歓迎レセプションの最中、代表工藤が中国の一線の有識者に突撃インタビューしました。
そこでの内容は・・・
中国側パネリスト 北京大学国際関係学院教授の朱鋒氏に話を聞きました。
代表工藤の質問は中国の世論調査の内容に基づくものであり、一つ目は「なぜ中国人は日本の政治思潮を軍国主義と見ているのか」です。
朱鋒氏は「二つの大きな理由があります。一つには、日本についての知識があまりにも乏しいこと、もう一つは中国国民の歴史と現実を一緒に考え、区別することができていないからです。例えば、靖国神社参拝が全ての国民を代表するものではないという理解が不足しています。」と答えました。
二つ目の質問は、「なぜ中国人の日本に対する意識はこの一年間で大きく改善したのか」というものでした。
それに対する答えとして、「最も大きな理由は、中国の人々が日本はやはり中国にとって最も重要な隣国であり、経済・貿易のパートナーとしてのみならず、政治のパートナーとしても重要性を増しつつあるからであると私は考えます。また、中国政府としては全ての国々と協力し合い、調和のとれた発展を遂げたいという明確な外交戦略を打ち出しているからという側面もあります。」
最後の質問として、「安倍晋三総理の外交姿勢を支持しますか」です。
これに対して朱鋒氏は、「半々です。信用できるのは、安倍晋三総理は中国人にとって付き合うことのできる政治家だと思うからです。同時に信用できないのは、安倍総理の保守的な考え方が中国人に受け入れられるものではないからです」と答えました。「安倍総理と町村外相という組み合わせについてはどうか」という質問に対しては、「私としては、安倍総理のこれまでの内政・外交政策と実質的な変化はないと思っています」と述べました。
続いて、中国外交学院院長の呉建民氏です。
代表工藤はまず、「安倍内閣の組閣が本日行われましたが、安倍総理のアジア外交を信頼していますか」と聞きました。それに対し、呉建民氏は「そもそもアジア外交を考えるには、アジアが台頭しつつあるという現実に基づいて決めなければいけないと思います。世界中の注目がアジアに集まっており、キッシンジャー博士も現在の世界の中心は大西洋から太平洋に移りつつある」と述べていました。
さらに呉建民氏は「町村さんの外相就任によって、中国と日本の関係がさらに発展し、東アジアの平和や安定が促進されることを期待しています」と答えました。また、工藤が「あなたはアジアという概念を大切に考えてますか、それとも太平洋などもっと大きな視野をお持ちですか」という質問に対しては、「現在、世界には大きな変化が見られつつあります。東アジアの台頭は大きな原因の一つです。しかも、そのプロセスにおいては我々が開かれた政策を取っております。東アジア通貨危機における東アジア13カ国のアメリカとの損害総額が昨年7900億米ドルに上昇しており、東アジアが発展する中でその成果が世界でシェアされたことになります」と述べました。さらに、「東アジアの発展は世界にとってプラスであり、中国とアメリカの関係も、日本とアメリカの関係も発展していることを嬉しく思います。従って、どのような方法であっても東アジアを発展させることが重要です」という考えを示しました。
最後に、清華大学国際問題研究所副所長の劉江永氏に話を聞きました。
まず劉氏は、「世論調査で中国の国民の60%近くが、日本は軍国主義だと考えている状況をどう考えるか」という工藤の一つ目の問いに対し、学者として責任を感じると述べられました。中国は他の国の政治や、国自体の発展の方向性を考えるとき、コンセプトから出発することがあり、学者は、それに対して説明・解釈するときの努力が足りない一面があるとの指摘でした。
具体例として挙げられたのは、中国では戦争および新しい中国の発足にかけ、日本に軍国主義国家というコンセプトをつけて、それが国民にも浸透したということです。劉氏はその解決に向け、現実の日本がどういう国で、どうコンセプトをまとめればよいか、学者としての真剣な議論が必要と重ねて発言しました。
同時に、日本の一部の人々が、靖国神社を参拝し過去の戦争を美化している動きは、軍国主義を復活させようとしているのではないにせよ、「日本の政治の右傾化」によるものではないか、との危惧も表明されました。
この点については、工藤の「中国人は、日本が侵略戦争をしたままの軍国主義の国と思っているのか、これからの右傾化の可能性に危惧を持っているのか。どちらなのか」という問いに対し、劉氏は「日本が過去に中国を侵略したから両国の関係がうまくいかないのではなく、やはり一部の日本人が侵略の歴史を美化し中国人の感情を刺激している」と答えました。
その上で、問題は過去の戦争のことよりも、むしろ将来についての不安であるとの指摘もみられました。劉氏はこの問題への答えの最後に、中国人は戦争のことは既に許しているものの、戦争加害者の一部の末裔が、侵略の歴史を認めずそれを評価していることは、「精神面での二回目の加害」であり許し難いという認識を示しました。
また二つ目の「安倍政権を支持するか」との質問に、劉氏は、安倍氏について公式に非難したことはないけれど、首相になる前の一連の発言については徹底的に批判すると述べました。しかし同時に、首相になった以上、国益も考慮して、柔軟性をもってほしいとの期待も口にされました。
さらに最後には「安倍政権はまだ生まれたばかりの赤ん坊だから、誉めてあげるべき。日本人はもっと遠慮するべき、なぜ何もやっていないのに批判するのか」との意見でインタビューを締めくくりました。
文責:渡辺佑樹、是枝宏幸