「第13回 東京-北京フォーラム」17日全体会議 報告

2017年12月17日

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 12月16日に開幕した「第13回 東京-北京フォーラム」は、17日、2日目の全体会議と閉幕式が行われました。

0.jpg まず、総合司会を務めた青樹明子氏(ノンフィクション作家)は、「経済秩序とアジアの平和」という今回のメインテーマに触れ、「日本語の『平和』を中国語では『和平』といい、似ているようで、それぞれの語の意味は微妙に違う。そうした違いを乗り越えるのが『対話』である」と述べ、日中間の違いを埋めるためには本音の対話が重要であり、こうしたプラットフォームであるこのフォーラムは非常に意義深いものだ、との認識を示しました。

 その後、4氏が基調講演を行いました。

日中両国で強力な黄金時代を築き上げ、全面的に協力し合う必要がある

1.jpg 最初に登場した張燕生氏(国家発展・改革委員会学術委員会研究員)は、今回のフォーラムを振り返って、自身の専門の経済分野に加え、政治・外交、メディア、民間交流など、各分野がバランスよく設けられ、フォーラム自体は成功したのではないか、と評価しました。

 その上で、自身の専門分野から、「今や中国経済は新時代に入り、同時に歴史的な変革の時代に突入したと言ってもいい」と断言。そして、現在の中国経済の課題として、「大きく躍進した今の中国経済を、中日間でどう認識すべきかが今日的な課題である」と語りました。

 さらに、日中両国が連携に向けて動き始めたが、それは同時に、過去の不幸な歴史を振り返れば、提携が通貨の問題とか、反グローバリズムにどう対処すべきかなど、様々な問題が噴出し、「もろ刃の剣となるリスクともなりえる」と説明。しかし、日中両国は、少子高齢化などあらゆる分野で新しいモデルを考え、両国で強力な黄金時代を築き上げ、平和的な国際環境を維持し、リーダーやエリートたちは全面的に協力し合う必要があると語り、今後の日中両国の協力に期待を示しました。


日中両国の民間協力の重要性

2.jpg 続いて日本側から小倉和夫氏(国際交流基金顧問、元駐フランス大使)が登壇。外交官として1971年から75年まで、日中国交回復の交渉に携わった立場から、正常化の経緯について語り、未来への教訓としたいと切り出しました。

 まず、国と国の外交を正常化するには国際情勢と国内情勢が大きく影響すると指摘。その一例として、米中、日中国交正常化を挙げました。ニクソン大統領が電撃訪中し、米中両国が接近した原因としては、ソ連とベトナムの問題があったこと。また、1972年当時、田中角栄内閣を日中国交回復に駆り立てた要因として「国内の政権基盤を強化する狙いがあった」こと、同時に、中国も文化大革命の後遺症に苦しんでおり、日米中の各国の利害が一致したことを指摘しました。

 また、小倉氏は、大国化した中国と自国第一主義を掲げ始めた米国の間で「グローバリゼーション」の意味は各国で違うと主張。今一度、米国、中国、日本が、それぞれの国家像をこれからどう描いていくのか、ということをじっくり考え、大きいだけでいいのか。大きいことに価値があるのか、他に何か大切なものがあるのではないか、そうしたことを改めて考える時期に来ていると語りました。

A30X0853.jpg さらに、中国の人たちには中国の東北地方を痛めつけた日本への深い恨みがあるが、周恩来首相は「悪いのは日本軍国主義者であり、日中の国民はともに被害者だ」といって、国民に国交回復を納得させた。これからも国民の一人ひとりが話し合うと同時に、明日の世代に任せるというのも一つの知恵だと指摘。日中国交正常化には長い時間がかかったが、交流だけではダメで、一緒に何かをやる、といった共同した行動をしなければならない」として、日中の民間協力の重要性を主張しました。


日中国交正常化をさらに発展させ、対話と交流が永遠に続くことを祈念

3.jpg 次いで中国側から周乗徳氏(中国人民政治協商会議第9、10期全国委員会委員)が登壇しました。周氏は故周恩来首相の姪としても知られています。

 まず、周氏は自身の伯父である周恩来首相と共に日中国交回復に携わられた小倉氏と張氏の講演を聞くことができた喜びを表すと同時に、13回にわたってフォーラムを続けてきた関係者へ賛辞を述べました。さらに、周恩来氏の思い出話として、同氏が日本に留学した頃、日本人の優しさについてよく話してくれたことは一生忘れられない、と当時を振り返ります。さらに、NHKが、家族と側近が語る周恩来というドキュメンタリーを制作する際、「日本でもこれほど尊敬を受ける人はいない」と聞かされてうれしく思ったこと、周恩来氏の力と、田中角栄氏の知恵と経験、それに平和を愛する日本国民がいたからこそできた日中国交正常化をさらに発展させ、対話と交流が永遠に続くことを祈っていると語り、挨拶を締めくくりました。


「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず」の精神で

4.jpg 続いて、日本側から數土文夫氏(JFEホールディングス特別顧問)が、NHKや東京電力などの公営企業に携わってきた経験をもとに、日中のこれからの協力のあり方について提言しました。

 數土氏は 6年前に「東京-北京フォーラム」に参加した時に比べ、今回の北京は環境も雰囲気も大きく変わっているのに驚いたと切り出しました。そして、昨日、基調講演を行った福田康夫・元首相の話に触れつつ、かつての福田ドクトリンと、習近平主席のグローバル化が似ていること。フォーラムの各分科会でも話し合われたように、日中が心と心の互いの共感を大切にして、非常に有意義な議論を重ねていたことに感動した、と語りました。

 數土氏は、中国経済は著しい発展を遂げ、多様な経済環境の中で若い起業家が原動力になって、今日の繁栄を築いてきたと文責。こうした世界を目指すニューリーダーたちは若く、精神も充実していて当分衰えることはなく、日本も彼らに学び、中国と協力して世界に自由な環境を作ることが大切だ、との見解を紹介しました。

 一方で、中国への注文として、世界を目指すために古い国有企業の解体を進めること、内部の不透明さを正すことという、市場改革と透明性の確保が非常に難しいと指摘。さらに、中国のリーダーの人たちに向けて、「企業は誰のものか」と問いました。「日本の明治以来の企業人は、その問いをずっと自問自答してきた。中国のリーダーも人類に貢献するためにも、ぜひ考えていただきたい」と語りました。

 最後に數土氏は、2500年前の孔子の言葉「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず」を紹介して、挨拶を締めくくりました。

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