「第13回 東京-北京フォーラム」まで1カ月を切った11月20日、言論NPOの事務所で「第13回 東京-北京フォーラム」実行委員会の第4回会議が開催され、約20名の実行委員が参加しました。今回の会議は、フォーラムの中身について協議する最後の会議ということもあり、各委員から様々な意見が出されました。
冒頭、本フォーラムの実行委員長である明石康氏(国際文化会館理事長)が、11月中旬に、副実行委員長の宮本雄二氏(宮本アジア研究所代表)、運営委員長の工藤泰志(言論NPO代表)と共に中国を訪問した結果を報告しました。その中で明石氏は、中国側の主な関心事は共産党大会であったこと、そのためにフォーラムの準備が全く進んでいないことに懸念を示しました。一方で、日本側の体制整備の遅れについても言及し、今日の実行委員会でフォーラムに向けた具体的な議論が行われることに期待を示しました。
明石氏に続けて発言した工藤は、今回の訪中で印象深かった出来事として、中国側の主催者との会議において、先日終了した中国の共産党大会が今後の日中関係に非常に大きな影響を与える兆しを感じたことを挙げました。ただ、中国共産党大会の影響もあり、パネリストの人選については中国側ではほとんど進んでおらず、日本側も人選が遅れていることに触れ、「今後、日中双方で早急に準備を進めていく」と語りました。
共産党大会終了後の中国の状況について、中国大使も務めた宮本氏は、「党大会が終わって習近平体制が固まり、マイナスの方向を受け入れられる状態になった。このタイミングなら前向きトーンは打ち出しやすい」との見解を示しました。
続けて外務大臣を務めた川口順子氏(明治大学国際総合研究所フェロー)は、「習近平政権の打ち出す新しい方向性を日本にも示して意識させること、同時に習近平氏の新しいアプローチが、日中関係についてはどのような影響を与えるかということを、中国のリーダーたちにも意識する機会を与えることが重要だ」と述べ、今回のフォーラムでの議論も後ろ向きなネガティブなものではなく、新しい日中関係の構築を示唆できるものを目指すべきだとの意見を表明しました。
その後、各実行委員から各分科会に関する様々な意見や論点が出されました。分科会ごとに具体的に紹介します。
経済分科会:
副実行委員長の山口廣秀氏(日興リサーチセンター理事長)は、「中国企業のトップにも打診しており、より具体的な議論に期待したい。ただ、中国側は一帯一路をメインとして考えているが、一帯一路と日本を噛み合わせていくのは難しいのではないか」と指摘。
山﨑達雄氏(元財務官)は中国の現状について「米国中心のグローバル・ガバナンスよりも、一帯一路という、自分たちが作り上げた新たな経済秩序を推進していきたいようだ」との見解を示した上で、「中国は経済に関しては、量より質だと主張し、政府主導で、国有企業改革を行い、イノベーションを推進していく方針だが、その限りにおいては、企業への政府介入が強まる恐れもある」との懸念を指摘。一方で、日本が高い技術力を持つ医療分野においては協力していく余地があるとも述べ、経済分野での懸念と期待を示しました。
安全保障分科会:
小野田治氏(元航空自衛隊教育集団司令官、元空将)は「以前のように尖閣諸島を巡って、感情的に対立することは双方にとって建設的でない」と述べ、日中関係が改善傾向にある中で、安全保障が足かせになってはならないという、主張がメインになるだろうとの見方を示しました。
さらに工藤は「これまでは領土問題などで利害対立があったが、北朝鮮の大胆な行動によって、北朝鮮問題を解決するという日中の共通利益がはっきりしたことで、今回の安全保障の議論には協力関係の構築に期待がもてるのではないか」との期待感を示しました。
政治・外交分科会:
政治、外交の分野においても、一帯一路に関する意見が多く飛び交いました。山﨑氏は、日本政府として、中国中心の路線からはある程度距離を置くことはあったとしても、民間レベルでかかわっていくことは問題ないし、民間企業には良い機会ではないか、と前向きな見方を示しました。
宮本氏は、一帯一路政策が経済と政治が立体的に組み合わさっている現状に触れた上で、中国が一帯一路政策を政治問題とは切り離して、純粋な経済政策として扱うべきだと日本側が積極的に主張してもいいのではないか、と語りました。
メディア分科会:
山田孝男氏(毎日新聞東京本社政治部特別編集委員)は、「来日する中国人は明らかに増加しており、今回のメディア分科会において、中国の対日報道改善に向けたメディアの役割について議論できたらいいのではないか」と語りました。
中国のメディアの現状については、今回から実行委員に加わった五十嵐文氏(読売新聞論説委員)は、「党大会前に参加した別のフォーラムでは、官製メディアがほとんどで自由な意見がなかったので、今回のフォーラムに注目している」との期待を示しました。その上で、「人民網(チャイナネット)は2万人体制で対日報道を実施しており、さらに、その報道のスピードは格段に速くなっている。中国のメディアの進化について、日本側にも見習うべき点もあり、一方で日本側のメディアには、まだそれを受け入れられていない」という問題を投げかけました。
特別分科会:
日中国交正常化について議論する特別分科会について明石氏は、「今年は日中国交正常化45周年だが、中国においてはむしろ、来年の日中平和友好条約の40周年のほうに関心が移っているという感じがある」との懸念を表明しながらも、「日中関係は山と谷のようなもので、今は谷だが、その谷の部分をいかに浅くできるかが重要だと思う。もう少し、長期的な視点に立って考えていけるかどうかということが重要だ」と述べ、今回のフォーラムで行う特別分科会での議論への期待を示しました。
今回の会議を踏まえた上で工藤は、「東京-北京フォーラム」の意義は、民間対話が政府間外交の土台をつくる点だと指摘。その上で、今回のフォーラムでも、より自由な民間の立場で日中関係に関する議論をリードし、政府間交渉の基礎を作っていきたいと今回のフォーラムにかける意気込みを語り、実行委員会の議論を締めくくりました。
今後、12月中旬のフォーラム開催に向けた準備はラストスパートを迎えます。その模様は、適宜、言論NPOのホームページで公開していきます。