~第1セッション報告~
⇒北東アジアの平和秩序実現に向けて、足元を固めつつ将来にも目を向けた議論を
~「日米対話」第2セッション報告~
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1月16日に開催された「日米中韓4カ国対話」に引き続き、言論NPOは1月17日、東京都内の国際文化会館において、「米中対立の行方と北東アジアの平和」をメインテーマとした「日米対話」を開催しました。
米中関係の改善には悲観的な見方を示すも、「それでも共存するしかない」
この日米対話の前には、両国のパネリストによる非公開会議が行われ、午後の公開会議に向けた準備としての意見交換が行われました。会議の冒頭、司会を務めた言論NPO代表の工藤泰志は、北東アジアの平和秩序を実現するためには、日米中韓4カ国の役割が大きいが、その中核となるのはまさにこの「日米」であると今回の対話の意義を説明。それに続いて、日本側から元防衛事務次官の西正典氏が問題提起を行いました。
その中で西氏は、西側諸国には旧約聖書の時代から"契約"という概念があるのに対し、中国では現代でもその概念が希薄だということを例証しつつ、このような米国と中国の考え方の相違は至るところに存在することを指摘。冷戦期の米ソ間ではロジックを共有する部分もあったが、米中間は必ずしもそうではないため、米中関係の改善には大きな困難が伴うと悲観的な見方を示しました。
一方で西氏は、中国の存在感を考えると、「それでも共存するしかない」と語りつつ、そのためには「日米は中国も納得するようなロジックを構築し、中国との共存方法を模索していくしかない」と主張。これは決して簡単な問題ではないとしつつも、だからこそ今回のような日米対話の試みをしていかなければならないと居並ぶパネリスト達に対して呼びかけました。
その後、意見交換に入りました。
米中関係の歴史は紆余曲折であり、今回も「実験」のひとつだとの見方も
米国側からはまず、国内の対中路線の現状についての説明が相次ぎました。具体的なアプローチについては様々な考え方があるものの、「中国に対抗していく」という点ではすでに党派を越えたコンセンサスが形成されているということについて各氏が言及。さらには米中経済のデカップリング論まで浮上してきていることが紹介され、「かつてのような融和路線には回帰しないだろう」との見方が多く寄せられました。
もっとも、実際にはデカップリングなど現実的ではないことから、きちんと対話をして解決策を見つけ出していかなければならないという意見も相次ぎました。国務省やホワイトハウスで東アジア外交に携わってきたあるパネリストは、米中関係の歴史は紆余曲折、成功と失敗の繰り返しだったと回顧した上で、「現在の状況も"実験"のひとつだ」との見方を提示。そして、この実験は「いかにして中国と真のパートナーになるのか。これは試み続ける価値のある作業だ」と語りました。
他のパネリストからも、米中が真のパートナーとなるためには、「信頼の構築」や、「協力ができそうな分野から協力を始めること」、「何があっても最低限『平和』という大原則は崩さないこと」、「双方が納得する説得力あるストーリーを組み立てること」などといったことが必要であるとの意見が寄せられました。
日米が対話により、対中外国の道筋を見つけ出していくことが必要に
一方日本側からは最初に、トランプ政権が中国の孤立化戦略を図っているのに対して、安倍政権は中国をいかにして地域の秩序に組み込んでいくかという戦略に転換している、すなわち自らの関与政策と同盟国の孤立化政策という相反する状況が生じており、難しい対応を迫られているという解説がなされました。
一方、別のパネリストはトランプ氏と習近平氏は「マルチよりもバイ。ルールベースよりもパワーベース」という点で共通点があり、したがって、米中両国の歩み寄りの可能性は排除できないと指摘。かつて覇権を競い合っていたスペインとポルトガルがトルデシリャス条約を締結して支配領域を分けたのと同じことが、米中間でも起り得ると警鐘を鳴らしました。したがって、日本としては「米中との二等辺三角形」を維持するようにマルチ対話に取り組み、両国に関与し続けることが重要になると主張しました。
また、あるパネリストは、対中外交のあり方については、現在どの国も模索している段階であると指摘。だからこそ、日米が対話によって共にその道を見つけ出していくことが必要だと米国側に呼びかけました。
その後も様々な議論が行われた後、工藤は「米中対立の出口戦略」がないと、北東アジアだけでなく世界も破局に向かってしまうと懸念を示しつつ、習近平氏は「強い中国」の復活を志向しているが、そう考えない中国の知識層も数多いことを紹介。そして、「どの国も覇権を求めず、平和な秩序を実現するためには何を考えなければならないのか。本気で議論する必要がある」と午後からの公開会議に向けた意欲を示し、非公開会議を締めくくりました。
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