日米中韓4カ国共同世論調査
日中韓米の共同世論調査で浮かび上がった北東アジアの将来に対する民意と平和への課題

2015年10月20日

⇒ 日米中韓4カ国共同世論調査 結果報告書(PDF)はこちら

言論NPO代表理事  工藤泰志


 北東アジアの変化は中国の台頭を軸に進み、その中で米国はアジア回帰を進めようとしている。この地域で始まっている変化をどのように考えていけばいいのか、不安定なこの北東アジアに平和的な秩序を今後、どのように形成していけばいいのか。それが、今回私たちが行った、日本、中国、韓国、米国の4か国共同世論調査の背景にある問題意識である。

 北東アジアの変化の行方や平和の現状に関して、4か国の国民がどう考えているか、それを明らかにしたいと考えたのは、こうした民意にこそ今、私たちがこれから考えなくてはならない、北東アジアの未来や平和に向けての課題や解決に向けた手掛かりが存在する、と思うからだ。


言論外交と北東アジアの平和に向けた課題解決

 日本と中国は尖閣諸島を巡る対立で政府間の交渉が途絶え、首脳間の対話再開には2年半を有することとなり、日韓の首脳会談も来月初めの開催に向けて、ようやく準備が整い始めたばかりである。言論NPOは、そうした環境下で中国や韓国との対話を進め、尖閣周辺での緊張が高まる中で、一昨年、中国との間で民間レベルだが、「不戦の誓い」を合意し、それを世界に公表し、北東アジアの平和秩序の形成に向けて、作業を開始している。

 ここで、私たちが提唱したのは、課題解決の意思を持つ世論を喚起し、多くの市民の支持を得て、国境を越える課題解決に取り組む新しい民間外交のあり方、「言論外交」である。私たちが外交において、世論の役割を重要視するのは、こうした民意の存在やその水準が、政府間の外交に大きな影響をもたらしているためである。特に北東アジアでは国民間のナショナリズムの存在が、政府間レベルの課題解決の障害になり、この地域に政府対話の空白を生み出してきた。

 民意に基づき、多くの市民の支持を得て課題の解決に取り組むことは、民主政治の市民参加のアプローチで有り、この地域の平和構築に向けた政府間の外交の環境づくり、基礎工事だと、私は考えている。そうした強い問題意識から、言論NPOは米国のシカゴグローバル評議会や、長い間、言論NPOの隣国との対話のパートナーでもあった韓国のEAI、さらに中国の零点研究コンサルティンググループに呼びかけ、今回の共同の世論調査に向けた作業が始まることとなった。

 今回、この事業に参加した4つのシンクタンクは自国や世界で広範な世論調査を実施し、民意の把握を軸に政策提案を行う、世界でも有数のシンクタンクである。私たちは、この3つの有力なシンクタンクと共同で、この北東アジア地域内の現状や将来に対する、客観的で公正な世論の調査を行い、さらにこうした冷静な調査結果を元に、この地域の将来に向けた多国間の対話を行う、ことにも合意したのである。


共同の世論調査では何が明らかになったのか

 この4団体で合意したのは、北東アジアの将来や安全保障に関する9つの設問による世論調査実施であり、この4団体が毎年それぞれの国で実施する世論調査に、この9設問を入れ込む形で今年10月までに4か国のシンクタンクがそれぞれ調査を実施し、この4ヶ国で7000人を越える人がこの回答に協力している。

 今回公表するのはその9設問の調査結果であるが、言論NPOが中国との間で別途共同の世論調査を9月に実施したこともあり、さらに米国の設問に合わせる形で新たに4問を日中の国民に聞いている。このため、4か国の調査とは別に、この北東アジアの将来の課題を広範に問うために、この日米中の3か国の4問の結果も合わせてここで紹介する。

 今回の調査では、4か国の国民に、アジア各国の今後10年間の影響力や課題解決力の評価を行ったほか、地域紛争の可能性、2国間関係の重要性、お互いの国に対する信頼の度合い、さらに朝鮮半島の未来などを聞いている。


 調査で明らかになった4か国の民意は、おおよそ以下にまとめることができる。
まず、今後一〇年間にわたり中国はその影響力を増大させる、と4か国の国民は見ているが、米国のアジアへのリバランスはまだ国民レベルでは十分な理解を得ておらず、米国のこの10年間の影響力は現状維持程度だと見る人がこの4カ国に多い、ことである。

