消し去るためには、塩をなするようなことはしないという話が出ました。

 そして、ジャーナリストのあり方では、ニュース原稿の交換や若手育成など様々な意見が双方で交わされました。好評だったのは、このフォーラムに参加した人でメールアドレスの交換をし、情報を交換し合うことです。


 最後に今回の分科会のまとめを述べさせて頂きます。今回の分科会では、作家村上春樹の「ノルウェーの森」における歴史や日本アルプスの名前の由来について討論するなど、幅の広い議論を浸透させておりました。これは、両国が互いに尊重し合い、目先の利益ではなく、長い目で両国の関係を築いてゆく姿勢であると思います。また、客観的な行動をとり、バランスを大事にして報道をすることの重要性を感じました。我々メディア人は、消費者に対し、「人をもって人を成す」という言葉どおり、使命を果たしていくべきであると思います。

 来年のフォーラムを心より期待しております。どうもありがとうございました。