⇒ 第7回日韓共同世論調査記者会見 報告
韓国に対する印象
日本の有識者で、韓国に対する印象を、「良くない(「どちらかといえば」を含む)」と回答した人は53.4%と半数を超え、世論(49.9%)よりも悪い水準にある。
一方、「良い(「どちらかといえば」を含む)」と回答した人は31.3%となり、こちらは世論の20%を上回っている。
「良い」と回答した有識者に、その理由を尋ねたところ、「その他」が41.2%で最も多いが、続いて「韓国人はまじめで努力家で積極的に働くから」(30.5%)、「同じ民主主義の国だから」(28.2%)、「韓国のドラマや音楽など、韓国の文化に関心があるから」(27.5%)の3つが3割前後で並んでいる。世論では最も多かった「韓国の食文化や買い物が魅力的だから」は19.1%と2割程度である。
一方、「良くない理由」では、「歴史問題などで日本を批判し続けるから」が45.4%となり、これが最も多いのは世論と同様である。一方、2番目に多い「徴用工判決に伴う対応で、対立が深まっているから」については31.2%で、世論(15.2%)とは差が見られる。また、3番目に多い「大統領の行動が北朝鮮に接近しすぎており、違和感を覚えるから」(26.6%)も、世論(7.6%)とは差がある。
現在の日韓関係
現在の日韓関係について、「悪い(「非常に」と「どちらかといえば」の合計)」と判断している有識者は89.8%と9割近く、世論(63.5%)を30ポイント以上上回っている。
韓国は友好国か
一方、韓国を友好国だと思うか否かについて尋ねたところ、「今も友好国だと思う」という有識者は31.5%となり、世論(8%)を大きく上回っている。もっとも、「以前は友好国だったが、今はそう思えない」(29.9%)と、「以前から友好国だと思ったことはない」(18.2%)という相手国を非友好国と見做す見方の合計は48.1%と半数近く、世論(43.9%)よりも多い。
今後の日韓関係
今後の日韓関係については、「良くなっていく(「どちらかといえば」を含む)」という見方は30.5%となり、有識者は世論(12.1%)よりも明るい見通しを持っている人が多い。ただ、「悪くなっていく(「どちらかといえば」を含む)」という見方が34.7%で、「良くなっていく」よりも多い。
日韓関係の困難な現状にどう対応すべきか
日韓関係の困難な現状に対しては、有識者の59.6%が「改善に向けた努力を行うべき」と回答し、世論(40.2%)よりも積極的な努力を求めている人は多い。一方、「今のところは無視するべき」(23.2%)、「今もこれからも何もする必要はない」(9.4%)、「日韓関係の今後に関心はない」(2.6%)など、積極的な措置を求めていない人も3割以上存在している。
日韓関係の改善のためにすべきこと
日韓関係の改善のために両国がすべき具体的なこととしては、「民間対話や多様な交流を通じた国民レベルでの信頼関係の構築」が51.8%で突出し、世論(22.4%)とは異なる傾向を示している。以下、「歴史認識と教育に関する問題の解決」(35.2%)、「政府首脳レベルでのコミュニケーションと信頼関係の向上」(33.6%)、「歴史認識問題の解決(慰安婦、強制徴用)」(32%)の3つが3割台で並んでいる。世論では41.3%と4割を超えていた「竹島問題の解決」を選択した有識者は10.7%だった。
また、今後の韓国との付き合い方については、「日韓間に存在する対立は残念だが、この関係を壊すのではなく、未来志向で克服する」(44.5%)が世論(34.8%)同様最も多い回答となっている。ただ、「韓国の現政権が続く限りは、必要な対抗措置を取るか、無視するべき」を選択した有識者も25.5%おり、世論(14.1%)よりも11ポイント多い。
日韓関係の重要性
日韓関係を「重要である(「どちらかといえば」を含む)」と考える有識者は75.8%と7割を超え、世論(50.9%)よりも25ポイント多い。