 しかし、こうした中国の影響力と各国の課題解決力、リーダーシップに対する評価は連動しておらず、日本と米国と、中国、そして韓国の国民にかなり大きな意識の差が見られた。この中で浮かび上がったのは、韓国国民の中国傾斜と、中国の国民にロシアや韓国に対する評価が相対的に高まっていることである。この傾向はこの地域の2国間関係の重要性や、信頼に対する国民の評価でも同様であり、米国から見れば同盟国間の協力連携に懸念を抱きかねない状況になっている。

 この地域の紛争の可能性に関しては、米中の国民が、中国の軍事増強や米国のこの地域での行動に懸念を強めていることが目立つ反面、尖閣諸島、台湾などの紛争の可能性に関して、関係国同士の間で、認識の差が出ている。

 米軍の存在に関しては日米韓の国民に、現状維持を求める声が多いが、紛争への米軍の介入に関しては、米国民の中にかなり消極的な見方が強く、特に朝鮮半島の平和統一後の米軍駐留に関して、それを必要とするかで米中、日韓の国民間に意識の差がある、ことも浮き彫りになっている。

 この北東アジアでは、中国の発展に伴うアジアの変化について、国民間の認識差が広がっており、政府レベルの同盟国間の協力の問題や紛争の危険性に関して、国民が懸念を強めている、ことも明らかになっている。

 この北東アジアでは、中国の発展に伴うアジアの変化について、国民間の認識差が広がっており、政府レベルの同盟国間の協力の問題や紛争の危険性に関して、国民が懸念を強めている、ことも明らかになっている。

 では、これらを個別に見ていくことにする。

アジアの変化はこの10年間、中国の影響力増加を軸に展開する

 北東アジアの変化が、中国の影響力の増加を軸に進むことは、当の中国だけではなく、日本、米国、韓国の国民も認めている。特に韓国の国民の中に、中国の影響力の拡大を意識する傾向が高い。

 アジアにおける中国の影響力がこの10年でさらに増加すると見る国民は、当の中国で82.5%、さらに韓国も80%と8割を越え、日本は60.3%、米国でも52%と半数を越えている。

 これに対してアジアへの回帰を進める米国の影響力がアジアで増加する、と見ているのは、米国民でも31%に過ぎず、52%は現状と変わらない、と答えている。日本、韓国、中国の国民も、米国の影響力が、アジアで今後「増加する」と見ているのは3割に満たず、逆に「現状と変わらない」が半数程度で、最も多い回答となっている。


 私たちは、この米国のアジア・リバランスの評価を、日米中の3ヶ国の国民に別の質問で聞いているが、米国でもそれを支持する人と支持しない人はそれぞれ49%と42%と分かれており、日本でも「分からない」が41.9%と、最も多い回答となっており、充分理解されたものとはなっていない。
このような状況の中で中国国民は、自国の影響力の拡大に八割以上の人が自信を強めており、中国人の4割を超える人が米国、韓国の影響力は今後10年も現状と変わらない、と見ている。ただ、日本に対しては評価が厳しく、42.7%が「影響力が減少する」と見ており、この回答が最も多い。


世界の中で責任有る行動が取れる国への評価では、日米と、中韓に温度差が大きい

 ただ、国の影響力の予測と、こうした国が世界の課題に関して責任ある行動を取るのか、への期待は連動しておらず、見方も分かれている。

 今回の調査では、日本、米国、中国、韓国、ロシア、EU,インドの中で、どの国が世界の課題に責任ある行動をとる、と期待できるかを、四ヶ国の国民に聞いているが、日本と米国の国民は米国、EUと日本にそれぞれ半数を越える、強い期待(日本人は自国に78.85、米国に77.3%、EUに55.3%、米国人は自国に81%、EUに65%、日本に58%)を持っているのに対し、中国と韓国にはそれほど、強い期待を持っていない(米国人は中国に34%、韓国に36%、日本人は中国に14.9%、韓国に25.4%)。


 これに対して、中国人は、世界の課題に対して責任ある行動をとる国として、自国の90.1%を除けば、ロシアに七割を越える人が期待を持っているのに対して、米国に対する期待は45.1%に過ぎず、半数に届いていない。韓国人は米国(87.4%)、EU(71.7%)と並ぶように中国(70.6%)にも高い期待がある。

