言論NPOは、「アジアインフラ投資銀行設立が、日本経済・外交に与える影響とは」と題して、有識者を対象にアンケート調査を行いました。調査は言論NPOの活動にこれまで参加していただいた全国の有識者約6000人を対象に、2015年4月19日から4月20日の期間でアンケートの回答を依頼し、回答のあった108人の回答内容を分析した。
回答者の属性
※各属性で示されている数値以外は無回答の割合。この頁以降、数値は小数点第2位を四捨五入しているため、合計が100%とならない場合があります。
AIIBに3月末に参加すべきだったとの回答が最多となった
日本政府は3月末、アジアインフラ投資銀行(AIIB)への現時点での参加を正式に見送りました。こうした日本政府の判断を評価してもらったところ、「政府の判断は誤りであり、参加すべきである」(44.4%)との回答が最多となった。一方で、「参加見送りの、日本政府の判断は正しい」との回答は36.1%にとどまった。また、「米国と行動を一緒にするべきであり、米国が参加しない以上、参加すべきではないと思う」(7.4%)との回答は1割にも満たなかった。
- 「参加見送りの、日本政府の判断は正しい」と回答した方の記述回答
- 「政府の判断は誤りであり、参加すべきである」と回答した方の記述回答
- 「米国と行動を一緒にするべきであり、米国が参加しない以上、参加すべきではないと思う」と回答した方の記述回答
- 「わからない」と回答した方の記述回答
AIIBの設立目的や組織について説明責任を果たしていない
次に、AIIBの設立にどのような懸念を感じているかを尋ねたところ、「AIIB自体の組織運営上のガバナンスが不透明であり、中国主導の運営が改善できるか現時点で判断ができないこと」との回答が29.6%となり、「現時点では何のためのインフラ戦略かが説明されておらず、中国が進めるユーラシアに広がるインフラ戦略、「一帯一路」構想に使われてしまいかねないこと」(23.1%)、「インフラ事業はしばしば腐敗の温床になるが、 AIIBで進めるインフラ事業が、地域のこうした社会性や環境に配慮したものになるのか、判断できないこと」(22.2%)と続くなど、AIIBの設立目的や組織について説明責任を話していないとの回答が多数を占めた。
一方、「特に大きな懸念材料はない」との回答も13.9%と一定程度、存在する。
AIIBに対してのアメリカの対応について、マイナス評価が半数を超える
続いて、今回のAIIBについてのアメリカの対応について評価してもらいました。「新興国の台頭に配慮したIMFの改革等も米国の反対で頓挫しており、国際金融の現状で米国は主導力を取ろうという意欲を感じない」(34.3%)との回答が最多となり、「米国の今回のAIIBに対する対応は戦略的とは言えず、孤立を深めたように見える」(25.0%)を併せると、今回のアメリカの対応について、評価していないとの回答が半数以上を占めることになった。
一方で、「米国の秩序に挑戦する中国の行動に反対するのは当然であり、米国の対応は理解できる」との回答は25.9%にとどまった。
アメリカ主導の国際金融システムは、既に破綻しているとの回答が半数近くに
これまでアメリカが主導してきた国際金融システムの今後について尋ねたところ、「すでに米国主導は壊れており、さらに多極化が進む」との回答が47.2%と最多となり、「今後もアメリカ主導が続く」(23.1%)との回答を上回った。
一方、GDP比で世界第二位の経済大国となった中国の台頭により、「アメリカと中国による『G2』体制になる」(24.1%)との回答が2番目に多い回答となったものの、国際金融システムが「中国主導になる」と考えている有識者は1.9%とほとんどいないことが明らかになった。
こうした中で「日本に何ができるのか」を尋ねたところ、「AIIBに参加して、他の国と協力して中国の銀行運営に影響力を発揮すること」(29.6%)、「AIIBに参加せず、アジア開発銀行やIMFなど他の機関の改革を進め、AIIBに対する競争力を強めること」(21.3%)の単独を行うよりも、2つに同時に取り組むべきとの回答が35.2%と最多となった。