次に、「重要である」と回答した人にその理由を尋ねると、「隣国同士だから」(57%)や「同じアジアの国として歴史的にも文化的にも深い関係を持っているから」(36.3%)など一般的な理解を挙げる回答が多い点は世論と同様である。一方、「米国との同盟国同士として安全保障上の共通の利益を有しているから」との回答も39.7%あり、世論(22.4%)と比較すると実質的な理由から重要性を見出している有識者も4割いる。
最も日本との関係が重要な国
日本の将来を考えるにあたり、世界の中で最も日本との関係が重要だと思う国や地域を答えてもらったところ、同盟国の「アメリカ」が67.2%で、世論(67.8%)と同様に最も多く、これが突出している。2番目に多かったのは「中国」だが、14.2%(世論5.9%)と1割台にすぎない。
日韓関係と歴史問題
日韓関係と歴史問題の関係について、「日韓関係が発展しても、歴史認識問題を解決することは困難」という悲観的な見方が46.6%となり、これが最も多いのは世論(32.6%)と同様である。ただ、「日韓関係が発展するにつれ、歴史認識問題は徐々に解決する」と楽観視する有識者も33.3%(世論20.4%)と3割いる。「歴史認識問題が解決しなければ、日韓関係は発展しない」という歴史問題を両国関係の制約とする見方は15.4%(世論23.6%)だった。
その歴史問題で解決すべきものとして最も多いのは、「韓国の反日教育や教科書の内容」(59.9%、世論54.9%)である。以下、「日本との歴史問題に対する韓国人の過剰な反日行動」(48.7%、世論55.9%)、「韓国の政治家の日本に対する発言」(47.9%、世論35.7%)、「韓国のメディアの日本についての報道」(46.9%、世論30.9%)の3つが4割台で続いている。ただ、「侵略戦争に対する日本の認識」(32.6%、世論13.4%)、「日本のメディアの韓国についての報道」(30.7%、世論10.2%)と日本側の認識を問う有識者も3割いる。
徴用工訴訟判決の評価
徴用工訴訟で韓国最高裁は、2018年10月30日と11月29日に、日本企業に対して元徴用工の強制労働の賠償を行うよう命令を下した。この判決の評価を尋ねたところ、「評価しない(「あまり」と「全く」の合計)」という回答が75.3%(世論58.7%)と7割を超えている。
次に、徴用工問題解決のために何をすべきかを尋ねたところ、「元徴用工への補償は韓国政府が行う」(31.3%、世論20.5%)と、「第三国の委員を交えた仲裁委員会を設置するか、国際司法裁判所に訴える」(31%、世論22.2%)という2つが多いのは世論と同様である。
レーダー照射事件に関して、日韓どちらの主張に理があるか
2018年12月、韓国海軍の駆逐艦が日本の海上自衛隊のP-1哨戒機に対して火器管制レーダーを照射した事件を発端に、日本政府と韓国政府は公の場で様々な抗議や反論の応酬を行う事態となった。そこで、日本政府と韓国政府のどちらの言い分が正しいと思うかを質問したところ、「日本政府の主張が正しいと思う」との回答が73.7%(世論62.9%)と7割を超えている。「韓国政府の主張が正しいと思う」は0.8%(世論0%)にすぎない。
日韓防衛協力は進めるべきか
レーダー照射問題をめぐっては日韓の防衛当局間での対立もあるが、こうした状況でも両国の防衛協力を進めるべきだと思うかを尋ねたところ、「進めるべき」は30.7%(世論12.8%)と3割にすぎず、最も多いのは「防衛協力の前に、まずは防衛当局間のコミュニケーション向上や信頼回復を行うべき」(51%、世論40.1%)という回答だった。
文在寅大統領に対する印象
韓国の文在寅大統領に対する印象を尋ねたところ、「悪い印象(「大変」と「どちらかといえば」の合計)」を持っていると回答した有識者は66.1%となり、世論の50.8%よりも15ポイント多い。もっとも、「良い印象(「大変」と「どちらかといえば」の合計)」を持っているという人も13.6%(世論2.8%)と1割程度存在している。