 中国人と韓国人で、日本に責任ある行動を取る国としての期待している人は、韓国人が48.1%、中国人はわずか14%しかない。


 さらに私たちは、日本と中国、米国の3国民に、日本、米国、中国、韓国、ロシア、EU、インドの中で、国際的にリーダーシップをとることが望ましい、と思う国を聞いている。

 この回答も先の質問と同様に、日米と、中国の国民間に大きな認識差がある。日本では、自国のほかは米国とEUがリーダシップを取ることが、望ましいと考える人が多く、米国を選んだのは79.7%、日本は69.9%、EUは53.4%、である。
中国、韓国、ロシアを期待する人はそれぞれ1割程度だった。

 米国人が、リーダーシップを取ることが望ましいと期待する国は、自国の92%を別にすれば、EUの80%、日本の73%が最も多い。中国を期待する米国人は51%、韓国は62%、ロシアは43%である。

 これに対して、中国人が期待する国は、自国の中国の85.7%を除けば、ロシアの72.8%が最も多く、米国の64.1%が続いている。韓国を期待する人は53.4%、日本は42.4%だった。


米中の国民が、中国の軍事増強や米国のこの地域での行動に懸念を強めている

 次に私たちは、この地域の紛争の原因を4ヶ国の国民がどう認識しているのか、を聞いている。

 全ての設問で共通して言えるのは、日本人の地域紛争に関する認識が相対的に希薄だということである。しかし、それを差し引いても、この4か国の国民間には紛争の原因の可能性をめぐり、注目できるいくつかの傾向が存在する。
第一は、「中国の軍事的な増強」や、「米国のアジア太平洋における展開」が、今後のアジアの紛争の原因となる可能性がある、という認識が米国と中国の国民に強いことである。

 例えば、「中国の軍事力の増強」が、紛争の可能性の原因だとなる可能性がある、あるいは可能性が高い、と考える米国人は79%と8割近くとなっており、中国人も58.9%と6割近くはその可能性を認めている。逆に、「米国のアジア太平洋における軍事展開」が紛争の原因になる可能性を中国人は65.2%、米国人も63%、と6割以上が認識している。


 ただ、現実に北東アジアで存在する、二国間の対立に関しては、関係当事国間の国民の意識に非対称性が存在する。例えば、「中国と台湾の関係」に関しては米国の66%が紛争の可能性をある、または紛争の可能性が高い、と考えているが、中国人でその可能性を意識しているのは45.6%に留まった。また、「日本と中国間の紛争」も、中国人の71.4%が、その可能性がある、あるいは、高いと考えているが、日本人でその可能性を指摘しているのは38.9%に過ぎず、39.5%は逆にその可能性はない、と意見が分かれている。「日本と韓国間の紛争」も、韓国人の54%が紛争の可能性を意識しているが、日本人でその可能性を意識しているのは、22.6%に過ぎない。


 第三は、4か国の過半数の国民が共通して、紛争の可能性があると認識している課題も北東アジアに存在している、ことである。「エネルギー資源の競争」(日本人59.1%、米国人75%、韓国人85.3%、中国人82.5%)、「アジアでの新たな核保有国の出現」(日本人50.1%、米国71%、韓国71.8%、中国65.3%)、「朝鮮半島の状況」(日本人59%、米国78%、韓国65.5%、中国63.3%)である。新たな核保有国の出現と、朝鮮半島の状況を危惧する傾向は特に米国民と韓国民に強い。


アジア地域の米軍の存在に「現状維持」を求める声が日米韓で過半数

 こうした不安定な北東アジアの環境下で、アジア地域の米軍の存在に関しては、「現状維持」を求める見方が、日本と韓国と米国の国民の間に多く、米国は64%、韓国は60.6%、日本は53%、と半数を越えており、それぞれが、最も多い回答となっている。

 中国人は逆に58.2%が、米軍を減少させるべきと考えており、最も多い回答となったが、中国人の中にも現状維持を求める層が、28.7%と3割近く存在することは、留意する必要がある。


