「日中安全保障会議」(2019年4月13日~14日 於:上海) 報告

2019年4月17日

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 4月13日と14日の両日、言論NPOと上海国際問題研究院は、中国・上海市内のロイヤルチューリップガーデンホテルにおいて、「日中安全保障会議」を開催しました。

 日本からは、言論NPO代表の工藤泰志に加え、「『アジア平和会議』準備委員会」から座長の宮本雄二氏(宮本アジア研究所代表、元駐中国大使)、座長代理の西正典氏(元防衛事務次官)をはじめとする7名が参加。中国側からは、上海国際問題研究院長の陳東暁氏や趙啓正氏(中国人民大学新聞学院院長、元国務院新聞弁公室主任)など計13名が参加しました。

 開幕式では、中国側を代表して陳東暁氏が、日中関係、中印関係などで改善が見られ、米朝間でも対話が始まったことを評価しつつ、こうした平和秩序に向けたムード醸成が一過性のものにとどまらず、持続的なものとなるために何をすべきか、今回の会議で議論をしたいと挨拶。日本側を代表した工藤は、昨年の「第14回東京-北京フォーラム」の際に打ち出した「東京コンセンサス(平和宣言)」の中で、朝鮮半島、さらには北東アジア全域の平和秩序建設に向けた多国間協議の環境づくりに尽力していくことで両国の有識者が合意したことを振り返りつつ、「今回はこの合意を具体的なものにするために上海にやって来た」と語りました。


 引き続いて行われた第1セッションでは、「国際安全保障の枠組みと東アジアの安全保障環境の総括的な分析」をテーマとして議論。ここでは、米中対立の行方や、インド太平洋構想をどう考えるか、台湾問題、瓦解しつつある中距離核戦力(INF)全廃条約体制の今後など様々な問題が議論の俎上に上りました。

 続く第2セッションでは、「二回目の米朝首脳会談後の朝鮮半島情勢」をテーマとし、情勢分析とともに、日中両国が協力して取り組める課題設定の検討が行われました。

 一方、「東アジア地域の海洋紛争と海洋協力」をテーマとした第3セッションでは、特に南シナ海問題と国連海洋法条約の解釈をめぐって激しい応酬も見られました。


 翌14日に行われた最後の第4セッションでは、「中日両国は如何に地域と国際の平和秩序に貢献するか」をテーマに議論。前日の議論を踏まえながら、改めて米中対立が論点になるとともに、両国の間に立つ日本が果たすべき役割についても話し合われました。同時に、日中協力の新たな可能性を探る議論も展開されました。


 議論を受けて最後に工藤は、「第1回東京-北京フォーラム」時を振り返り、「14年前、日中間には基本的な相互理解すら欠けていたが、現在は今回の対話のように率直に議論ができる良い環境になってきた」と手ごたえを口にしつつ、「今、この地域には対立を戦争に発展させないためのメカニズムが不十分だ。今回は良い議論ができたが、このメカニズムをつくるために今後も手を緩めずに民間発の作業を進めていきたい」と今後の対話への意気込みを語りました。

 上海国際問題研究院副院長の厳安林氏は、今回の議論では日中間でいくつか食い違いが見られたとしつつ、それを把握できたこと自体が成果と評価。同時に、米中間に立つ日本にバランサーとしての役割を期待しましたが、あくまでも「公正なバランサー」であるように注文を付けつつ、2日間にわたる白熱した対話を締めくくりました。

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