環境分野での日中協力をどのように進めるのか

2015年10月25日


 10月24日、25日の2日間にわたって開催されている「第11回 東京-北京フォーラム」。特別対話では、「観光、環境。日中が直面する課題での協働発展-地域レベルの課題解決から協力基盤を拡大する」と題して行われました。

 後半の冒頭、司会の福本容子氏(毎日新聞論説委員)から、日本では中国から大勢の観光客が来て、大量に日本のものを買ってくれている「爆買い」が話題になっていることに触れ、「日本の市場が低迷する中、ありがたいお客さんだが、それを超えて買い物だけではなく、中国で聞いたことと、日本で見たことの違い、個人的な体験がSNSによって発信される」とし、そのパワーに期待を示しました。しかし、一方で、今回の世論調査で、日中両国民に相手国へ行きたいかと尋ねたところ、両国とも「行きたい」との回答が増えているものの「行きたくない」との回答が7割近くを占めているとの調査結果を紹介し、「こうした状況をどのように逆転させるべきなのか」と問題提起しました。


日本・中国1000万人交流時代は目の前

 これに対して、基調報告に立った山田啓二氏(京都府知事)は、多くの中国人が「買い物」と「食事」を目的にしており、大半はゴールデンルートと呼ばれる、「成田⇒東京⇒富士山⇒京都⇒大阪から帰国」というルートが定番になっている。しかし、一度訪日した人は、「四季の体感」、「歴史的伝統的文化を体感したい」という人の割合が急増しており、こうした需要をどのように取り込むかが一番重要であり、「本当の日本をどのような形で見てもらうのか、日本を感じてみてもらうのか、そうした日本の魅力を本当の意味で発信する時代が来ている」、それをどのように活かしていけるかが課題だと語りました。
一方で、中国を訪れる日本人を増やす方策として、中国側も日本人を受け入れる体制、例えば、トイレや食の安心・安全の問題、そうした問題をクリアにすえば、すぐに大勢の日本人が中国を訪問し、「日本・中国1000万人交流時代は目の前」と基調報告を締めくくりました。


6つの提言

 続いて、邵琪偉氏(元国家旅遊局局長)が「中日観光交流、10年間の感想と提言」と題して、基調報告を行いました。まず、2005年7月に、中華人民共和国国家観光局と日本の国土交通省によって締結された覚書により、日本の団体旅行が全面的に解禁され、中日観光交流のきっかけとなったと語りました。その後、2008年の四川大地震、2011年の東日本大震災後に、相互に震災復興に協力し、観光業などの復興や両国間の観光交流について議論し、具体的に動いてきたこれまでの成果を、観光客の推移など、過去のデータなどを交えながら紹介しました。そして、邵琪偉氏は先程の山田氏の基調報告に同調した上で、山田氏が挙げた環境汚染や、食の安全・安心性は1つの原因だとしつつ、加えて、メディアの宣伝などを挙げました。

 そして、「これまでの成果から、観光交流や協力は両国国民の重要な懸け橋で、両国友好関係を促進するために、特別な貢献をしている。観光交流によって、両国国民が直接に交流をすることができる。お互いの絆と一体感を強めることができる」と語り、両国関係の改善に向けて、プラスの影響力を与えるとの見解を示しました。加えて、観光は両国の経済社会、文化などの関連業界にもプラスの影響力をもたらすと指摘しました。

 こうした状況を踏まえ、邵琪偉氏は、両国の観光客の相互交流を促進すること、観光サービスのクオリティを高めること、観光産業の協力分野を広めること、仕事のメカニズムを改善し、両国の司法政府、および観光機関の交流や協力を促進すること、青少年の観光交流を重視すること、両国の観光企業・観光協会の協力を促進すること、の6つの提言を示して、報告を終えました。


 続いて、伊原木隆太氏(岡山県知事)は、知事の娘さんが、中国へ留学に行き、多くの人たちと交流をして帰国する際、かなり中国への見方が変わって帰ってきたという自身の体験を踏まえて、邵琪偉氏が提言した相互交流の重要性、若い青年の交流などについて賛意を表明しました。

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 張雲方氏(徐福会会長)は、「中日関係が低迷状態にあるからこそ、観光事業を拡大することは重要だ」との意見を述べました。


自治体が考える観光の重要性

 山下和弥氏(葛城市市長)は、自身が市長を務める葛城市の紹介をした上で、大阪から30分以内の立地にもかかわらず、現状、中国人の観光客は皆無であるとし、地方の小規模自治体が観光客を呼んでくるためのPRに十分な予算は避けないため、今は姉妹都市などの提携都市はないが、そうした都市を見つけ出し、それをきっかけに、相互交流、青年交流を進めていくことから始めていきたいと語りました。

 藤田裕之氏(京都市副市長)は、町の景観を保護するために、建物の高さを制限したり、ネオンサインのような広告物は禁止されており、歴史・文化にふさわしい街づくりを行うために、様々な取り組みを行っていることを紹介しました。加えて、京都市には約7000人の留学生が暮らしているが、若者が伝統文化に触れ、または最先端の技術を学ぶなど、観光や青年交流がきっかけとなって両国の交流が深まっていくことに期待を示しました。

 岡口憲義氏(神戸市副市長)は、ゴールデンルートからも外れているために、目玉事業として、瀬戸内海クルージングを計画していることを紹介。また、青少年の交流について、日本の大学生と中国人留学生が様々な交流、プロジェクトを推進しており、そうしたところから、将来、両国の青少年の交流に繋がればいいと考えている、と長期的な視野に立って政策を進めていることを紹介しました。

 互いにインバウンドだけを主張するのではなく、協力する機関をつくることも必要
その後、質疑応答に移りました。まず、日中それぞれから出された意見を踏まえ、山田氏が、「これから中国が経済発展すれば、両方の交流はますます深まっていくことは間違いない」とした上で、「中国人観光客が増えることで、日本はどう対応し、逆に中国は日本人観光客が増え、どう対応するのか。こうした取り組みを別々に行い、お互いにインバウンドだけを主張していてうまくいくのだろうか」ということを、私たちは真剣に考えなければいけないと問題提起。そのために、旅遊局と政府・観光庁との間で、お互いの持っている感覚をすり合わせ、情報のアクセスの面でギャップを取り除くための「1000万人交流会議」のようなものを作ること、また、日中両国のパネリストが青少年交流は重要だとの認識で一致していることから、今後、教育旅行の交流を公的にも、民間にもしっかりと推進していく機関を作るという、この2点を提言したいと語りました。

 その後、会場との意見交換なども行い、特別対話は終了しました。

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