6月22日開催の「第6回日韓未来対話」に先立ち、言論NPOは18日、韓国・ソウル市内で記者会見を開き、「第6回日韓共同世論調査」の結果を公表しました。この調査は、言論NPOと韓国の東アジア研究院(East Asia Institute, EAI)が2013年から6年間継続して毎年共同で実施しているもので、今年は5月中旬から6月上旬にかけて実施しました。記者会見には日本側から言論NPO代表の工藤泰志が、韓国側から孫洌・延世大学国際学大学院教授(東アジア研究院日本研究所チェア)が出席し、今回の調査データの読み方を解説しました。
冒頭、工藤は今回の調査結果が、4月27日の南北首脳会談、6月12日の米朝首脳会談など、外交展開の急激な変化を反映していることに言及しつつ、「北朝鮮の非核化は先行きが見えた状況とは言い難いが、解決に向けた一歩を踏み出したのは間違いなく、それが朝鮮戦争の終結や朝鮮半島の将来を巡る動きにつながる可能性もある歴史的な局面にある」、「今回の世論調査がこれまでと異なるのは、歴史問題を軸に複雑な国民感情を抱えてきた日韓両国にとって、未来に向けた関係づくりが本格的に問われ始めた中で行われた調査だということだ」などと今回の調査の意義を説明。その上で、今回の調査で確認すべきポイントとして、「両国民の意識の中に両国の関係改善や新しい関係に向かう準備や兆しが出ているのか」ということを挙げました。
調査結果の解説に入ると工藤はまず、「今回の調査で浮き彫りになったのは、北朝鮮の核問題の解決や朝鮮半島の未来に対する日韓両国民の意識の大きな違いである」と切り出し、その例として、非核化の実現可能性や北朝鮮の核問題解決の見通しについて、日本では、「解決が難しい」と考える人は65.1%と7割近いが、韓国では「解決が難しい」と考える人は23.2%となるなど、両国民の意識が真逆の方向にあることを指摘。その背景には、多くの日本人は朝鮮半島情勢を判断するための情報を十分に得ていないことなどを挙げました。
次に、国民感情の状況に関しては、韓国側の日本に対する印象が改善している理由として、日本への渡航者数の急増と同時に、この渡航経験がある層は日本に良い印象を持つ傾向にあることを紹介。そこで、「両国の相互理解のためには、国民間の直接交流を増やすことがより効果があることを示唆している」と語りました。
一方、現在の日韓関係の評価については、両国でともに改善したものの、「良い」と判断する人は1割にも満たないという結果を紹介。首脳間の意思疎通は着実に増加しているにもかかわらず、評価が好転しない背景として工藤は、「両国民は、そもそも未来志向の両国関係に確信を持てていない」と指摘。したがって、「日韓関係が好転するためには、両国民がお互いの重要性を深く考えるしかない。なぜ日韓関係はこれからのアジアや朝鮮半島の未来に向けて重要なのか。これに答えを出さない限り、この閉塞感は本当の意味で変わらない」と語りました。
一方で、今回新設した「日米韓は軍事協力を今後強めるべきか」という設問で、反対する人は韓国で6.6%、日本でも18.7%しかおらず、さらに賛成した人にその理由を尋ねると、「朝鮮半島の平和的な安定にためには不可欠」が日本で60.3%、韓国で79.4%と突出していたことに言及。工藤は、「日韓両国の国民は、朝鮮半島の平和的な未来のために、両国が力を合わせるべきことには気づいているのである。今がそのための準備の時期だ」と語りました。
孫洌教授も、特に北朝鮮問題に対する認識の相違について言及し、「こうしたギャップを埋めるためにはどのような努力が必要となるのか、議論が必要だ」と「第6回日韓未来対話」に向けた意欲を示しました。
その後、日韓のメディアから質問が寄せられ、活発な質疑応答が交わされました。そして最後に、「第6回日韓未来対話」について説明がなされ記者会見が終了しました。今回の世論調査を受けて言論NPOでは、「第6回日韓未来対話」についての準備を加速させます。対話の詳細については、言論NPOのホームページで随時公開していきますので、ぜひご覧ください。