8月31日、中国吉林省長春市にて開催された第2回日中韓人文交流フォーラム(主催:中国外交学院)に工藤はパネリストとして出席し、「三カ国のメディア協力の促進、東アジアでの協力の声を伝播」をテーマとしたセッションにてスピーチを行いました。
セッションには、日中韓三カ国の主要メディア幹部9名が登壇し、昨今の日中韓関係においてメディアがどのような役割をはたしてきたか、メディアの責任とは何か、世論形成にどのような影響を与えてきたかについて過去携わってきた交流事業やビジネスを例に挙げながら、それぞれのパネリストが見解を述べました。日本と韓国のパネリストからは、三カ国の報道機関が主体となって実施してきた共同事業やクロスメディアの展開について紹介があり、政治や外交面では難しい状況が続いても、青少年、環境、文化・スポーツなどの分野でのメディアが主体となり協力関係を促進していくべきであると訴えました。
またSNSやニューメディアの登場により、既存のマスメディアの枠組みを超えて若い世代が新しい情報収集の手段を得ることにより、周辺国に対する認識が変化している点についても触れ、その重要性を適切に認識し、同時に伝統的な報道の手法の在り方や相手国に対するオピニオンの発信について見直す必要があるという問題意識も出されました。
この中で工藤は、近年の日中韓三カ国関係の悪化が主に当該国の世論に原因がある点を指摘し、相手国に対する印象が大きく悪化する中、その傾向をメディア報道がより悪化させてきたと問題提起を行いました。言論NPOが実施してきた日中・日韓の両世論調査において、日中韓の国民の7~8割は関係改善を望みながらも、そのような静かな多数派の意見はメディアには取り上げられない点に言及。このような現状より、北東アジアの安定と秩序作りには単なる従来型の一方通行の報道や交流事業を超え、日中韓の未来に向かった課題解決の対話の場が必要であると訴え、過去数年間で言論NPOが取り組んできた「東京-北京フォーラム」をはじめとした民間対話の紹介を行いました。そしてこのような活動が日中政府上層部にも認められ、新しい「民間外交」の役割として位置づけられた点も伝え、戦後70年を迎える今年、北東アジアにおける新しい歴史のスタートにしたいと語りスピーチを終えました。
今回のフォーラムには約200名の日本、韓国、中国の有識者、メディア関係者が集まり、「日中韓の政治的信頼」、「メディアの役割」、「経済交流の深化」の3つをテーマにした2日間にわたりフォーラムが開かれました。