【パネリストインタビュー】「第4回日韓未来対話」を振り返って

2016年9月03日

ゆっくりではあるが、日韓両国関係は深まり改善していく


池畑修平
(NHKソウル支局長)

 今回初めて日韓未来対話に参加させていだたいた感想から言いますと、この枠組みは、世論調査を基にして議論していくというところに非常に大きな特徴があると思います。そして、話に広がりも出て、非常に有意義で、良いと思いました。こういう話し合いは、得てして抽象的な話や感情論に流れたりすることがありますが、世論調査の数字を見ながら、これをどう見るかというのを話す点に非常に特徴があると思います。

今回の世論調査で気になった2つの結果

 個人的に、色々な数字の中で一つ思ったのは、日本も韓国も相手の国を訪問したことのある人の割合が、思っていたよりも低いということが非常に意外だったことです。お互いの国を訪れる人が増えていると思っていたのですが、まだまだ低いなと感じました。そうした点が、お互いに対する誤解だとか、意思疎通の無さにつながっているのかなと思っています。

 もう一つ印象的だった数字は、相手国に対しての情報をどういうルートで得ているかというと、日韓とも9割以上と圧倒的に自国のメディアからと回答していました。さらにそれをもう少し詳しく見ると、圧倒的にテレビが多いということで、テレビで働いている人間としては、非常に責任重大だと改めて感じました。そういう文脈で議論の中でも、日韓それぞれのメディアがどうあるべきか、ということも意見を言わせていただきました。

大統領選などの不確定要素はあるが、今後も日韓関係は改善方向へ

 それから今後の日韓関係全体がどう推移するかということですが、今、政治的に改善基調にあるのは間違いないと思います。それは今回の世論調査にも、はっきり数字として出ていました。政治的なイシュー、特に昨年の慰安婦問題における合意というのが、非常に大きかったのだろうと思います。ですから、短期的には改善基調が続くと思いますが、そうこうするうちに来年の終わりには韓国の大統領選挙があり、韓国国内が、例えばこの慰安婦合意をそのまま推進していくことに対して、選挙ということも絡めて反対する声が、絶対に高まるだろうと思います。そういう意味では、私は、回復基調がすんなり続くかどうかにはやや不安を持っています。ただ中長期的に見れば、今日の議論にも出ましたが、北朝鮮の軍事的挑発、それから中国の海洋進出を含めたある種の拡大主義を前にして、日本と韓国は、安全保障面を含めて互いに協力していく分野が広がる他ないと思います。速度はゆっくりかもしれませんが、両国の関係はそういう風により深まり、改善していくのだろうなと思っています。

相互コミュニケーションが取れるようなバージョンアップを

 最後に、この日韓未来対話の今後ですが、非常に色々なバックグラウンドを持っていて、深い知識を持った方が、かなりたくさん参加されています。初めて参加して思ったのは、よりセッションを細かく分けて、もっと少人数で話をキャッチボールできるようにするとか、あるいは公開セッションではもっとフロアからの質問を途中に入れるなど、より相互コミュニケーションが図れるようになっていくと、もっと話が深まって、活発になるのではないかと思います。こういう枠組みは非常に貴重ですので、これからも良い方向にバージョンアップしていくことを期待しています。

⇒ 藤崎一郎(上智大学国際関係研究所 代表、前駐米国大使)
⇒ 中谷元(衆議院議員、前防衛大臣)
⇒ 青木照護(日本青年会議所副会頭、株式会社ノーリツイス代表取締役社長)
⇒ 山本和彦(森ビル株式会社特別顧問)
⇒ 德地秀士(政策研究大学院大学政策研究院シニア・フェロー、元防衛審議官)
⇒ 池畑修平(NHKソウル支局長)
⇒ 金泰榮(韓国戦争記念財団理事長、第42 代国防長官)

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