「第11回東京-北京フォーラム」メディア・文化 分科会

2015年10月25日


民間交流の重要性

 後半の対話ではまず、小倉氏が「文化交流の量の低下が顕著であること、対話の多様性が欠如していることを指摘しました。そのような中では、個人同士、地方と地方、職業団体が、日中共通の問題に取り組むことが求められる」と語り、個々人同士の交流の促進が必要であることを強調しました。

 続いて、高氏が「文化が交流の手段として、どのように影響するかがわかった。今年の世論調査において、日中関係の改善のための手段として、民間対話が重要と答えた人が24%であって、多くの人々が民間対話を望んでいる」と述べ、関係改善、促進のための民間の対話の重要性を主張しました。


 金氏は「感銘深いことに、日本人の中国の文化に対する理解は深いと思う一方で、逆に中国人の日本文化への理解が足りない。中国の皆さんは日本の中世の文化にもっと注目し、深く学んでいく必要があると思う。文化交流は、使いなれた言葉ではあるが、簡単なことではない」と述べ、文化交流は何百年に渡って継続していく必要があると語りました。


 それに対して、大野氏は「文化の話をする時は中国側、日本側と分けて話をすべきではない。文化は国を超えて行うものであり、政治と相対化すべきだ。しかし、政治側は文化を絶対化しようとする。文化は国を背負わない存在でなければいけない」と主張しました。


 袁氏は「このような一つの小さな会議室のみで議論を終えてはいけない。さらに言えばもっと若い人々が参加する機会があっても良いと思う。例えば安保分科会では、多くの将軍が参加しているように、若い兵士が参加する機会があっても良いと思う」と述べ、議論の継続と若い世代を巻き込んでいく必要性を訴えました。



歴史の重要性と文化交流の必要性

 江川氏は「歴史を知ることはやはり重要であり、例えば、日本では世界史の授業で、中国の歴史を学び、古典で中国の漢文を学ぶ。一方で、平均的な中国の若者はどのように学んでいるのかが気になった。古代の中国は日本に文化を輸出してきたが、今では多くの人々が文化交流を通じて、近代以降、日本の文化に興味を持つようになった。そこで重要なのが大衆文化であって、今日では、重要な大衆文化の交流が不足していると思う」と述べ、改めて歴史の重要性と文化交流の必要性を訴えました。

 杉田氏は、「小倉氏の言葉にあったように、日中共通の課題に取り組むことが重要であって、グローバルな課題に臨むとき、自国の立場を完全に消すのは難しいものの、自国の立場のみならず、相手の立場を考慮したところに高いレベルの議論が存在すると思う」と述べ、容易なことではないものの、相手の立場を考慮することの重要性を強調しました。

 そして、高原氏は「世界共通の課題に関して言えば、排他的なナショナリズムを乗り越えることが、日中両国、世界の課題の解決につながると思う」と付け加えました。

 加藤氏は「異文化と接することに文化交流の価値があり、自分たちの文化と異なる文化と交流することで、別の文化への尊敬やそれに対する感動を覚えることに文化の価値があると思う」と語り、自身の考える文化の本質について主張しました。

 袁氏も加藤氏の主張に賛同し、「中国の文化は様々な文化を吸収して、今日に至っている。例えば若者文化としては「ゲーム」が挙げられる。その一方で、今の若者が新しい文化を創り出していくことは空白の状態となっている。もし、新しい文化を創り出すことができれば、日中文化の上に立つものとなる」と述べ、新しい文化の創出が、今後の日中関係の発展に大きくつながっていくことを主張しました。

 伊藤氏は、「文化交流に関していえば、国際交流基金による助成が減っている。メディアに関して言えば、新聞の発行部数は減少し、最近ネットの利用が増加している。NYTIMESの試みで行っているような、ブランド力を高めるための取組みが必要である」として、メディアの現状とこれからについての展望を語りました。

 王氏は、「文化の専門家として大切なことは、どのように両国の文化を促進させるかであって、例えば書道のような日中に共通する文化をどのように発信していくかが重要である。そして、時代の変化に適応し、映像、画像等をトータルな文化で発信させていく必要がある」と語りました。


若者支援の必要性と若者の交流の場を創出していくことの必要性

 小倉氏は、「中国側の基金に関しては、約10年前に、日本の高校生が中国の地方都市へホームステイを行うこと、また中国の若者が日本の現代文化を知ることを支援するための日中交流センターという100億円ほどの基金を作った。また、フォーラムに若者を呼ぶことも大切ではあるが、若者同士の交流を増やしていかなければならない」と述べ、若者支援の必要性と若者の交流の場を創出していくことの必要性を訴えました。

 孫氏も小倉氏の意見に同意した上で、自身が中国青年団の幹部を日本に派遣している実績を紹介し、「訪日を辻手、中国の若者が日本の文化への理解を深めることができた」と語りました。江川氏も同様に、小倉氏の意見に賛同し、「日中関係が悪くなった時に、『京論壇』という東大の自発的な取組みがあったように、若者の良いところは、お互い刺激し合っていくところだと思う」と述べ、若者に対する期待を語りました。

 ここで、質疑応答の時間に入り、会場から「日本のテレビ番組や、映画の公開を求める声が多い一方で、問題も多く存在することから、それらが中国では簡単に公開されない傾向がある。綺麗で高尚な文化のみならず、中国には日本の文化を全体として受け入れる準備があるのかを中国の専門家にお尋ねしたい」という質問がありました。

 この質問に対して高氏は、「確かに日本の作品の受け入れ自体は少なく、アメリカやヨーロッパのものが中心であることは確かなものの、それは人々の関心やビジネス的な部分によるところが多いため、受け入れ自体の少なさのみという点から、日本の文化を全体として受け入れる準備がないとは言えない」と主張しました。


来年以降につなげていく対話を

 最後に総括として、文化は一つの双方の交流が行われるプラットフォームであり、国際的な観点から中日両方の若者が参加していくべきである。また、文化は一つの手段として使っていくべきであり、SNSの使用や行動を伴って、また具体的な一つのプロジェクトを通して行っていくべきとされました。さらに、このフォーラムの重要な趣旨は、今年出された提案が来年において実現できたかどうかを振り返る点にあるとされました。

 今日は、両国民の間に認識の差やその克服のための具体的方式などを有意義に話し合うことができ、これらを解決すべきだという共通の目的意識、コンセンサスがあることから互いに信頼し合うことができたとされ、これを来年以降につなげていくことを確認し合った上で、分科会は閉会しました。

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