フォーラムの全日程終了後、日中の実行委員会体制の主要メンバーら計10人が参加して記者会見が行われました。
冒頭、日本側の主催者代表である言論NPO代表の工藤は、今年から中国国際出版集団が中国側の新たな主催者となったことにも触れながら2日間の議論を振り返り、「新しい体制になって1回目の対話が無事に終わった。私たちが目指すのは、日中関係のさまざまな課題に本気で向かい合い、国民が課題をきちんと考えるきっかけとなる舞台である。それを実現できれば、日中関係は本当に強いものとなる」と述べました。
その後の質疑応答では、過去2年間のフォーラムで閉幕時に発表されたコンセンサスの発表が、今回は行われなかったことに対する質問が相次ぎました。
記者会見の中国側司会を務めた周明偉氏は、「今年は議論のテーマ、参加者の人数など非常に幅広いもので、多くのテーマで非常に踏み込んだ議論があった。その中で、あえて全体のコンセンサスをまとめるのは困難だし、必要もない」と説明。加えて中国側の参加者からは、「今回の議論は非常に踏み込んだ内容であり、予想以上の良い雰囲気の中で行われた。それ自体が最大の成果だ」「フォーラムで良い議論を交わし、両国の民間交流を推進するという点では、日中双方はまったく対立していない」との説明がなされました。
日本側から登壇した明石康氏は、コンセンサスの合意に向けた日中の交渉過程を総括し、「日中それぞれからの素案に取り上げられた共通目標や課題認識に大きな違いはなかったが、それに対する方法論に違いがあった」と語りました。その上で、フォーラムの成果について「今回の参加者は、日中関係の将来について『まだ意見の違いがあるが、良い方向に向かっている』と安心すると思う。しかし、残された問題解決のため、我々にはまだまだやるべきことがある」と述べました。
さらに、工藤は、来年、東京で実施される第12回のフォーラムにも言及しつつ「今回も合意をしたい気持ちはあったが、議論をより深めなければいけない課題が出てきていた。最終日の対話に向けた準備を行い、フォーラムを最後まで成功させることを最優先した方がよいと判断した。それが、来年の東京できちんとした合意をするための準備にもなる」と述べました。
また、日本の記者から中国側に対して、フォーラムが民間主体で行われることの重要性をどのように認識しているのか、という質問がありました。中国側の登壇者は、中国が考える「民間交流」を「政府、政策決定者以外の者が行う交流」と定義した上で、民間対話のメリットとして「形式的な政府間の対話とは異なり、相手への疑念も含めて胸襟を開いて率直に話し合える場である。その中で相互の疑問を解消するとともに、意見や知恵を出し合い、民衆からの提案として政府に示すことができる」という点を述べました。
その後、経済分科会で得られた「生産能力の協力」という結論をどのように実行に移していくのか、と、日中双方に対して説明が行われました。山口廣秀氏は、今必要なのは、方針のベクトルを定めることではなく実際の行動だ、と強調し、そのためにはまず企業自身が力を発揮し、必要に応じて政府が支援を行うべきだとの考えを示しました。それに対し、中国側の魏建国氏は、日本の企業は既に中国との経済連携に熱心だ、とした上で「中日政府のトップの対話が止まったままなので、民間の連携にも推進力がない」と、まず政府間関係の改善が鍵を握っていると主張しました。
記者会見は以上で終了し、その後、会見参加者に対する各メディアの個別の取材へと移りました。