アジアの紛争での米軍投入には米国民は消極的である

 次の私たちの関心は、アジアの紛争において米軍の派遣を正当化、できる事態をどのように四ヶ国の国民は認識しているのか、である。

 中国国民の7割程度はいずれの紛争でも米軍の投入に反対であるが、米国民にも、アジアの紛争への米軍派遣を反対する声が多く存在していることが、今回の調査では明らかになっている。特に米国民の反対は、尖閣諸島における日本と中国の衝突、中国と台湾の衝突のケースでより大きなものとなっており、それ以外でも米軍の派遣に賛否が拮抗している。


 例えば、朝鮮有事で北朝鮮が韓国を攻撃した場合は、韓国民の91.4%が米軍の派遣を賛成しており、日本人も56.8%(反対は13.2%)が賛成しているが、米国民は賛成が47%、反対が49%と賛否で意見が割れている。これに対して中国人は74.8%が米軍の派遣に反対している(賛成は11.6%)。

 北朝鮮が日本を攻撃した場合は、日本人の70.6%が米軍の派遣を賛成しているが(反対は9.2%)、米国民は賛成が48%、反対が47%と、ここでも意見が二つに分かれている。韓国民もこの場合は賛成35.2%、反対35%、わからないが29.8%と意見が定まっていない。中国人の反対は56.3%だが、賛成も28.6%と3割近く存在している。


 これに対して米国民や中国民の反対が目立つのは、尖閣諸島での日中衝突と、台湾での衝突である。尖閣諸島での米軍の派遣に賛成が多いのは、日本人の55.7%(反対は16.2%)のみで、米国民は64%(賛成は33%)、中国人は70.3%(賛成は18.4%)が反対している。韓国も反対が38.7%で、賛成の27%よりも多い。

 また、台湾の衝突でも、米国民は68%、中国人は81.6%が反対しており、日本と韓国でも賛成は3割程度で、意見が割れている。


朝鮮半島の平和統一後の米軍駐留では日韓と、中米で意見が分かれる

 これに関連して、朝鮮半島の平和統一後のおける在韓米軍の駐留に関しても、4か国間の国民間で意見が分かれている。統一後も駐留軍が必要と考える国民が多いのは、韓国と日本で、韓国人は57.3%が「必要」と考え(必要ないは31%)で、日本人は44.6%が「必要」だと考えている(同28.4%)。これに対して、中国では65.7%が「必要ではない」と考え(必要は19.9%)で、米国では「同盟関係を維持し駐留軍を置く」は32%だが、「同盟関係は維持するが、駐留軍は置かないが」が44%、さらに「同盟関係を終了し、駐留軍は引き上げる」が18%と、合わせて62%が駐留軍の引き上げを、求めている。


この地域の2国間関係の重要性でも、韓国民に目立つ中国傾斜3

 こうした北東アジアの変化が大きい環境下で、それぞれの国民がどの2国間関係を重要だと考えているかでも、国民間の意識に差が表れている。

 日本人にとっては、米国との2国間関係が最も重要である。「重要」と、「どちらかといえば重要」と回答する国民は合わせて92.2%と最も多く、中国が82.3%で続いている、韓国は73.7%である。

 米国人にとって重要な2国間関係は、日本と中国が88%で共に並んでいる。韓国は83%である。


 韓国も米国との関係を「重要」だと考える国民が98%で最も多いが、中国との関係が「重要」と考える人も96.6%とほぼ並んでいる。日本との関係が「重要」だと考える人は84.1%と少し差が開いている。

 中国人にとって重要な二国関係は米国が79%で最も多いが、韓国を重要と考える人も70.2%となっている。これに対して、日本を重要と考える中国人は47.3%に過ぎず、重要ではない、の46.6%と二分している。


中国の国民では韓国が信頼できるが、半数を越えている

 さらに、調査では日本と中国と米国の3国民に、日本と中国、韓国、米国の4か国の中で信頼できる国はどこかを聞いている。

 日本人が「とても信頼できる」、あるいは「どちらかと言えば信頼できる」と思う国は、この4か国では合わせて米国が69.8%と最も多く、韓国は15.6%、中国はわずか9%である。

 米国人にとって同じく信頼できる、国は、日本が79%と最も多く、韓国は65%、中国は46%となっている。

 これに対して中国人が、信頼できると思う国は、この4か国では韓国が56.3%と最も多く、米国は33.9%と韓国よりも少ない。逆に信頼できない(全く、とどちらかと言えば、の合算)は61.3%で半数を越えた。

