リベラルな国際秩序と民主主義を守るため日本が主導的役割を~米新政府関係者、有識者との協議~

2017年1月13日

 笹川平和財団米国での講演を終え、工藤はワシントンにて米シンクタンク関係者や有識者と面会し、新政権下で変化する米国国内政治や外交政策に関して意見交換を行いました。

IMG_1240.jpg まず、工藤は新政権中枢ともチャネルのある米中経済安全保障調査委員会委員長のダニエル・スレーンと面会し、言論NPOが過去12年にわたり実施してきた日中のトラック2対話である「東京‐北京フォーラム」や共同世論調査について紹介しました。長年米中関係に関わってきたスレーン氏からは、米中二国間には問題が山積しており、互いの信頼関係も希薄であること、加えて、新政権下では、中国企業への技術移転や米国進出が難しくなり、貿易面でも多くの困難が想定されるだろうとの指摘がなされました。一方で、日米二国間関係については安全保障やTPPなど貿易面での課題について意見交換を行いました。


 次に、工藤は、米外交問題評議会(CFR)でバイス・プレジデントを務めるジム・リンゼイ氏を訪問し、言論NPOが世界10カ国のトップシンクタンクの代表者を集めて3月上旬に東京で開催する「東京会議」について説明。今回の会議では世界秩序とグローバル経済を取り上げること、この会議にリンゼイ氏の参加と協力をお願いしました。

 この中で工藤は、イギリスのEU離脱の国民投票、トランプ大統領の誕生など、昨今の欧米を中心とした新しい変化の中で、リベラルデモクラシーがチャレンジを受けていること、トランプ新大統領からこれまでの国際秩序やシステムを崩すような発言が相次いていることに触れたうえで、「日本としては今後も国際規範を守るために主導的立場から発信していきたい」と語りました。

 続けて、元国務次官でオルブライト・ストーンブリッジ・グループの上級アドバイザーであるウェンディー・シャーマン氏と面会しました。言論NPOが長年実施してきた、北東アジアでの民間対話やグローバルイシューに関する会議について説明しました。これに対してシャーマン氏は、北東アジア地域における緊張関係の中で言論NPOが築き上げた日中・日韓の対話チャネルは非常に重要であると述べました。さらにシャーマン氏は、日米関係は非常に重要な二国間関係でありながらもワシントンの中でその重要性が十分理解されていない面があると指摘した上で、地政学的に国際秩序が変化し様々なプレッシャーがかかってくる中、今後日米間でも言論NPOのような活動が益々重要になると語りました。


 その後、工藤は日米カウンシルでプレジデントを務めるアイリーン・ヒラノ・イノウエ氏を訪問し、言論NPOの今後のアメリカでの活動計画について説明を行いました。これを受けてヒラノ氏は、米日カウンシルの地方プログラムにも触れながら、今後、国レベルに加え、地方レベルでの日米交流も重要になるだろうと指摘しました。さらにヒラノ氏は、日本との交流チャネルの確立されている東海岸や南海岸地域だけでなく、今回の大統領選でも重要な役割を果たした中部や南部において、日系企業が大規模投資をしているものの、日本とのつながりに関する認識が市民層に広がっておらず、こうした地域でも日米の交流を進めていくことが必要だとコメントし、言論NPOの今後の活動にも期待を寄せました。

IMG_1266.jpg この他、工藤はジャーマン・マーシャル・ファンド(GMF)でアジアディレクターを務めるダニエル・トワイニング氏、その他関係者を訪問し、双方の事業について紹介するともに、民主主義や自由主義をベースとした国際秩序や共通価値・規範に関する対の重要性を確認し、今後の協力の可能性について意見交換を行いました。

IMG_1248.jpg その後もブルッキングス研究所の国際秩序・戦略プロジェクトディレクターのトマス・ライト氏を訪問し、世界秩序の在り方や米国をはじめとした安全保障、経済・貿易関係について協議を行いました。また、昨年11月の大統領選で共和党側で世論調査を実施してきた調査会社を訪問するなど、多方面の関係者と新政権での米国の方針、今後の世界秩序、対米関係などについて精力的に意見交換を行いました。

 一連の会合の他に、工藤は笹川平和財団米国の若手研究者のネットワークや日系企業が行う安全保障に関する懇談会でもスピーカーとして参加し、自身が長年にわたり北東アジアで展開してきた民間外交や世論調査の分析について語りました。

 また、ホワイトハウス担当の記者として新政権への移行作業を取材するワシントンポスト紙の記者2名とも懇談し、トランプ新大統領の特異性に起因するリスクや課題について見解を交わしました。

 13日より工藤はニューヨークを訪問、米有力財団の関係者や日系企業幹部と懇談を行う予定です。

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