日中関係改善に向けた動きに対して「賛成」が8割を超える
1978年の日中平和友好条約の締結から40周年の節目の年を迎え、日中両国政府は日中関係の改善に向けて動いている。そこでまず、こうした改善に向けた動きをどのように評価しているのかを尋ねた。
その結果、有識者の84.6%が「賛成」と回答し、「反対」は3.5%にすぎなかった。
中国の政治改革は、習近平氏の独裁体制に向けた動きとの回答が7割近くに
次に、中国の政治体制についても尋ねた。中国の習近平国家主席は、毛沢東以来の最も強い指導者を目指して、国家主席の任期の撤廃など指導力を強めている。こうした習近平氏の動きは、独裁体制に向けた動きなのか、有識者の見方を尋ねた。
これに対しては、68.5%が「そう思う」と回答し、7割近くの有識者は習近平一強体制の確立が着々と進行していると見ている。
既存の国際秩序と、中国が主張する新しい秩序が併存するとの回答が最多
習近平氏は各種演説の中で、中国が今後の国際秩序の構築において、「新時代の中国の特色ある社会主義外交思想」を指導方針としながら主導的役割を果たすことを明確に打ち出している。そこで、欧米を中心とした既存の国際秩序は、この中国がつくる新秩序にとってかわられるのか、その見通しについて尋ねた。
その結果、「既存の国際秩序を変更し、中国主体の新秩序にとってかわられる」との予測は2.8%にすぎなかった。ただ、「2つの秩序が並存し、衝突し続けることになる」との予測が44.1%となり、中国主体の新秩序の存在感が無視できないほど大きくなるとの見方は4割を超えている。
中国は自由貿易の旗手としての役割を「担えない」との回答が7割を超える
次に、これまでアメリカが担ってきた「自由貿易」の旗手としての役割を今後、中国が担っていけると思うかについて質問したところ、「担っていけない」という回答が74.8%となり、「担っていける」という回答の4.2%を大きく上回っている。ただ、「現時点では判断できない」と評価を保留する有識者も21%いた。
米中間の貿易戦争については、両国の行動に「賛同できない」との回答が最多
アメリカの中国に対する340億ドル規模の追加関税措置に対して中国も同規模の報復関税を発動するなど、現在、"米中貿易戦争"の様相を呈している。そこで、アメリカと中国のどちらの行動に賛同するかを聞いた。
その結果、68.5%と7割近い有識者が、「どちらの行動にも賛同できない」と回答し、これが突出している。「アメリカの行動に賛同する」(9.8%)、「中国の行動に賛同する」(11.9%)はそれぞれ1割程度にすぎない。
既存の秩序維持のため、多国間が関与する枠組みを求める声が半数近くに
政治・経済・安全保障など様々な面で中国の影響力が強まる中、今後、日本は中国に対してどのような行動をとるべきか。
これに対し、有識者の49.7%と半数近くが「既存の秩序を維持するための枠組みを多国間で形成し、多くの国のコミットメントを求めていく」と回答し、これが突出して多い。
ただ、「中国が主張する一帯一路構想などを批判するだけでなく、中国との共同プロジェクトなどを進める」と中国に対して、ある程度歩み寄るべきだと考える有識者も25.2%いた。
また、安倍政権が進める「自由で開かれたインド太平洋戦略」に関連する「中国に対抗するため、インド太平洋戦略などの新しいアジア戦略を進める」を選択した有識者は11.9%と1割程度だった。
自由や民主主義といった戦後の規範を守るため、
日本はリーダーシップを発揮すべきとの声が最多に
さらに、トランプ政権や中国の動向によって、世界秩序が不安定化する状況の中、日本の行動や役割について尋ねた。
その結果、「日本は、不安定な国際秩序下だからこそ、自由や民主主義、多国間主義に基づく国際協力など、戦後日本の発展を具現化してきた規範を世界に主張し、独自のリーダーシップを発揮すべき」が33.6%で最も多い。
次いで、「日本は過度にアメリカとの同盟関係にこだわるべきではなく、中国も含め様々な大国との関係正常化や協力を考える時期である」が28%、「日本は、この状況下では、アメリカ以外の先進国との連携を強化し、多国間の枠組みを軸とした共同のリーダーシップを模索すべき」が21.7%となっている。
これまで通り、一層強化し、アメリカを軸にした2国間での国際的なリーダーシップを強化すべき」は4.2%にとどまり、「トランプ大統領の行動に対抗するため、中国との連携を強化すべき」も2.1%にすぎない。アメリカ中心とした外交展開からの脱却と同時に、多国間の枠組みを重視する有識者の意識が鮮明となっている。