4月18日、「第13回 東京-北京フォーラム」の指導委員会委員長である明石康氏(国際文化会館理事長、元国連事務次長)、同副委員長の宮本雄二氏(宮本アジア研究所代表、元駐中国大使)、実行委員会委員長の工藤泰志(言論NPO代表)の3氏は、中国・北京を訪問し、同市で開催予定の「第13回 東京-北京フォーラム」に向けて、中国側主催団体である中国国際出版集団の張福海総裁らと協議を行ないました。
協議の結果、メインテーマ、開催時期、 常設の安全保障対話の設置の推進で合意するなど、大きな前進を果たしました。
17日の主催者間協議に続いて18日に開催された事前協議の概要は次の通りです(文末に出席者一覧を掲載)。
世界が変動、より重要性が増す今年のフォーラム
まず工藤が、今回の事前協議から、「東京-北京フォーラム」の準備が本格的に始まるとした上で、「今年と来年は日中関係にとって非常に重要だ」と口火を切りました。米国のトランプ政権の動向、欧州で高まる大衆迎合主義など世界情勢は大きな変化の波に洗われていると同時に、2017年は日中国交正常化45周年、2018年は日中平和友好条約締結40周年を迎える節目の年でもあるからです。
これに対して新しく国際出版集団の総裁に就任した張福海氏は、「『東京-北京フォーラム』が両国の友好発展に大きな成果があったことに敬意を表したい。私は、国務院新聞弁公室に在職していた頃から、皆さんの努力を知っている。今回このフォーラムの運営に関われることを大変光栄に感じている。同時に少し不安も感じているが、この不安を原動力にしたい」と語りました。さらに張福海氏は、今年と来年は両国の節目の年だという工藤の話に賛同した上で、この2年間は「両国にとってチャンスだ。これまで国際出版集団と言論NPOがこれまで築いてきた基礎を大事にしたい」と述べ、事前協議の前日に工藤と十分に討論し共通認識に達したことを紹介。その上で「工藤さんは頑固ですが、良いパートナーだ」として、工藤と忌憚ない議論を交わしたというエピソードも紹介しました。
明石氏も、今年と来年が日中関係にとって重要だということに同意した上で、「前日に行われた主催者間協議では日中双方に意見の相違がいくつかあったが驚くには値しない。そうした違いは善意、想像力、熱意で解決できる」と主張し、この事前協議の中で、「大きな問題については双方で結論に達することができると確信している」と意欲を見せました。
続いて、主催者間協議による共通認識について、確認・総括が行なわれました。まず、中国国際出版集団・王剛毅副総裁が「主催者間協議でフォーラムの枠組みについて基本的な合意に達した」と述べると、工藤も同意。その上で「テーマについては、対話の目的、共通の財産であるという認識が重要である。このフォーラムは議論が目的ではなく、課題解決が重要だ。民間が全て解決できるわけではないが、政府の一歩先を行きたい」と民間対話の重要性を主張しました。
また、常設化が検討されている安全保障対話について工藤は「北東アジアの平和構築が目的だ。日中間では経済面での協力はある程度できているが、安全保障面では対立しているのが現状であり、将来的には安全保障分野でも協力が必要だ」と語りました。さらに、「今年と来年を1つの塊として考えたい。その中で来年は平和についてのコンセンサスを発表したいと思っているし、我々にいま何ができるかを考えたい。これが日本側の根底にある考え方だ」と述べ、今回のフォーラムの意義を語りました。
日中が主体的に動く時代がやって来た
その後、本格的な協議に突入しました。
まず、日本側から経済について、「戦後世界の経済体制は自由主義経済だったが、これが今揺らいでいる。また、現在の日中の貿易体制は、残念ながら本当の自由貿易とは言い難い。そこで、今年の『東京-北京フォーラム』では日中はこうした問題について議論し、合意を打ち出さなければならない。そして、日中間の合意を他国が見て、賛同し、追随するような状況にしていくことが大事だ」との問題提起がなされました。また、安全保障については、「日中は、国際情勢の大きな変化の中で、新しい段階に進まなくてはならない。今までは、最終的にはアメリカが何とかしてくれるという安心感があったが、これからはそうはいかない。誰かに頼るのではなく、自分たちが主体的にどうすべきか、という『本当の安全保障』を議論したい。そのためには日中の協力が絶対に必要だ」との意見が寄せられました。
これを受けて中国側から「自由貿易の堅持という考えに、日中の考え方に基本的には違いはない。表現の問題だけだ。日中の溝を埋め、新しい関係を構築していきたい」との賛意が示されました。さらに、「民間フォーラムの重要性はますます高まっている。分科会では双方1名が重要なキーワードについて発言し、議論をうまくリードし、議論がかみ合うようにしたい」、「また世論調査も重要であり、何とかネガティブな状況から脱したいと思う。常設の安全保障対話の設置には完全に同意する」、「世界の秩序が変化し、政治だけでなく経済も変化している。これはチャンスであるとともにとチャレンジが必要。日中関係は楽観できる状況にないが、対話が重要だ」などの意見が出されるなど、活発な意見交換が行われました。
事前協議では以下の共通認識に達しました。
① 「第13回 東京-北京フォーラム」は2017年秋以降(12月頃)に開催する
② メインテーマは「より開放型の世界経済秩序を共に構築し、アジアの平和にいかに取り組むか」(調整の可能性あり)
③ 「アジアの平和構築」を強調する。
④ 分科会の構成について合意。
⑤ フォーラム最終日に両国の豪事項として「コンセンサス」の発表を目指す。
⑥ 常設の安全保障対話の設置を推進していく。
出席者
【日本側】明石康(国際文化会館理事長、元国連事務次長)
宮本雄二(宮本アジア研究所代表、元駐中国大使)
工藤泰志(特定非営利活動法人言論NPO代表)
【中国側】張福海(中国国際出版集団総裁)
魏建国(中国国際経済交流センター副理事長、元商務部副部長)
姚雲竹(元中国軍事科学院中米防務関係センター主任)
王剛毅(中国国際出版集団副総裁)
李薇(元中国社会科学院日本研究所所長)
張沱生(中国国際戦略研究基金会学術委員会主任)
王暁暉(中国ネット総編集長)
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