 日本を「信頼できる」(同)と答えた中国人は8.9%に過ぎず、逆に信頼できないは(合算で)86.4%となった。


日韓関係の改善では日本人が民間交流、韓国人は経済関係の強化が有効と考えている

 次に、この4か国がそれぞれの国との関係を向上させるために、何が有効かを聞いている。
 
 米国と中国の関係向上では、米国人が最も有効と考える対策は、政治・安全保障関係の強化が31%、経済関係の強化が29%で並んでいる。逆に中国人は45.2%が、経済関係の強化こそ最も有効と考えている。

【米中の関係向上のために有効な方法】

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 日本と中国との関係向上では、日本人は経済、政治安全保障、文化的、人的交流などに意見が分かれ何が有効かを決めきれていないのに対して、中国人は政治、安全保障関係の強化が有効だと判断する人が33.2%と最も多く、経済関係強化が20.7%で続いている。

【日中の関係向上のために有効な方法】

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 韓国と中国の関係向上では、韓国人は70.1%で7割が経済関係の強化が最も有効と判断しており、中国人は経済関係の強化が有効と考える人が31.7%で、文化的、人的交流の促進が27.8%で続いている。

【中韓の関係向上のために有効な方法】

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 日本と韓国の関係改善では、日本人が有効だと考えるのは、文化的、人的交流の促進の民間レベルの交流の30.7%が最も多く、政治、安全保障関係の強化が26.3%で続いている。経済関係の強化は15.8%しかなかった。これに対して、韓国人は、33.8%が経済関係の強化が有効と考え、政治、安全保障関係の強化の28.8%、文化的、人的交流の促進が26%で続いている。

【日韓の関係向上のために有効な方法】

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日本の常任理事国入りには、中韓の国民は反対

 最後に、日本が国連の安全保障理事会の常任理事国に入る、ことの賛否を4か国の国民に聞いた。支持しているのは、日本の米国の二つの国民で、日本は70.6%、米国人は73%が支持している。これに対して、中国と韓国の国民は厳しい態度を崩しておらず、韓国人の66.3%、中国人の86.1%が支持していない。



<日米中韓4カ国共同世論調査で何が明らかになったのか>

 今回の4か国の世論調査で浮き彫りになったのは、この地域の安全保障や共有の価値観から同じ側に立つとみられていた、米国と韓国、そして日本との関係にほころびが見られ、韓国の国民に中に中国との関係を重要視する見方、つまり中国傾斜の傾向がはっきりと見られ始めたことだ。4か国の国民の多くはこの地域での中国の影響は今後も増大すると見ているが、韓国国民には、そう見る傾向が大きく、それが中国傾斜の背景になっている。

 この地域には、様々な紛争の可能性があるが、米軍のこの地域での増大を日米韓でも国民の多くが期待していないこと、さらに紛争の際に米軍の派遣に賛成かでも、当事国以外は意見が分かれており、また、紛争や朝鮮半島の平和統一後の在韓米軍の駐留に関しても、米国民の多くが消極的に考えていることも、今回明らかになった。これらは今後の北東アジアの安全保障を考えるときに大きな論点となるだろう。

 中国の台頭の中で、この地域の変化や紛争の可能性で見方が分かれ、懸念が大きいのは、この地域に二国間関係の対立や、米国と中国の安全保障上の対峙が存在すること、その反面、この地域にこうした課題を話し合える、また危機を未然に防ぐガバナンスの仕組みが存在しないこと、もその大きな背景になっている。また、アジアにおける米国の存在がそう今後も大きなものにならないと4か国の国民が思うのは、米国のアジア・リバランスの意味や進展を、多くの国民が理解できていないことも大きい。

 今回の調査は、この地域における平和構築の課題やその必要性を浮き彫りにした、という点で大きな意味を持つ。こうした北東アジアの不安定さにどう向かい合い、この地域に安定的な平和を構築するのか。そのためには、民意の動向を把握しながら、平和の構築を多くの国民が自らの課題として考える、そうした対話の舞台は必要になっている。今回の私たちの共同調査はそのための第一歩になった、ことだけは間違いない。


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