軍事的脅威を感じる国・地域
有識者が、日本にとっての最大の軍事的脅威と見做しているのは、「中国」(77.6%)であり、世論(46.1%)よりも32ポイント多い。これと「北朝鮮」の75.8%(世論76.2%)が並んでおり、「北朝鮮」だけが突出している世論とは認識が異なっている。さらに、有識者の52.3%と半数は「ロシア」にも軍事的脅威を抱いている(世論では35%)。
日韓間の軍事紛争
また、日韓間の軍事紛争の可能性については、「起こらないと思う」が71.6%(世論57.4%)と7割を超えている。「数年以内に起こると思う」(1%、世論0.6%)と「将来的には起こると思う」(12.8%、世論8%)の2つを合計しても、軍事紛争勃発を懸念する有識者は1割程度である。
朝鮮半島非核化は実現するか
2018年以降、3度の南北首脳会談と2度の米朝首脳会談が行われた。非核化に向けた外交交渉が動き始めたが、今年2月の米朝会談が決裂するなど停滞ムードも出ている。
そこで、北朝鮮の非核化実現の見通しについて尋ねたところ、「最終的には実現は難しい」が26.8%(世論29%)で最も多く、これに「初めから実現するとは思っていなかった」の19.5%(世論18.4%)を合わせると、46.3%が非核化は実現しないと見ていることになる。
一方、「最終的には実現するが、長期化すると思う」との見方も25.8%あり、世論(13.2%)よりも実現見通しを持っている人は相対的に多い。もっとも、昨年の別の調査ではやや異なる選択肢で同様の質問をしたところ、「期待しているが相当時間がかかると思う」との回答を選択した人は39.4%と4割近かったことを考えると、この1年間で有識者の非核化実現に向けた期待は小さくなっていることになる。
なお、北朝鮮の金正恩委員長の非核化への意思に対しては、有識者の74.5%(世論78.8%)が「信頼していない(「どちらかといえば」を含む)」と回答している。
10年後の朝鮮半島
10年後の朝鮮半島の状況について、有識者の最も多い回答は「現状の不安定な状況のまま」という見方の36.7%(世論38.4%)である。
もっとも、「韓国と北朝鮮は関係を改善する」(18.8%、世論8.4%)や、「南北統一に向けた動きが始まる」(18.5%、世論8.5%)など安定に向かっているとの見方も4割近い。
朝鮮半島の平和プロセスに日本は貢献すべきか
日本が朝鮮半島の非核化や平和プロセスにどの程度貢献すべきか、については「貢献すべき(「大きく」と「一定程度」の合計)」が86.7%と9割近く、有識者は世論(49.5%)よりも積極的な貢献を求めている。
経済関係が重要な国
日本経済にとって特に重要だと考える国について、有識者の85.9%(世論72.1%)が「アメリカ」と回答し、これが最も多い。世論ではこの「アメリカ」が突出する構図だったが、有識者の場合、「中国」(81%、世論49.9%)と「ASEAN諸国」(78.1%、世論26.5%)を選択した人も8割前後存在している。さらに、「インド」(62.5%、世論29.3%)、「EU」(52.6%、世論22.9%)が5割から6割で続いている。
「韓国」を選択した有識者は31.5%(世論21.2%)と3割程度である。もっとも、日韓経済協力は日本の将来にとって必要だと思うか、についても聞いたところ、「必要だと思う」は66.4%(世論43.4%)と6割を超えている。
メディア報道とインターネット世論に関する評価
日本のメディアが日韓関係について客観的で公平な報道をしているかどうか、ということについて、有識者の54.2%は「そう思わない」と判断しており(世論は28.2%)、「そう思う」の16.7%(世論21.7%)を大きく上回っている。
また、インターネット上の反韓的な世論が民意を「適切に反映してはいない(「あまり」を含む)」という評価が68.5%(世論34.2%)と7割近くなり、「適切に反映していると思う」の18.8%(世論14.6%)を上回っている。